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国営サウジアラムコの上場、米国勢が有利?

4/12(水) 14:00配信

ニュースソクラ

副皇太子訪米で、米国がサウジへの巨額投資に舵切る

 イランとの核合意を推し進めた米国のオバマ前政権に不信感を強めてきたサウジアラビアだが、トランプ新政権への移行を機に関係強化に乗り出した。脱石油依存を柱とする構造改革「サウジ・ビジョン2030」を主導するムハンマド副皇太子が3月半ば、トランプ米大統領と会談し、巨額の投資計画について協議していくことを決めた。この情報を受けてか、国営石油会社のサウジアラムコが予定する新規株式公開(IPO)に関連し、上場候補先としてニューヨーク証券取引所(NYSE)が急浮上しているという。

 「サウジ・ビジョン2030」にかかわる目玉政策の1つが、世界最大規模となるサウジアラムコのIPOである。2018年にもアラムコ株式の一部を売り出す方針で、株式市場からの調達資金を公的投資基金(PIF)の資金増強に振り向ける。

 アラムコ株式を公開した場合、時価総額で少なくとも2兆ドルとなる見通し。放出される株式は全体の5%だが、1,000億ドル規模の株式公開となる。これまで最高だったアリハバ・グループ・ホールディングスの250億ドル(2014年)をはるかに凌ぐ巨大上場となる。

 サウジアラムコはこれまで、リヤド証券取引所のほか、複数国の証券取引所に上場する計画を表明済みだ。「サウジ・ビジョン 2030」が公表された2016年4月末、アラムコ上場でいち早く触手を伸ばしたのは、香港証券取引所(HKEX)だった。

 今年2月初めには、サウジのファリハ・エネルギー鉱物資源相がシンガポール証券取引所(SGX)と協議している事実を明らかにした。他方、3月半ばに来日したサウジのサルマン国王は安倍晋三首相と会談。両首脳はアラムコの東京証券取引所(TSE)への上場に向けた協議の推進で合意し、共同研究グループを設置する方針が決まった。

 アジア勢の積極的なアプローチとは対照的に、欧米勢の目立った動きは伝わっていなかった。だが、ここにきてニューヨーク証券取引所(NYSE)が注目を集めている。ムハンマド副皇太子の訪米で大きな進展があったとされるためだ。

 3月14日、ムハンマド副皇太子はホワイトハウスでトランプ大統領と会談。脱石油経済を掲げるサウジに対し、米国はインフラやテクノロジーなどの分野に今後4年間で2,000億ドル規模の投資を行う計画を提示したようだ。

 外資系の金融関係者らによると、この投資計画が本決まりとなれば、アラムコは上場先として無条件にNYSEを選ぶとの観測が急浮上してきたという。サウジアラムコのIPOにかかわる引受幹事に米モルガン・スタンレーとJPモルガン・チェースの2社が選出されたとの情報も広がっている。

 サウジ政府の最近の動きもIPOに向けた戦術のようだ。同政府は3月末、石油産業に課す税率を85%から50%に引き下げた。税率の大幅引き下げは、サウジアラムコの税引き後利益の上昇を狙ったものと受け止められている。

 コンサルティング会社のライスタッド・エナジー(ノルウェー)はこのほど、IPOが実現するまでの原油平均価格が1バレル75ドルを前提とした上で、今回の税率引き下げで、これまで2兆ドルとされたサウジアラムコの時価総額が約3兆4,000億ドルに跳ね上がると試算する。

 サウジアラムコのIPOでの幹事証券業務などで米国勢が有利との情報が伝わる中、こんどは中国石油天然気(ペトロチャイナ)が新規上場時の株式購入をアラムコから提案され、検討を表明した。巨大IPOに絡めれば利益は大きい。獲得合戦はこれから佳境に入る。

■阿部 直哉(リム総研・エネルギーコンフィデンシャル担当)
1960年、東京生まれ。慶大卒。ブルームバーグ・ニュースの記者・エディターなどを経て、リム情報開発のリム総研に所属。1990年代、米国シカゴに駐在。
著書に『コモディティ戦争―ニクソン・ショックから40年―』(藤原書店)、『ニュースでわかる「世界エネルギー事情」』(リム新書)など。

最終更新:4/12(水) 14:00
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