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米メキシコ国境の壁建設、地域の生態系にも影響

AFPBB News 4/12(水) 16:23配信

(c)AFPBB News

【4月12日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が計画しているメキシコ国境沿いの壁建設は、移民だけでなく、メキシコ北部に生息するジャガーやオオツノヒツジ、シカに似たソノラプロングホーンなど、野生動物にも大きな影響を与えると専門家らが警鐘を鳴らしている──。

 国境沿いには、両国によって定められた自然保護区があり、ここを野生動物たちが自由に行き来している。しかし、野生動物保護団体らは、トランプ大統領が違法な越境行為を防ぐ目的で進めようとしている壁の建設によって、これらの生き物が絶滅への道をたどるのではとの懸念を示している。

 国境沿いにある自然保護区には、米アリゾナ(Arizona)州のカベサ・プリエタ国立野生動物保護区(Cabeza Prieta National Wildlife Refuge)と、メキシコ・ソノラ(Sonora)州のピナカテ火山とアルタル大砂漠生物圏保存地域(Pinacate and Gran Altar Desert)がある。メキシコに位置する後者は、世界遺産にも登録されている。

 これら2国間の自然保護地域を隔てているのは、動物が通れる程度のすき間が設けられた簡単な柵だけだ。

■水と餌

 最高気温が55度に達する乾燥した砂漠では、雨が降ることはめったにない。ここでは、水や餌、日陰を求め、動物たちは長時間にわたって歩き続けなければならない。

 また、一部の地域で干ばつや疫病が発生した際には、個体数の減少を食い止め、繁殖を目的に移動する必要が生じる。

 環境問題に詳しい、米アリゾナ大学(University of Arizona)のアーロン・フレッシ(Aaron Flesch)氏は、「生息地の真ん中に巨大な壁を築くことで、一部の生物種は移動を妨げられて新たなコロニーを構築することが不可能となり、個体数の回復が見込めなくなる」と指摘している。

■「近親交配が進む」

 メキシコ国立自治大学(National Autonomous University of Mexico)エコロジカル・インスティテュートのジェラルド・セバロス(Gerardo Ceballos)氏は、米国側に生息しているジャガーの頭数はわずか5頭程度と推測しており、繁殖のためにはメキシコ側からの交配相手が必要だと指摘する。

 動物の個体群が二分されると、双方はグループ内の限られた相手としか交配できなくなり、種の健全さを保つことが難しくなる。この状況について地域の自然資源専門家は「近親交配が進む」と懸念をあらわにしている。

■人への影響

 国境の壁は、動物だけでなく、砂漠全体の生態系に影響を与える可能性があると専門家らは口をそろえる。

 砂漠に生息するほ乳類が地面を踏み荒すことで、雨水が地下に浸透することができ、また動物たちが植物を食べることで、その種子が広範囲に運ばれる。これらは、影響を受けるであろうほんの一部分にすぎない。

 しかし、壁の建設によって生じる土壌や環境への影響をすべて把握することは難しく、人への影響ももちろん懸念される。

 セバロス氏は、「壁をつくれば、すべてを破壊することになる」とこの状況に警鐘を鳴らした。映像はメキシコ・ソノイタ(Sonoyta)州にある米メキシコ国境柵や、付近に生息する野生動物。3月27日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:4/12(水) 16:23

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