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米国の北朝鮮攻撃がにわかに現実味

4/10(月) 17:01配信

ニュースソクラ

シリアへのミサイル攻撃で

 米軍が6日、化学兵器を使用したと疑われているシリアの空軍基地に対し、巡航ミサイルで攻撃した。今後、シリアのアサド政権を支援するロシアとの対立が避けられなくなったが、想起されるのはトランプ政権の北朝鮮への対応だ。

 トランプ大統領は北朝鮮の核、ミサイル開発に対して「すべての選択肢がテーブルの上にある」と語っている。北朝鮮への先制攻撃もにわかに現実味を帯びてきたが、本当に行われるのか、行うとすると、どんな形になるのか。

 安倍晋三首相とトランプ米大統領は日本時間6日朝と9日朝に電話会談した。内容は、北朝鮮が行った弾道ミサイル発射であり、米中会談だ。発射自体は失敗に終わったようだが、両者は「重大な脅威」との認識で一致した。

 これに先立ち、トランプ氏は英フィナンシャル・タイムズ紙との会見で「中国が北朝鮮問題を解決しないなら、われわれがやる。今言えるのはただそれだけだ」と述べている。

 シリアへの攻撃は、7日に米国で行われた米中首脳会談に合わせるかのように実施された。トランプ氏が常々話している、北朝鮮への「あらゆる選択肢」が、脅しでないことを証明したとも言える。

 標的はシリア中部ホムス県にある飛行場で、「滑走路と航空機、燃料設備」を狙い、航空機などを破壊したと報道されている。また、アサド政権を支援しているロシアには、人的被害が出ないよう攻撃を事前に伝えたという。

 ただ、北朝鮮への先制攻撃は、過去20年間解決できなかった核問題を一瞬に消し去る「魔法の杖」ではない。北朝鮮の核能力が高度化し、ミサイル能力も高まっている現在の状況では、かなり難しい。

 よく知られていることだが、1994年、クリントン政権は北朝鮮の攻撃を検討した。朝鮮半島で全面戦争が再発した場合、死者は100万人に上り、うち米国人も8万から10万人が死亡する。また、米国が自己負担する費用は1千億ドルを超えるという試算結果が出た。金泳三韓国大統領も反対した。その後、カーター元大統領が訪朝し、米朝間で対話のムードが生まれたため、実行に移されなかった。

 当時、クリントン政権の米国防長官だったウィリアム・ペリー氏は昨年11月に韓国で講演し、「寧辺核施設の先制攻撃作戦自体は難しくないだろうと判断した。しかし、北朝鮮の反撃によって、全面戦争が起きれば、韓国が莫大な被害を受けると分析された」と回想した。

 もし今回、米国が先制攻撃するとしても、全面戦争にならないよう、核施設やミサイル基地を慎重に選んだ部分攻撃になるだろう。一部で伝えられている金正恩党委員長の斬首作戦の決行は、危険が多すぎる。

 当時大統領府統一秘書官だった丁世鉉・元統一相は、最近韓国の新聞に、クリントン政権の先制攻撃について寄稿している。北朝鮮先制攻撃は「寧辺核施設への先制攻撃を3日以内に終える」という内容だったという。

  しかし、北朝鮮は休戦線の近くに配備された300~500キロの短距離ミサイルを、ソウルに向け発射する。全面戦争になった場合、南北とも焦土化し、朝鮮戦争(1950~1953年)以上の被害が出る。戦後の復旧には「30年間が必要で3000億ドル以上の復旧費がかかる」(丁氏)と聞いていたという。

 シリアの場合は、化学兵器の使用が、トランプ大統領にとって「レッドライン」だった。北朝鮮については「大陸間弾道弾(ICBM)」の発射だ。もし、アメリカ本土に到達するミサイルの開発が確認された場合が「レッドライン」になる。

 金正恩党委員長は、子供の頃から負けず嫌いだったという。米国から圧力をかけられればかけられるほど、意地になり、ICBMの開発と核実験に拍車を掛けるかもしれない。

 経済発展のため自国の周辺を安定な状態にしておきたい中国は、北朝鮮に本格的に関与するとみられる。朝鮮半島情勢は当面緊張が続きそうだ

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

五味洋治 ジャーナリスト

最終更新:4/10(月) 17:01
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