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トランプ政権の外交政策に変化? さまざまな憶測呼ぶ米国のシリア攻撃

4/10(月) 10:50配信

THE PAGE

 アサド政権による毒ガス使用の有無をめぐって、国連安全保障理事会で緊急会合が行われてから間もない6日、アメリカはシリア国内の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃した。地中海に展開する2隻の駆逐艦から発射された59発の弾道ミサイルは、シリア中部ホムス近郊にあるシャイラート空軍基地を標的としており、米国防総省は空軍基地内の格納庫、航空機、レーダーなどの破壊が目的であったと説明している。過去にオバマ政権がシリアへの軍事行動を検討した際には、ツイッターで批判を行ったトランプ氏。中国の習近平国家主席の訪米中に行われたシリアへのミサイル攻撃は、シリアの後ろ盾となっているロシアとのさらなる関係悪化や、シリア以外の地域でも米軍の軍事行動が実施される可能性、トランプ政権内部のパワーバランスの変化など、さまざまな憶測を呼んでいる。

プーチン大統領は「侵略行為」と激しく批判

 アメリカの軍事行動のきっかけとなったのは、4日にシリア北西部イドリブ県ハンシャイフンをシリア軍が空爆した際に、神経ガスのサリンを使用した疑いが濃厚になったことだった。イドリブ県は反政府組織の活動拠点として知られており、シリア軍とロシア軍はこの地域を標的とした空爆を続けてきたが、イドリブ県の保健当局は空爆による死者が少なくとも74人、500人以上が負傷したと発表している。

 犠牲者の解剖に職員を参加させた世界保健機関(WHO)は5日、有機リン系の化学物質が使われた可能性があるとの声明を発表。同日開かれた国連安保理の緊急会合では、アメリカのヘイリー国連大使が「安保理が具体的な行動を起こせない場合には、アメリカによる単独行動もある」との見解を示していた。それから間髪を入れない形で行われた巡航ミサイルによる攻撃。シリアの市民に対する化学兵器を用いた攻撃は今回が初めてではなく、オバマ政権は2013年にアサド政権に対する軍事行動を検討したものの、連邦議会や同盟国からのコンセンサスを得ることができず、見送られた。この頃はオバマ政権による対シリア軍事行動の可能性を批判していたトランプ氏だが、その後、アメリカでは初となるアサド政権側への攻撃を行ったのは他ならぬトランプ氏であった。

 ロシアとの関係改善に動くと見られていたトランプ政権が突然行ったシリアへのミサイル攻撃に対し、プーチン大統領やロシア政府関係者は憤りを隠さず、激しく批判している。

 ニューヨークタイムズ紙は7日、米政府高官の話として、シャイラート空軍基地にいた約100人のロシア軍関係者はミサイルが着弾する60~90分前に発射について伝えられていたと報じている。同紙によると、ロシア軍はシリア国内で巡航ミサイルに対する防空システムを配備していなかったが、ミサイル攻撃後すぐに防空システムの強化に踏み切ったのだという。アメリカは巡航ミサイルによる攻撃が成功したと発表したが、ロシアは多くが標的に命中しなかったと主張。8日には化学兵器が使用されたとされるシリア北西部のイドリブ県でロシア軍機による攻撃があり、民間人18人が死亡している。

 シリア内戦をややこしくしている点は、大きく分けて3つの勢力が文字通り三つ巴の戦いを繰り広げていることにある。アサド政権は「イスラム国(IS)」や反政府組織に対抗するため、ロシアに協力を要請。2015年9月末からシリア国内でロシア空軍機による攻撃が開始された。一方、シリアの反政府勢力を支援してきたのがアメリカだ。オバマ政権はシリアへの直接的な軍事介入には踏み切らなかったものの、反政府組織を物資面で支援していた。

 ロシアの後ろ盾を得たアサド政権と、アメリカやサウジアラビアから支援を受けている反政府勢力にとって、共通の敵はISで間違いないのだが、三つの勢力が絡み合う現状が事態をややこしくしている。イランもアサド政権を支持しており、トルコにいたっては、作戦ごとにアメリカとロシアの両方をサポートしている。シリア国内で発生している内戦に間違いはないのだが、事実上アメリカとロシアの代理戦争としての様相を呈している。

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最終更新:4/11(火) 5:36
THE PAGE