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東芝が監査意見なしの決算公表に追い込まれたわけ

4/12(水) 18:01配信

ニュースソクラ

倒産回避へ、メガバンクと二人三脚

 東芝は11日、監査法人の「意見不表明」のままに2016年度第三四半期(2016年10-12月期)決算公表に追い込まれた。信用低下が避けられないうえ、上場廃止のリスクも高まった。しかし、倒産回避に向けて当面の関門となる追加融資にはメドが立ちつつある。

 東芝にとって、いま最大のリスクは資金繰りが破たんすることだ。昨年末で1兆3890億円の長短借入金があるが、このうち2835億円に関しては、金融機関からいつ返済を迫られてもおかしくない状態にある。昨年末に格付けが下がった結果、融資契約にある財務制限条項に抵触しているからだ。

 そのうえ、東芝は追加融資枠の設定を銀行団に要請している。東芝は原発事業での追加損失を避けるため、米子会社ウェスチングハウスの米破産法を申請したが、この処理に伴う資金不足に陥る恐れがあり、銀行団の支援がなければ倒産の危機に陥りかねない。

 東芝を支えるメガバンク3銀行は、監査法人の意見不表明決算でも「ないよりはまし」、むしろ東芝の見解でも第三四半期決算がなければ、融資団を組む地方銀行への説明もままならないと東芝に伝えている。

 それでも、地方銀行の一部に追加融資に応じないところがでてくるリスクは残っているが、メガバンクは追加融資にも応じる考えを東芝に伝えている。追加融資が見送られるよりは、取引銀行の要請に応じて、「恥ずかしい決算でも出すしかない」と判断した模様だ。面子を捨てても当面に生き残り資金の確保を優先した形だ。

 監査法人の意見不表明の決算をもとに追加融資に踏み切ろうとする銀行団の事情は何か。追加融資を渋れば、東芝の倒産につながり、すでに貸し込んでいる1兆4000億円が焦げ付いてしまうからだ。

 東芝は半導体子会社東芝メモリーの売却手続きに入っており、2兆円以上の現金が手に入る見込み。そうなれば存続維持は確保できそうで、いま倒産の引導を渡すよりは、再建に協力するほうが銀行団にとっても得策との判断がある。

 東芝には生き残りのための3つの関門がある。第一は資金繰り支援を得られるか、第二は、監査法人の承認を得た2016年度決算を発表し、上場維持を維持できるか、第三に、東芝メモリーの売却が順調に進むかどうか、だ。

 2016年度決算で監査法人の了承を得られる見通しはまったくたたず、監査法人の交代すら取りざたされ始めた。5月に発表予定の2016年度決算も、監査法人の意見なしでの会社側見解となる可能性が高い。

 東芝メモリーの売却も技術流出への懸念から中国、台湾企業への売却にストップがかかる可能性があるなどスムーズに進むかまだ予断を許さない。

 監査法人が懸念を持っているように、ウェスチングハウスに関する巨額損失を、公表した2016年末よりも前の時点で把握していたのではないか、といった不透明な要素は少なくない。しかし、異例の「決算」を決行することで、当面の最大のリスクだった資金繰りにはメドが付きつつあるとは言えるのだろう。

■土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:4/12(水) 18:01
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