ここから本文です

ハイブリッドIT・マルチクラウドを見据えたNTT Comの戦略

アスキー 4/12(水) 8:00配信

NTTコミュニケーションズは2017年度の事業戦略説明会を開催した。
4月11日、NTTコミュニケーションズは2017年度の事業戦略説明会を開催。NTTコミュニケーションズ代表取締役社長の庄司哲也氏は、ハイブリッドなIT環境とマルチクラウドを前提にサービスを拡充していく方針を披露し、セキュリティや運用管理、パートナーシップなどの取り組みまで幅広く解説した。
 
ハイブリッドなIT環境は「過渡期の現象」ではない
 AWSやMicrosoft、Googleなどメガクラウドベンダーが存在感を増す中、通信とコンピューティングを統合したキャリアクラウドの存在感を打ち出してきたNTTコミュニケーションズ。「Transform. Transend.」という旗印を掲げ、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するという同社の戦略は、2020年に向けたビジョンの実行フェーズにさしかかっている。
 
 記者が会場を埋め尽くした戦略発表会に登壇したNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 庄司哲也氏がまず言及したのは、「クラウド時代の最適配置」という課題だ。オンプレミスからクラウドに移行する過渡期の現在、企業のITリソースは、自社、データセンター、クラウドなどに分散。クラウド1つとっても、SaaSやIaaSなどレイヤーの異なるクラウドが混在し、さまざまなベンダーのクラウドを併用するマルチクラウドの環境も珍しくなくなりつつある。結果的にハイブリッドなIT環境になっているのが、現在の企業システムだ。
 

 しかし、そこから一気にクラウドシフトするかというと、話はそれほど単純ではないらしい。「クラウドに移行することで、『イニシャルコストは下がったが、ランニングコストが思ったように下がらない』『データベースの性能が出ない』などの声が上がっている。実際にオンプレミスに戻すことを検討するお客様もいらっしゃる」と庄司氏は指摘する。また、単純にオンプレミスからクラウドへサーバーを移行しても得られるメリットは小さい。「サーバーをクラウドに移すだけの単純なマイグレーションは果たして正解なのか。そんな声がお客様から上がるようになってきた」と庄司氏は語る。
 
 ハイブリッドなIT環境はクラウド移行に向かう過渡期の現象ではなく、今後もこうしたオンプレミスとクラウドの併用、マルチクラウドの併用が続くというのが同社の見方と言える。庄司氏は、「オールクラウドは唯一無二の正解ではない。ハイブリッドな利用をきちんと考えるフェーズにさしかかっている」と指摘する。
 
複雑なハイブリッドICT環境を最適化する
 しかし、ハイブリッドなIT環境は、セキュリティとマネジメントという観点で、IT部門に大きな負担をもたらす。異なるクラウド、異なるネットワークで、セキュリティのコントロールポイントも異なり、コストやIDなどの統合管理も困難だ。「今まではセキュアなVPNでシステムを使っていたが、インターネットがデフォルトのクラウドの場合、最初からセキュリティを考慮しなければならない」(庄司氏)。
 
 そして、NTTコミュニケーションズの役割は、このように複雑化したハイブリッドなIT環境を最適化することだという。これを実現するための2017年度の取り組みとして、庄司氏が挙げたのが、高信頼・高品質なインフラの追求というアンダーレイサービスと、SDx+Mを中心としたオーバーレイサービスである。これにより、顧客のデジタルトランスフォーメーションに寄与するのが同社の方向性だ。
 
 前者の高信頼・高品質なインフラという点に関しては、通信事業者として長らく実績を重ねてきた海底ケーブルとデータセンターの計画が披露された。
 
 現在、同社がグローバルに展開する通信ケーブルは総延長で地球を7周する28万kmに及んでおり、容量も8.2Tbpsとなる。このうち日本とアジア間のケーブル容量は5Tbps、日米間のケーブル容量も2Tbpsで、多くのクラウドサービスを支える基盤になっているという。来月には、ケーブル敷設のみならず、災害対策の役割も担う新造船「きずな」がお目見えし、こうした物理インフラの拡張や保守を強力に推し進めるという。
 
 「Nexcenter」ブランドのデータセンターも18カ国・地域で展開しており、サーバールームは39.4万㎡に達する。アジアのみあらず、北米や欧州への展開も進めており、6月にはテキサス州ダラスに世界最大規模となるTX1データセンターが開設される予定だ。
 
Software-Definedなサービス群をマネジメントサービスで管理
 後者の「SDx+M」のソリューションは、同社が近年注力してきたSoftware-Definedなインフラとサービスに関する取り組みになる。
 
