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入社後に合意もなく「出向」命令、9年も経過…会社のやり方に問題はないのか?

4/12(水) 9:46配信

弁護士ドットコム

入社後に合意もないまま出向を命じられ、9年間が経過したが、元の会社に戻ることはできるのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな相談が寄せられた。

投稿者は、採用時に関連会社への出向の可能性があることの説明は受けておらず、配属決定の際にも、出向についての合意をしていなかったという。また、出向の期間が9年間もの長期間に及んでいることにも疑問を抱いている。就業規則、労働協約には、出向を命じる規定と条件は記されているが、出向の期間については明記されていないそうだ。

入社後、合意もないまま出向を命じたことに問題はないのか。また、出向が長期間に及んで、もとの会社に戻りたいと思った場合、出向元の会社に戻ることはできるのか。柴田幸正弁護士に聞いた。

●出向するには、労働者の同意が必要

「使用者が労働者に対して出向を命ずるためには、就業規則あるいは労働協約上の根拠規定があり、出向することについての労働者の同意が必要とされています。ここでいう労働者の同意については、労働者の十分な理解のもとで行われた真意に基づくものを必要とすべきです」

今回のケースでは、どのように判断されるのか。

「ご相談の場合は、採用時や配属決定の際に出向についての合意をしていないとのことですから、具体的事情にもよりますが、そもそも出向を命じられないケースとも言えそうです。また、本件では、出向の期間についての明示がないとのことですから、このことも出向命令の有効性に影響しそうです。

労働契約法14条においても、『使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする』と明文化されています。

この点については、出向命令をする使用者側の業務上の必要性と、出向者の労働条件や生活上の不利益とを比較して検討し、例えば、出向先の労働条件・出向期間・復帰の条件などについて、労働者に著しい不利益を被らせない内容で具体的に規定が整備され、その規定を前提とした労働者の同意が必要と考えるべきです。

こうした立場によると、本件の場合は、出向期間についての明示がないので、労働者にとってはいつになったら元の会社に戻れるか分かりませんから、労働者にとっての不利益は著しく、労働契約法14条により出向命令が無効となる可能性があります(実際には、他の事情も加味されて有効性が判断されます)」

無効となった場合には、期間にかかわらず出向元の会社に戻れるのだろうか。

「出向命令が無効となれば、出向元の会社との雇用契約が維持されたまま、労務提供の相手方が出向先の会社から出向元の会社に戻ることになります。

出向は、転勤と違って、本来の雇用契約の相手方である使用者とは異なる使用者が労務提供の相手方になる点で、労働者に与える影響が大きいものです。労働者としては、条件が曖昧なままで出向に応じてしまうと、思わぬ不利益を被るおそれもありますから、出向の条件を明示してもらった上で同意をするようにしたいものです」

【取材協力弁護士】
柴田 幸正(しばた・ゆきまさ)弁護士
2008年登録、愛知県弁護士会所属。同弁護士会の労働法制委員会では研修部会長を務め、2016年10月からは家事調停官(非常勤裁判官)も兼務。地元の瀬戸市で、個人向けの一般民事・家事事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。
事務所名:柴田幸正法律事務所
事務所URL:http://shibatayukimasa-law.p-kit.com/

弁護士ドットコムニュース編集部