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新鋭・橋本淳の将来を決めた名バイプレーヤーとの出会い

4/9(日) 18:00配信

オリコン

 気づいたら、何度も見たことがある。そんな職人のようなバイプレーヤーに新たに仲間入りしそうな新星が俳優の橋本淳(30)だ。4月2日に始まったNHK BSプレミアム『PTA グランパ!』(毎週日曜 午後10:00~)で教師の山下役を好演し、舞台や映画などでも独自の味を出している。デビュー直後に戦隊ヒーローの“赤”を演じたこともある橋本だが、名バイプレーヤー・松重豊(54)との出会いがキッカケで、主役ではないところで欠かせない役者になることを目指している。その裏には確かな信念が垣間見えた。

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■名前と顔の一致しない俳優になりたい

 今年1月に30歳を迎えた橋本は、演劇界にとって必要不可欠なピースになっている。6月13日から新国立劇場中劇場で上演される舞台『君が人生の時』のほか、数多くの舞台に出演し、テレビでも引っ張りだこ。ネクストブレークとの呼び声も高い。橋本は「遅れてきた30代なんですけどね。ネクストと言われるには年齢が…」とテレくさそうに話した。今後については「言い方が難しいんですけど、顔と名前が一致しない俳優になりたいんです。『この人、見たことあるけど、名前がわからないんだよね』とか言われたい」と有名になるよりも難しいかもしれない目標を掲げた。

 芸能界を志したのは意外な理由だった。「中学生ぐらいのときに将来を考えて、サラリーマンで毎日スーツを着て満員電車に乗る自分が想像できなかった。満員電車に乗りたくなかったというのがキッカケだったと思う。中1ぐらいがテレビドラマを見始めた時期でもあったので。それで、高校1年のときに、いくつか事務所に書類を送って今の会社に拾ってもらったんです」。現在の事務所へ応募したのも「福山雅治さんがいたから」と恥ずかしそうに話した。

 2004年にデビューすると、とんとん拍子に仕事が決まった。「最初に、お金をいただいたのは瀬々敬久監督で光石研さん主演の『ユダ』という映画ですね。光石研さんを金属バットで殴る役でした。その後に『WATER BOYS2』。シンクロ要員みたいな感じでセリフも一話で一言しゃべるか、しゃべらないかの役でした」。戦場のような激しい位置争いなども経験。「こういう野心がないと芸能界は生き残れないんだって思いましたね。当時の僕は甘ちゃんでした」と懐かしそうに語った。

■戦隊ヒーロー、朝ドラに出演し、かけがえのない出会い

 その1年後の2005年に『魔法戦隊マジレンジャー』に出演。シリーズ最年少の18歳で主役のマジレッド/小津魁を演じた。「緑とかだと思ったら赤だった。マネージャーも間違いじゃないか聞き返したぐらい」と抜てきに驚いたという。アクションや殺陣を学び、スーツアクターと2人で1つの役を作り上げるなど「ほかではできないようなことを、いっぱいさせてもらった。トランポリンを踏める役者って、なかなかいないので他の現場でも役に立ちました」。認知度も格段に上がった。「1年間を通じて同じ役をやるのは大河か戦隊モノぐらい。長丁場は後にも先にも、あれしかないですね。本当に大事な作品になりました。それがあって朝ドラにつながっているので、切っても切れないですね」とヒーローに選んでもらったことを感謝した。

 2007~08年は朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインの弟・正平を好演。ここで今の考えに通じる人物と出会う。正平の父・正典役で出演していた名バイプレーヤーの松重豊だ。「そうそうたる舞台役者の先輩方と出会ったので、演劇に興味が向くきっかけを与えてもらった。自分の人生の中で、とても大きいつながりですね。それがなかったら、たぶん役者やってないです」。

 「松重豊さんに仕事の悩みを聞いてもらっていたんです」。朝ドラ終わりで精神的に追い詰められた時期があったというが、松重らに相談。本音をぶつけ合ううちに、松重が主な活動の場としていた舞台に興味が向いたという。ほかにも朝ドラ出演で「恋愛の悩みは(母・糸子だった)和久井映見さんに聞いてもらったりした。2人の息子の役だったんですけど、未だにお父ちゃん、お母ちゃんってメールしてます。(叔父・小次郎役の)京本政樹さんも自分のラインスタンプを送ってきたり、(姉・喜代美役の)貫地谷(しほり)ちゃんと食事したり、第2の家族です」と話すほどの『ちりとてちん』は大事な作品となった。

 現在、出演中の『PTA グランパ!』でも、自身が演じる山下の出身地が原作の群馬県から『ちりとてちん』の舞台となる福井県に変わっていた。「NHKだからかわからないけど山下が福井県出身になっていた。出身地がキーになるような話題もないんですけどね。ちりとてちんをやってたから名産とかも知ってるし、アドリブでつなげましたよ。飲み会のシーンで何が有名かって聞かれて『へしこ』とか言えた。そういうつながりがあったので、ちょっとビックリしました」とNHKからのうれしいサプライズを振り返った。

■バイプレーヤーとしての生き方

 朝ドラ以降は舞台を中心に多くの仕事をこなした。主役でない役も多く演じた橋本は、そこに生きがいを見つけた。「性に合っているのはバイプレーヤー。主役だとストーリーラインがしっかり決まってしまう。たまに出てくる2~3番手の方が、余白があって出てきてない時間に何をやっているかを表現できる。やっていると、そっちの方が楽しいんですよね。あと、受け身の役の方が好きなんです。たぶん、向いていると思いますし」と自ら分析。重ねて「(重圧を)背負いたくないので。あと、今は『バイプレーヤーズ』ってドラマもありますし、そう言っておいた方がいいかな」と笑った。

 そのための覚悟もしている。「売れるってどういうことか難しいんですけど、作り手の職人さんから認められて引っ張ってくれるようになったら、売れたと思うんです。それが今のちっちゃな目標ですね。舞台でもドラマでも変わらずにがんばって、50歳とか60歳とかで、そうなれればうれしいなと感じています。松重さんも、小日向(文世)さんも名バイプレーヤーとなる前に下積みが長かった。そんな簡単にはいかないので、もっと苦労しないといけないですね。」と地に足をつけて前を見据えた。

 演技の実力も折り紙つきだ。現在、公開中の映画『At the terrace テラスにて』では男性とのキスシーンも体当たりで演じた。「がっつりヒゲをなめ回すのは初めてでした。カットかけてくれないので、ずっとキスしてました。(脚本執筆の段階から役者を当てはめる)当て書と言われていたので、そっちの方と間違われました」と苦笑いで振り返る。それでも、この役から役者としての幅も広がったという。「この役をしてからジェンダーレスの役が増えましたね。(新宿)2丁目で飲んだときに、そっちの方から『大丈夫よ、本物に見えた』と言われました。軽い気持ちはできないと思っていたので『専売特許でやっていきます』と応えました。ホントの“バイ”プレーヤーになっちゃいますけどね」。全ての経験を糧に変えながら橋本は役者道をまい進する。

最終更新:4/9(日) 18:00
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