 先日発表されたSDx+Mは、WANのSD化を実現する「Software-Defined Network Service」、LANのSD化を実現する「Software-Defined LAN」、そしてクラウド接続のSD化を実現する「Software-Defined Exchange」に、クラウド管理、運用管理、セキュリティ管理などのマネジメントサービスを統合したソリューション。ハイブリッドなIT環境を最適化するNTTコミュニケーションズの切り札と言える。
 
 庄司氏は、グローバルに500拠点を展開するエンタープライズ企業でのPoCについて語る。同エンタープライズ企業では、基幹系システムと情報系システムで異なるネットワークを冗長化して引いて拠点とつないでいるため、回線数だけで2000回線。さらにネットワーク機器の保守のためにエンジニアが常駐しており、年間で10億円のコストがかかっていたという。
 
 今回のSDx+Mソリューションにより、基幹系と情報系で冗長化されていたMPLSネットワークを、MPLSとインターネットのハイブリッド回線に変更。LANのSD化まで見込み、同社のCloud Management Platrofmで統合管理する構成をとることで、回線数を75%、年間のコストも25%削減できると見込んでいる。
 
 その他のサービスも拡充する。たとえば、大容量化するDDoS攻撃に対しては複数のDDoS対策サービスのオーケストレーションを提供する「マルチDDoS対策サービス」や複数のCDNを統合管理する「Software-Defined Multi-CDN Service」などを計画しているという。動画配信に関しては、NTTぷららなどとともに4K-VOD、4K-IP放送、4K-IPライブなど日本初・世界初の商用化実績を積んできたこともアピールされた。
 
マルチクラウドに向けた全方位展開に進む
 後半でメインに取り上げたのは、パートナーシップだ。NTT ComのEnterprise CloudやNexcenterに接続するクラウドサービスは、現在、AWS、Microsoft Azure、Office 365、BOX、Salesforceの5つで、今後はOracle Cloudへの接続も予定している。
 
 まず紹介されたのは、3月に発表されたマイクロソフトとの提携。これは同社のEnterprise CloudのオプションとしてMicrosoft Azureを提供するというもの。Azure Site RecoveryやAzure Backupでバックアップをとることが可能になるほか、将来的にはマネージドサービスやIoT・AI系サービスとの連携も検討しているとのことで、今後が期待される。
 
 さらに2月にはDell EMCとVirtustreamの国内展開で提携。VirtustreamはNTTコミュニケーションズのEnterprie Cloudの共有型SAPシステム向けクラウドとして提供され、基幹システムに向けた高い信頼性と安定した性能を実現するという。
 
 また、2016年に発表されたNTTデータ、インテル、Pivotalとの提携では、クラウドネイティブないわゆる「モード2」の推進を実現するソリューションを実現する。アジャイル開発やDevOps、IoT、ビッグデータ、AIなどの最新技術を企業に取り込むためのコンサルティングやトレーニングなども提供し、人材やソリューション不足を補うという。
 
APIサービス、IoT・AI分野は今後大きく拡充
 アプリケーションレイヤーに関しては、APIの活用を積極的に推進し、日・米・欧でAPIゲートウェイの提供を進める。APIゲートウェイにより、認証・権限管理、ログの一元管理、セキュリティ対策などの機能をまとめて提供。さらにパートナーのSaaSと柔軟に連携できる「API Gateway as a Service」の提供も、今後計画しているという。
 
 IoTやAIに関しては、パートナーや顧客とのコラボレーションにより、多面的なPoC展開を進める。発表会では化学プラントにおいて20分後の製品品質をディープラーニングで予測するPoCを進めている三井化学との協業ビデオが披露。化学プラントの自動運転や製造業のデジタルトランスフォーメーションを見据えた取り組みは年内に発表される。
 
 さらにNTTコミュニケーションズ自体もコンタクトセンターにおけるオペレーターのウェルネスマネジメントにAIを活用していく実験を進めており、顧客対応するオペレーターの心拍数にあわせてスーパーバイザーが対応や応対者の交代を指示できるようにしているという。最後、庄司社長自身が大いに注力するMcLaren Hondaとのテクノロジーパートナーシップをアピールし、戦略の説明を締めた。
 
 Global Cloud Visionを掲げ、グローバルでのM&Aやサービス展開に邁進してきたNTTコミュニケーションズだが、庄司体制に移行し、昨年のNTT Com Forumで感じた変化が少しずつ具体的なものになってきた。グローバルに展開するネットワークとデータセンターでインフラの最適化を推進しつつ、クラウドサービスに関してはあえて自社ブランドにこだわらず、ハイブリッドなIT利用とマルチクラウドを前提とした環境の最適化を戦略のコアに据える形だ。
 
 
文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

最終更新:4/12(水) 8:00

アスキー