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「結果は重要ではない」ドルトムントの男たちが不屈の精神を表現した夜/コラム

GOAL 4/13(木) 19:31配信

火曜夜にモナコとの試合に向かう道中、チームを乗せたバスは爆弾による攻撃を受けた。決して大げさな表現ではなく、彼らは一歩間違えればフットボーラーとしての将来や人生に何らかの影響を受ける可能性があった。もっと直接的な表現をするなら、死が現実に迫っていたのだ。一体、ボルシア・ドルトムントの選手たちはその夜、どのように眠りにつけたというのだろうか。

泊まっていたホテルを出発してからわずかの時間、そして数センチという距離で事件が起こり、チームバスのヘッドレストに破片が埋め込まれているかもしれないという不安にどうやって対処しろというのか。

事件から24時間足らずの間に延期された試合が開催されたが、ヴェストファーレンシュタディオンの警備が強化されているのを見た選手たちにはどんな思いが巡ったのか。

テロの犠牲者でもある彼らのダメージがどれほどのものか量ることはできるだろうか。

どれも我々には理解し得ない。だからこそ、ドルトムントがホームで敗れ、3点のアウェーゴールを献上したことは大きな問題ではないのだ。誰も彼らを“攻撃”することはできない。



■選手への影響とファンの勇気ある行動

爆発により割れた窓ガラスの破片に襲われたマルク・バルトラは、骨折した手首の処置と混入した破片を取り除くための手術が必要であったが、幸いなことに命に関わるダメージを負ったわけではなかった。しかし、彼の入院やドルトムントが標的とされたという事実はそう簡単に記憶から消えるものではない。

マティアス・ギンターのような選手についても考えるべきだ。彼はモナコ戦で先発出場していた。さらに付け加えるなら、2015年11月にスタッド・ド・フランスで行われたフランス代表戦にドイツ代表として出場していた。そう、テロリストの標的となった、あの試合である。彼はこうした事態……普通の人であれば生涯味わうことのない場面に、この2年の間で2度も遭遇しているのである。

称賛されるべきは両クラブのファンたちだ。試合のキックオフ前に、ともに声を枯らして 'You’ll Never Walk Alone' を歌うという素晴らしい儀式を展開した。また、事件発生の夜、ドルトムントのファンはSNSで「#bedsforawayfans」というハッシュタグを使ってモナコのファンに対して寝床を提供すると発信。ドルトムントの地元の人々の中には試合が翌日に延期されたことで立往生となったモナコのファンと食事をともにした人たちもいたようだ。誇れる、心温まるニュースである。

■事件翌日に試合開催という判断の是非

黄色と黒に溢れたいつもと同じヴェストファーレンの風景はドルトムントの、そしてチャンピオンズリーグの舞台としてふさわしいものだった。ただし、問題がなかったわけではない。それは、試合が開催されたのが事件翌日の夜だったということだ。

延期された試合の日程はUEFA(欧州サッカー連盟)とドルトムントのハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOによって決められた。しかし、テロリストによる攻撃の標的に遭った事件の翌日にスタッフに対して働くことを求めるのは、雇用主として非常に心無いことではないだろうか。

いずれにせよ、彼らはドルトムントの選手、そして監督のトーマス・トゥヘルに戦うことを求めた。

キックオフ前に行われた『Sky』のインタビューでトーマス・トゥヘルはこう話した。

「もう少し我々は時間が欲しいと願っていた。あの出来事から回復するには、もう少し我々には時間が必要だったからね。選手たちが不思議な感覚で試合に入らなければならなかったのは当然のことだ。事の背景とキックオフのタイミングを考えれば、いつものようなハッピーなチャンピオンズリーグの夜とはとても思えない」

モナコ戦で解説を務めた元ドイツ代表のキャプテン、ローター・マテウスも怒りを露わにした。この試合を開催するという決定は、無責任であり、不可解なものであると語っている。



■疑念が確信に変わった前半戦

ドルトムントがハーフタイムを知らせる笛が鳴るまでに(外れはしたものの)一つのPKを献上し、2つのアウェーゴールを決められたことは何の驚きでもなかった。

PKにつながるファールを誘発したキリアン・ムバッペはソクラティスが対応に苦慮するほどシャープな動きであったし、(後に分かることだが)実際に2度もネットを揺さぶってみせた。ドルトムントからすると、オフサイドだったゴールが認められるという不運もあった。バルトラの代わりに先発メンバーに名を連ねたスヴェン・ベンダーはオウンゴールをしてしまうなど、踏んだり蹴ったりであった。

少なくとも前半、ドルトムントの動きは重かった。「選手たちは事件の被害者」という事実を、UEFAが無視したのではないかという疑念の確かな証拠となる出来事ですらあった。

もちろん、スケジュールの問題があることは理解できる。セカンドレグは来週開催されるし、モナコはすぐにフランスへ戻らなくてはならない。しかし、トゥヘルが言ったように、この決定は関係する選手の要求や安全を考慮する前に下されたものである。

確かにドルトムントが見せた後半の盛り返しは素晴らしいものであった。だが、だからといってそうなることを彼らが本来望んでいたかというと、そうではないだろう。

■称えられるべき後半戦

後半開始から投入されたクリスチャン・プリシッチは、この試合でも歴代最高のアメリカ人選手としてのポテンシャルを示した。ドルトムントはユリアン・ヴァイグル、そしてラファエル・ゲレイロを通してモナコから主導権を奪取した。ウスマン・デンベレのゴールは、ドルトムントが自信を回復し、チームが機能し始めたが故に生まれたものであった。ムバッペと香川真司のゴールにより、地中海で行われる2戦目はより興味深いものになったと言っていいだろう。

プレーすることが必要不可欠でなかった時でありながら、ドルトムントは後半に好プレーを披露し、選手たちの心情を表すかのように靄のかかった試合を良いゲームへと変えたのだ。

モナコ相手に見せた戦いぶりは称賛されるべきであり、フランスでの武運を祈るばかりである。この夜は試合結果など、さほど重要な要素ではなかったのだから。

ドルトムントの選手たちはサッカー選手としてだけでなく、男として、勇気や決意、不屈の精神を表現した。この夜にハイライトがあるとするなら、それだけで十分だろう。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

GOAL

最終更新:4/13(木) 19:32

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