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NIMSら、超伝導体の移転温度を精密に制御

EE Times Japan 4/11(火) 21:31配信

■フタロシアニン分子が原子層物質上で秩序性の高い単分子膜を形成

 物質・材料研究機構(NIMS)若手国際研究センターの吉澤俊介ICYS研究員及び、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の内橋隆グループリーダーらによるグループと、東京大学大学院工学系研究科の南谷英美講師、自然科学研究機構分子科学研究所の横山利彦教授、千葉大学大学院工学研究院の坂本一之教授らからなる研究チームは2017年4月、原子層超伝導の磁性分子による精密制御に成功したと発表した。また、そのメカニズムについても解明した。

 グラフェンなど原子レベルの厚みしかない原子層物質が注目されている。特に、電気抵抗ゼロの超伝導状態となる原子層物質では、極めて高い転移温度を示すものが発見されている。これらの物質は、表面界面からの電荷ドーピングによって、特性を制御することが可能なことは知られているが、そのメカニズムはこれまで解明されていなかった。

 研究チームは今回、マンガン原子または銅原子を含むフタロシアニン分子を有機分子に用い、シリコン基板上のインジウム原子層の系を原子層超伝導体に用いて、原子層物質に対するドーピングのメカニズムを詳しく調べた。

 そうしたところ、このフタロシアニン分子が原子層物質の上に極めて秩序性の高い単分子膜を形成することを発見した。これは、有機分子と原子層物質の間の相互作用が弱く、さらに有機分子同士の相互作用によって分子が自ら規則正しく並ぶために生じた、とみている。これまでは金属原子やイオン液体をドーピングに用いていたが、理想的なヘテロ界面構造を得ることはできなかったという。

 研究チームは、有機分子が超伝導特性に与える影響についても調べた。マンガンを中心とした有機分子だと超伝導は急速に破壊されてしまった。ところが、マンガンを銅に取り替えたところ、超伝導転移温度は上昇に転じた。有機分子膜の配列構造は、両者の間でほとんど変化していないという。

 さらに研究チームは、放射光による磁気測定や光電子分光および理論計算によって、有機分子とインジウム原子層の電子状態についても調べた。この結果、有機分子は中心の金属原子の位置にスピンをもっていることが分かった。また、「電荷ドーピングによる転移温度の上昇効果」と、「分子内に存在するスピンによる転移温度の降下効果」があり、転移温度が変化する方向は、2つの効果のバランスによって決まることが分かった。さらに、スピン効果ではスピンが存在する「電子軌道の向き」が決定的な働きをすることも判明した。

 通常のドーピングにおいて電子軌道の向きはさほど重要ではなく、「隠れた自由度」の存在であった。ところが、マンガン原子を含む場合は電子軌道が界面に対し垂直(縦)に伸びる。このため、スピンは超伝導と強い相互作用を持つことが明らかとなった。ところが、銅原子を含む場合には、電子軌道が界面に対し平行(横)に伸びるため、スピンは超伝導と弱い相互作用しか示さないという。

 研究チームは今後、超伝導の高特性化を目指していく。磁場の方向によっては極めて高い臨界磁場をもつ超伝導体を開発することも可能だとみている。また、デバイスへの応用などにも期待している。

最終更新:4/11(火) 21:31

EE Times Japan