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シリア攻撃、米ロの非難合戦にとどまるか

4/11(火) 16:00配信

ニュースソクラ

国務長官の訪ロに注目

 米国が7日、シリア空軍基地を巡航ミサイルで攻撃、シリアをめぐる国際情勢は緊迫の度を増している。今後の焦点の一つはロシアの対応である。ウラジーミル・プーチン大統領は米国の攻撃をシリアという主権国家に対する「侵略」だと非難した。それはこれまでの経緯から考えて当然であるにしても、すでに相当にぎくしゃくしている米ロ関係が更に悪化し、対決色が強まる可能性がある。

 ロシアは2015年9月にシリアに空軍を投入、バシャル・アサド大統領の政府軍に肩入れしながら国際テロ組織「イスラム国(IS)」の拠点を空爆してきた。この戦略は、ISを掃討し、シリア内戦を終わらせるにはアサド政権の力が必要だとの認識に基づく。アサド政権が倒れればISはますます勢力を伸ばし、内戦もさらにひどくなる。アサド政権に対抗する勢力ではISを封じ込められないとみている。

 従ってロシアにとってシリア政府軍を弱める動きはけしからんということになる。それにロシアはシリア政府軍機による化学兵器使用を否定している。またロシアは従来から米国などによるシリア領空でのISや反政府勢力に対する空爆を侵略であると批判してきた。これらの動きを考慮するなら、プーチン大統領の反応に驚きはない。ただし、今回の攻撃は米軍が政府軍基地を狙った初めての事態であり、非難の度は従来以上かもしれない。

 ロシアの対応の今後の焦点は、侵略非難だけで終わらせるのかどうかだ。ロシア軍が舞台裏でシリア政府軍に味方して周辺の米軍への攻撃を後押しするという展開が危惧される。だが、その可能性は高くないのではないか。

 米国防省によると、今回の攻撃について事前にロシア側に連絡したし、対象の基地にはロシア機が存在しなかった。ただし、この事前連絡は軍レベルのもので、トランプ大統領がプーチン大統領に直接連絡したわけではなさそうだ。それでもロシアに対する最低限の配慮だけは示したと言えないだろうか。

 それに今のところ米軍によるシリア政府軍基地攻撃は限定的で、アサド政権を退場させる効果を持つかどうかは疑問だ。

 ロシアはとにかく、米軍の攻撃について、シリア政府軍が化学兵器を使ったという間違った情報に基づく正当化できない行動であり、しかもISを利するだけだと強烈に非難し続けるだろう。

 今回の攻撃で米ロ関係の改善がさらに一歩遠のくことは避けられない。トランプ大統領は昨年の大統領選挙運動中にプーチン大統領を高く評価していたことから、対ロ関係を改善するのではとの見方があるが、少なくとも当面は改善ではなく悪化に歯止めをかけられるかどうかが問題となる。

 レックス・ティラーソン米国務長官は来週、訪ロしプーチン大統領と会談する予定というから、まずはその結果を注視したい。

 ところで、今回の攻撃が米中首脳会談の直前、しかも北朝鮮の核兵器開発が緊迫の度を高める状況の下で実施されたことで、朝鮮半島をめぐる情勢も一段と緊迫化するだろう。その意味でもシリア情勢の新たな展開は日本にとって重大だ。

■小田 健(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。
現在、国際教養大学客員教授。

最終更新:4/11(火) 16:00
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