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卵子凍結──女性の選択肢広げる革新技術か、成功率低い投資か?

2017/4/8(土) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Victoria Lambert】
 米ロサンゼルス(Los Angeles)在住のブリジット・アダムズ(Brigitte Adams)さん(44)は今から6年前、38歳で独身だった時に、自分の卵子を凍結した。母親になれるタイムリミットが近づいていると恐れたからだ。簡単な選択肢ではなかった。当時は今より珍しく、費用も約150万円と高額だった。

 マーケティングディレクターとして働くアダムズさんは、1回の月経周期に11個の卵子を採取。ただ、ドナーの精子との受精卵を凍結する道は選ばなかった。その時はまだ、パートナーになってくれる人が見つかることを期待していたからだ。「シングルマザーにはなりたくなかった」

 しかし昨年6月ごろになって、アダムズさんはいよいよ覚悟を決めた。凍結した卵子を自分一人で使うため、行動を起こす時が来たと考えたのだ。現在アダムズさんは、卵子凍結を考えている女性に情報を提供するオンラインコミュニティー「エッグシュランス(Eggsurance)」を運営している。「卵子凍結の第2段階について語る人がいない。私たちが始めないと」

 米国ではアップル(Apple)やフェイスブック(Facebook)といったIT企業が、若い女性社員の卵子凍結費用を負担する方針を打ち出している。

 女性が男性と同じタイミングでのキャリアアップを積極的に目指し、男女ともに腰を落ち着けるまでにより長い時間をかけるようになった今日、卵子凍結は本当に、家庭を持つ時期を自分で決める機会を約束してくれる手段なのだろうか?

 あるいは女性に対し、後年成功する絶対的な保証もないまま、妊娠を先送りにして動物として自然な生殖期間にも仕事を優先することを励行する、巧妙なうたい文句の「生殖能力保険」なのだろうか?

 答えはどうあれ、卵子凍結という選択肢はわれわれが思う以上に普通のことになりつつある。

 アダムズさんは「卵子凍結には利点が非常に多く、私も賛成派ではあるが、現実味に欠けるのは事実。卵子凍結はどんどん売り込まれている一方で、あらゆる医師がデータの透明性を確保しているわけではない」

 彼女は身をもって知っている。過去8か月間で、凍結卵子のうち解凍に成功したのは9個のみ。このうち受精がうまくいったのは6個、さらに順調に分裂し、子宮への移植が可能になる受精後6日目まで生き延びたのは1個だけだった。

 2月、移植から9日後に妊娠検査で陽性が出た時には「大興奮した」という。だが48時間もたたないうちに、ホルモンレベルが低下し始めた。

 アダムズさんのブログには、やるせない思いがつづられている。「土曜日に妊娠したといわれ、火曜日には受精卵は死んだといわれた。私にはもう挑戦できる卵子がない。採取できる卵子もない。もう一度やってみようという気力もない。赤ちゃんを失ったこと、そして血のつながりのある子を持つ可能性を失ったことを深く悲しんでいる」

 アダムズさんはその時のことを、「あれほど残酷なことはなかった」と振り返った。「検査で陽性が出なければ良かったのに。11個の凍結卵から生き残ったあの1個の頑張り屋さんなら、きっと大丈夫と思い込んでしまった」

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最終更新:2017/4/10(月) 15:38
The Telegraph