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<覚醒剤所持>「麻薬取締官が助長」被告の刑減軽 大阪地裁

毎日新聞 4/12(水) 16:46配信

 覚醒剤を営利目的で所持したとして、覚せい剤取締法違反などの罪に問われた大阪市西区の無職、渡辺吉康被告(55)に対し、大阪地裁は12日、懲役8年6月、罰金300万円(求刑・懲役13年、罰金300万円)の判決を言い渡した。被告は「おとり捜査に協力しただけ」と無罪を主張。村越一浩裁判長は、おとり捜査を否定した一方、「麻薬取締官の対応が覚醒剤の取引を助長した面は否定できない」として刑を減軽した。

 判決などによると、渡辺被告は2014年7月、厚生労働省近畿厚生局の麻薬取締官と知り合った。被告は大阪府警に逮捕される15年4月までの間、取締官と喫茶店などで約30回面会。約200通のメールや、計11時間の通話をしていた。

 被告は公判で「取締官の『エス』(スパイ)となり、指示を受けて覚醒剤を入手した」と主張。15年4月、取締官に「今から名古屋取引です」とメールを送り、名古屋在住の外国人密売人と接触し、取締官が密売人の撮影に成功するなどの関係を続けていた。

 村越裁判長は覚醒剤の入手について「被告が自らの利益を図るためだった」として取締官の指示を否定。2人の関係については「持ちつ持たれつだった」「取締官は被告を通じて密売人の情報を収集するため覚醒剤の取引を容認していた」と指摘した。

 判決によると、被告は15年4月、大阪市内のトランクルームで、覚醒剤やコカインを計約1キロ、営利目的で所持した。

 被告代理人の下村忠利弁護士は「控訴するかどうか検討したい」と話した。近畿厚生局麻薬取締部は「コメントできない」としている。【遠藤浩二】

 【ことば】おとり捜査

 捜査機関やその協力者が、身分や意図を隠して犯罪を行わせるよう働きかけ、相手方が実行に踏み切った際に検挙する捜査手法を指す。銃器や薬物犯罪などの捜査に用いられ、既に犯罪を行う意思のある者に実行の機会を与える「機会提供型」と、犯意のない者に働きかける「犯罪誘発型」があるとされる。

 2004年の最高裁決定は、(1)おとり捜査以外の手法では証拠がつかめない(必要性)(2)実行の機会をうかがっている人物に機会を提供する程度の働きかけ(相当性)--という二つの基準を示して「適法」と判断した。

 一方、北海道小樽市で1997年に拳銃を所持したとして銃刀法違反罪で実刑判決が確定した男性の再審請求では、札幌地裁が昨年3月、「犯罪誘発型」の違法なおとり捜査だったと認定し、再審開始を決定。今年3月に男性の無罪が確定した。

最終更新:4/12(水) 21:23

毎日新聞