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光触媒のエネルギー効率を7倍以上に、太陽光を使う水素製造のブレイクスルーか

スマートジャパン 4/13(木) 10:05配信

 太陽光を利用して水素を製造できる光触媒の研究開発が活発だ。再生可能エネルギーと水から、次世代のエネルギー源として注目されている水素を製造できる新手法として期待されている。課題は変換効率の向上だ。

 神戸大学 分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授らと、大阪大学 産業科学研究所の真嶋哲朗教授らの研究グループは、光触媒作用による水素生成量が“1桁増加”する高効率な光触媒の開発に成功したと発表した。高効率な太陽光による水素製造の実現に向けたブレークスルーとなる成果だという。

メソ結晶化で実現

 光触媒は光を照射すると触媒表面に電子と正孔が生成される。この電子が水の水素イオンを還元することで水素が得られるという仕組みだ。これまでに多くの光触媒が開発されているが、研究グループによれば生成した電子と正孔の多くが光触媒表面で再結合し、消失してしまうため、光エネルギーの変換効率が伸び悩んでいた。

 今回研究グループは粒子の配列を三次元的に制御し、電子と正孔を空間的に引き離す「メソ結晶化技術」の開発に成功した。これが変換効率の大幅な向上に寄与している。

 メソ結晶とは、ナノ粒子が規則正しく三次元的に配列した結晶性の超構造体のこと。数百nm~μmのサイズで、ナノ粒子間の空隙に由来する2~50nmの細孔を持つ。だがメソ結晶の合成手順は複雑な場合が多く、形状の制御も難しいという課題があった。

 そこで研究グループはメソ結晶に存在するnmスケールの空間を利用した「トポタクティックエピタキシャル成長」という新しい合成法を開発した。この合成法により、テンプレートとなる酸化チタン(TiO2)のメソ結晶から、結晶構造の異なるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)メソ結晶を、1段階の水熱反応で容易に合成することに成功した。加えて反応時間を長くすることで、表面近くの粒子だけを結晶の向きをそろえたまま大きく成長させられることを発見した。

効率7%を実現

 こうして合成したSrTiO3メソ結晶に触媒反応を促進する助触媒を付着させ、水中で紫外光を照射したところ、約7%の光エネルギー変換効率で反応が進行することがわった。一方、同じ条件でメソ結晶化していないSrTiO3ナノ粒子について実験を行った場合、効率は1%に満たなかった。メソ結晶化により反応効率が1桁向上したことになる。また、生成された電子は比較的大きな表面のナノ結晶に集まるという知見も得られた。

 以上の成果から今回開発した光触媒では、紫外線照射によって生成した電子はメソ結晶内部のナノ粒子間を効率よく移動し、消失することなく表面に生成した比較的大きなナノ結晶に集まり、高い効率で水素イオンを還元して水素を生成することが分かった。

 研究グループは今回の成果について、「メソ結晶の高い光触媒活性は“メソ結晶の規則的な構造をあえて崩す”という逆転の発想から産み出されたもので、これまでにない新しい材料設計指針の開拓につながる。また、今回対象としたSrTiO3は立方晶であるため、分子吸着や反応のしやすさという点において結晶面による違いはない。したがって、ビルディングブロックであるナノ結晶の大きさと空間配置を制御するだけで、既存システムの光エネルギー変換効率を大きく向上できる可能性が示された」と述べている。

 今後はメソ結晶化技術を可視光応答型光触媒に応用することで、太陽光でのエネルギー変換の高効率化を目指す。また今回の研究で対象としたSrTiO3を含むペロブスカイト型金属酸化物は、エレクトロニクス素子の基幹物質であることから、幅広い分野への応用展開も期待できるとした。

 なお、今回の研究成果は2017年4月6日(現地時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開された。

最終更新:4/13(木) 10:05

スマートジャパン