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米国のシリア攻撃、各国はどう反応したか――欧州、日本は米国支持

4/11(火) 6:40配信

ZUU online

シリアのアサド政権軍によると見られる反体制地域イドリブへの化学兵器攻撃から3日後、米軍は駆逐艦2隻を用い、シリア西部に位置するアサド政権軍のシャイラット空軍基地に巡航ミサイル「トマホーク」を59発撃ち込んだ。

シリア内戦開始以来、そしてトランプ政権誕生以来、アサド政権に対する初の武力行使となった。欧米、アジア諸国はおおむね米の行動を支持。ロシアは対米体制を整えている。

■「化学兵器禁止条約の義務に違反した」シリア内戦

内戦勃発から6年。シリア北西部イドリブで、サリンなどの神経ガスと推測される化学兵器が使用され、子どもを含む72人が新たな犠牲となった。死亡に至らず、現在病院で手当てを受けている被害者は数百人にのぼると報告されている。

トランプ大統領は被害報告を受け、同日中に対応策の検討を指示。国家安全保障会議が絞り込んだ計画を基に、最終的に攻撃命令がだされた。実際の攻撃は、米フロリダ州パームビーチでの習 近平総書記との会食中に行われた。

トランプ大統領は今回の判断に至った経過について、「シリアが禁じられた化学兵器を使用して罪のない人々の命をうばい、化学兵器禁止条約の義務に違反した」ことを挙げている。

■欧米、アジアは米支持「最適な手段による制裁実施」

英政府は「野蛮な行動への適切な対応」とし、米のシリア攻撃を全面的に支持すると表明した。フランス、ドイツともに「すべての責任はアサド政権にある」と断定し、化学兵器の使用に対しては国連枠内で「最適な手段による制裁実施」を主張。トルコは「アサド政権は国際的な舞台で完全に罰せられるべき」と肯定した。

日本からは安倍首相が「米国の行動は事態の深刻化を防ぐための措置」との解釈のうえで、米国の決意を支持する立場を示した。会食中に攻撃について知らされた習 近平総書記も、理解を示したという。

韓国は「北朝鮮からの軍事挑発をこれ以上容認しないとの強いメッセージ」と受けとめる一方で、「シリアは封じ込めれても北朝鮮は挑発をやめない」と見ている。

■トランプ大統領、プーチン大統領の関係は緊迫?ボリビアはロシア支持

しかしトランプ大統領が就任前から擁護し続けていたプーチン大統領との「良好な関係」には、大きなひびを生じさせる引き金となりかねない。

アサド政権の後ろ盾とされるロシアからは、当然ながら「米による攻撃は国際法に反する侵略行為」と批判が挙がった。プーチン大統領は主要閣僚を召喚し、米露軍の連絡体制停止を表明。

ロシアやボリビアの要請で開催された国連安全保障理事会の緊急会合開催では、両国間で激しい非難合戦が交わされた。米国は「完全に正当な対応」と主張。さらなる牽制行動の準備も整っていることを明らかにした。

ボリビアはロシア側に立ち、「武力行使は国連憲章51条の自衛権行使、あるいは安保理の承認下のみ合法と見なされる」と訴えた。

■シリア大統領府「無法で無責任な行為」と米批判

肝心のシリアの反応はというと、米の有無をいわせぬ武力行使を「無法で無責任な行為」とシリア大統領府が批判。シリア軍やロシアのメディアは、子どもを含む市民と兵士10人以上が犠牲になったほか、基地の戦闘機、レーダー施設が破壊されたと報じた。

シリアで化学兵器が使われた背景については、様々な憶測が飛び交っている。有力なものでは、新米政権がロシアと歩みよる姿勢を示したことで、「米=反アサド支援、露=アサド支援」という対立構造にゆがみが生じたとの見解だ。外交政策の緩和を「反政府勢力に恐ろしい化学兵器を使用しても制裁を受けない」と早とちりしたアサド政権が、ここぞとばかりに凶行にでたというのだ。

真相は現在も解明されていないが、このまま報復戦が拡大すれば、シリア大統領府の声明どおり「反体制派への攻撃を加速させる」結果になりかねない。欧米が恐れる過激派組織「イスラム国(IS)」の活動が、さらに活発化する可能性も考えられる。

■米武力行使直前に「アサド政権軍の空軍基地攻撃」を呼びかけたクリントン氏

もうひとつ興味深い事実が報じられている。米大統領選で対候補者だったヒラリー・クリントン氏が、米軍が武力を行使する1時間前に「アサド政権軍の空軍基地を攻撃せよ」と呼びかけていたのだ。

クリントン氏にとって米大統領選での敗北以来初となった公式インタビューで、「アサド政権軍の空軍基地が多くの命をうばうすべての元凶」であるとし、基地を破壊するようトランプ大統領に呼びかけた。

選挙運動中、「地上軍を派遣して領土を占領するのではなく、特殊部隊を派遣する」という対シリア政策を公言していたクリントン氏。トランプ大統領からは、「ロシア軍との衝突をまねき、第3次世界大戦の火種となりかねない」と非難されていた。

今回の米シリア攻撃にともない、「第3次世界大戦勃発まで30秒というきわどいラインに、我々は立たされていたのかも知れない」と英ミラー紙は報じた。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

最終更新:4/11(火) 6:40
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