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中国の「不動産デベロッパー」が急騰 そのワケとは?

4/13(木) 18:35配信

ZUU online

中国本土、香港の投資家が3月下旬から4月上旬にかけて、北京・天津・河北省に営業基盤を持つセメント、建材、建設・エンジニアリング、不動産デベロッパー、環境関連、港湾運営などの企業を積極的に買っている。

例を挙げると、北京、天津、河北省を営業基盤とするセメントメーカー金隅股フェン(上海A株601992、H株02009)のA株株価は、この原稿を執筆している4月11日現在、5営業日連続でストップ高を記録している。11日の終値は7.50元で、急騰が始まる直前となる3月31日の終値は4.66元であった。この間の上昇率は60.9%である。値幅制限のない香港市場にも上場している同社株価は、値動きは荒いが高値圏を維持しており、11日の終値は4.61香港ドルであった。3月31日の終値は3.23香港ドルなので、この間の上昇率は42.7%に達する。なぜ、これらの企業が積極的に買われているのだろうか。

■歴史的戦略プロジェクトが関係 "千年大計"、"国家大事"

株価暴騰には、中国共産党中央委員会が打ち出した重大な歴史的戦略プロジェクトが関係している。新華社は4月1日、「中国共産党中央委員会、国務院は先日、河北雄安新区設立を決定した。これは習近平同志を核心とする中国共産党中央委員会が打ち出した重大な歴史的戦略プロジェクトであり、深セン経済特区、上海浦東新区に次ぐ全国的な意義を持つ新区である。"千年大計"、"国家大事"である」と伝えている。

習近平国家主席を核心とする共産党中央委員会が主導している点、かつて外資導入の起爆剤となり、改革開放政策を成功に導いた深セン経済特区、上海浦東新区と同列に扱っている点で際立っている。

河北雄安新区は河北省雄県、容城県、安新県やその周辺地域から成り、河北省保定市の北東側に位置する。北京市から120キロメートル、天津市から110キロメートルの距離にある。北京市と天津市の距離は121キロメートルなので、ほぼ正三角形に近い三角形の頂点に大都市を置く形となる(距離は学優網を参照)。三角形の頂点から内側に向かって経済発展領域を拡大することで、やがては三角形全域に発展を拡散させる構想である。この河北雄安新区の開発を中心として、北京・天津・河北省一体化政策を推し進めようとしている。

まず、100平方キロメートルの開発を進め、それが終われば中期的に200平方キロメートル、長期的には2000平方キロメートルまで領域を広げる計画である。深セン経済特区の規模は1996平方キロメートル、上海浦東新区が1210平方キロメートルであり、最終的には両区を超える規模になる見込みである。

河北雄安新区は交通の便が良い割には、開発は進んでおらず、美しい自然環境が残されている。複数の報道によれば今後、北京における首都機能の一部が移転することも検討されているようだ。空港を整備するといった構想もあり、発展の道筋は見えている。

■特徴はスマートシティ 国家資本主義の実践による経済成長

習近平国家主席は雄安新区建設計画における突出した7つの重点任務として以下の点を指摘している。

1.環境に配慮したスマートシティを建設する
2.優美な生態環境を作り上げる
3.ハイテク産業を発展させる
4.質の高い公共サービスを提供する
5.高速で高効率の交通網を発展させる
6.体制メカニズム改革を推し進める
7.全方位的な対外開放を行う

中国は1978年、改革開放政策をはじめたが、深セン経済特区、上海浦東新区が果たした役割は大きい。外資に対して、中央政府が特区、新区での自由な経済活動を保障したことで、高度な加工組み立て技術を持った外資企業はコストの安い広大な土地を利用し、安価で大量に存在する労働力を用いることができるようになった。それが中国を世界の工場へと導いた最大の要因である。

今回の河北雄安新区では、内外を問わず、世界の先端を走る新興産業を誘致し、育てようとしている。国家資本主義の実践による経済成長を目指している。

株価の話に戻すと、河北雄安新区設立への大きな期待から、インフラ建設関連銘柄を中心にこれらの地域を営業基盤とする銘柄が買われているのである。

■河北雄安新区発展のカギを握るのはコストである

周りには大商圏が存在する。立地条件は悪くない。さらに、共産党が最重要政策の一つとして進める以上、資金調達面も含め、計画倒れになる可能性は低いだろう。問題はコストである。

雄県不動産都市建設局は既に、「商品不動産販売に関する警告」を通知している。雄県、容城県、安新県は現在、あらゆる不動産取引が一旦停止されており、公安、都市管理部門によって組織されたグループが不動産販売窓口、不動産仲介業者を巡回し、不動産投機の発生を未然に防ぐ努力を始めている。

地価が上がらないことが最も重要である。地代、税金面で競合する他の自由貿易区と遜色がないのであれば、成功のチャンスは大きく広がるはずだ。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ( http://china-research.co.jp/ )代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。

最終更新:4/13(木) 18:35
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