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露1300人超拘束の反政権デモ 不正に怒るネット世代「プーチンの子供たち」波乱要因に

産経新聞 4/12(水) 10:15配信

 ロシアの主要都市で3月26日、数万人が参加し、1300人以上が治安当局に拘束される反政権デモがあった。長期化するプーチン露政権への不満が蓄積していることを示したこのデモで、新たな中核として「若者」が注目された。大学生や日本で言う高校生など、幼少期からずっとプーチン現大統領が指導者だった世代である。消費文化を謳(おう)歌(か)し、インターネットの恩恵を享受する彼らが、プーチン体制の波乱要因として急浮上した。(モスクワ支局長 遠藤良介)

 3月26日のデモは、反政権派指導者の1人、アレクセイ・ナワリヌイ氏(40)の主宰する「汚職との戦い基金」が、メドベージェフ首相(前大統領)の隠し資産疑惑をネット動画で告発したのが発端だ。ナワリヌイ氏が「反汚職」や首相退陣を掲げて呼びかけたデモには、モスクワで約3万人、今月3日に地下鉄での爆発があったサンクトペテルブルクでは約1万人が参加。デモは、極東のウラジオストクやシベリアのノボシビルスク、ウラル地方のエカテリンブルクなどにも広がった。

 デモで千人以上もの拘束者が出たのは、第1次プーチン政権の発足した2000年以降で初めて。モスクワでは11年末~12年春、プーチン氏が3期目の大統領に返り咲くのに先立って最大10万人が参加する反政権デモが起きており、今回はそれに次ぐ規模となった。

 11~12年のデモは、30~40歳代を中心とする中産階層が主体だったと評されている。今回のデモでは、学生風の若者が目に見えて増え、拘束された者の中には多数の高校生もいた。

 若年層の比率を正確に把握するのは困難だが、英字紙モスクワ・タイムズは、デモ行動を支持したネット上のグループには、18歳以下の若者が約16%加わっていた-と分析している。

 プーチン氏が最初の大統領に就いた00年に生まれた人ならば、今年でちょうど17歳。幼少期の2000~08年、ロシア経済は国際石油価格の高騰にあおられて年平均7%のペースで成長し、物心つく頃には都市部ですっかり消費文化が定着していた世代である。

 その若者らが街頭デモに繰り出したことは、政権にとってかなりの衝撃だったに違いない。14年のクリミア併合以降、プーチン氏の支持率は8割超の水準を維持しており、政権が強力に推進してきた「愛国教育」にも、主要メディアのプロパガンダにもぬかりはないと思われていたためだ。

 高価なスマートフォンを手にし、物質的には問題が少ないように見える若者らを、何がデモに駆り立てたのだろうか。

 モスクワのデモ参加者から最も多く聞かれたのは、「メドベージェフ首相は、不正蓄財疑惑について何らかの説明をすべきだ」という怒りの声だ。首相や政権幹部が告発動画を事実上無視したことについて、少なからぬ若者が「社会への侮辱だ」と受け止めた。

 コネで就職や収入が決まるロシア特有の就業実態に触れ、「社会的上昇の可能性」が閉ざされている-と訴える若者も少なくない。政権の長年変わらぬ面々が腐敗にまみれているとの疑惑が、若年層には「社会の閉(へい)塞(そく)感」や「将来の展望のなさ」に重なっている。

 若者らは、政権の統制が行き届いた主要テレビ局でなく、ネットから情報を得ている。テレビが貧富の格差を含む「現実の問題」に目を閉ざす中、政権がネット統制を推し進めていることへの反発も強い。

 この世代は、SNS(会員制交流サイト)を通じた「横のつながり」による情報交換を重視する。政権が得意とする「上からの一方的なプロパガンダ」が若い人々には効かず、ナワリヌイ氏は逆に、ネットを駆使して若年層の“獲得”に成功した-との分析もある。

 大統領選まで1年を切った中、政権が反体制派への締め付けやネット統制を強めれば、それがいっそう反発を招きかねない構図が生まれている。「プーチンの子供たち」から目を離せない。

最終更新:4/12(水) 10:15

産経新聞