ここから本文です

あすから一周忌追悼公演 「蜷川さんとの真剣勝負」

産経新聞 4/13(木) 7:55配信

 昨年5月に80歳で死去した川口市出身の演出家、蜷川幸雄さんの一周忌追悼公演「鴉(からす)よ、おれたちは弾丸(たま)をこめる」が14~16日、彩の国さいたま芸術劇場で行われる。同作品は蜷川さんが率いた高齢者の演劇集団「さいたまゴールド・シアター」の代表作。演出補の井上尊晶(そんしょう)さんは「蜷川さんがいない中で作品を完成させられるか、追悼でなく蜷川さんとの真剣勝負」と力を込める。(宮野佳幸)

                  ◇

 チャリティーショーに手製爆弾を投げ込んだ罪で裁判にかけられている孫たちを救うため、ほうきなどを手に老女の集団が法廷を占拠、検事らを裁判にかけていくという物語。2014年には香港で上演され、蜷川さんが海外公演に帯同した最後の作品となった。

 11日には本番同様のセットや衣装で約2時間の舞台稽古。井上さんらが役者の立ち位置やせりふの明瞭さなどについて指摘した。

 蜷川さんと約30年間仕事をしてきた井上さんは「先導がいなくなり、自分たちで走らないといけない」と語り、「その一歩として『鴉-』があり、何かが見えたらいいと思う。そういう意味で蜷川さんとの勝負」と表情を引き締める。

 法廷を占拠する一人「おっぱい婆」役の佐藤礼子さん(83)は「蜷川さんの声が壁や天井にしみこんでいると思う」としのぶ。「『蜷川さん、これでよろしいですか』と問いかけながら、未熟だが前進できるようにしたい」

 初めて「青年B」役を演じる若手演劇集団「さいたまネクスト・シアター」の竪山隼太さん(26)は「観客の方には一周忌だからと緊張せず、気軽に見て何かを感じ取ってほしい」と話した。

 公演は14日は午後7時から、15、16両日は午後2時から。問い合わせは同劇場(電)0570・064・939。

                   ◇

 ■「受け継いだレガシー見せたい」 弁護人役・葛西弘さん(86)

 「演劇を始めたのは不思議な縁です」と穏やかに笑う。大学卒業後、教員、航空自衛隊員、大学職員などを経験してきたが、演劇とはほぼ無縁の生活だった。

 11年ほど前、謝恩会を開いてくれた中学教員時代の教え子が、40年以上前の学芸会でやった演劇を披露してくれた。「演劇の力」を感じ、驚いたという。その後、さいたまゴールド・シアターを新聞で知った妻から紹介され、思い切って役者の世界に飛び込んだ。

 「へたくそ!やめろ!」

 稽古では蜷川さんから厳しい言葉も投げつけられた。それでも「徹底的にしごかれてうれしかった」と満面の笑みを浮かべる。航空自衛隊時代、教官として見どころのある隊員だけを叱ってきたからだ。

 昨年の訃報には「巨星墜つという感じ。何をしていいかわからなかった」という。それでも、「レガシー(遺産)を引き継がないといけないという気持ちが強まった。演劇を続けることで蜷川さんの志が続いていく」と決意した。

 公演では裁かれる青年たちの弁護人役を務める。

 「蜷川さんに恥ずかしくないように演じたい。自分を信じて新しいことに挑戦する蜷川さんのレガシーを、正しく受け継いでいると見てもらいたい」

最終更新:4/13(木) 7:55

産経新聞