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Y.U-mobileが「ヤマダニューモバイル」を始める狙い、ソフトバンクSIMの勝算

4/13(木) 11:35配信

ITmedia Mobile

 U-NEXTとヤマダ電機の合弁会社であるY.U-mobileが、ついに始動した。サービス名称は「ヤマダニューモバイル」。まずはドコモからネットワークを借りた「Dコース」をスタートさせたが、近く、ソフトバンクのMVNOサービスも投入する予定で準備を進めている。料金プランは、容量別に分かれたシンプルなもの。現時点では、通話定額などは提供されていない。

【ヤマダニューモバイルの料金プラン】

 このネットワーク構成からも分かるように、ヤマダニューモバイルは日本通信をMVNEとして活用。U-NEXTがMVNO事業で培ったノウハウと、ヤマダ電機の持つ強力な販路を掛け合わせて、シェア拡大を狙う。一方で、もともとヤマダ電機は、「YAMADA SIM powered by U-mobile」を提供していた。

 このタイミングで、なぜ合弁会社を作って新サービスの提供に踏み切ったのか。ソフトバンクのMVNOを始めた理由も合わせ、Y.U-mobile 代表取締役の二宮康真氏と、取締役の鹿瀬島礼氏に話を聞いた。なお、二宮氏はU-NEXTの取締役も兼任しており、U-mobileを率いている。そのため、インタビューでは、ヤマダニューモバイルだけでなく、U-mobileの戦略についても語られている。

●ヤマダ電機のニーズに合ったサービスを提供する

―― 最初に、Y.U-mobileを設立した理由を教えてください。

二宮氏 もともと、「YAMADA SIM powered by U-mobile」をやっていましたが、これは役務提供者がU-NEXT側にありました。そのため、ヤマダさんの実際のニーズを全てくみ取れていたわけではなく、U-NEXTとしてのサービスを販売してもらっていた形になります。ヤマダさんの客層は、ファミリー層だったり、家電製品を買われる方だったりで、われわれのWebマーケティングとは若干、層が異なります。Y.U-mobileは、現場のニーズをお聞きしながら、ニーズに合ったサービスを提供していくために設立した会社です。

―― 具体的に、どういった点がサービス内容に反映されたのでしょうか。

二宮氏 今後やっていく形になりますが、繰り越しサービスやパケットシェアを追加していきます。また、ヤマダさんが持たれているポイントとの連携もやります。ファミリー層であれば、ポイント連携やパケットシェアは必要だろうということで、U-mobileとは違った形になっていきます。

―― なるほど。逆に、こちらで導入したサービスをU-mobile側に反映させることもありそうですか。

二宮氏 一部はあると思いますが、U-mobileのコンセプトとして、使い放題をメインで販売しています。ここには、繰り越しという考え方が持ち込みづらい。シェアは取り上げていきたい気持ちはありますが、使い放題だとなかなか難しいところはあります。

―― ヤマダ電機では、U-mobileの販売も続けるのでしょうか。

二宮氏 続けます。すみ分けはできていますからね。ただし、店頭ではヤマダニューモバイルを勧めていきます。今のプランでユーザーニーズの全てをくみ取れない場合、それ以外に入れていくことになります。

―― 店舗数の規模はいかがですか。

二宮氏 全店舗でやっています。これは、(ヤマダ電機の)子会社のベスト電器も含めてです。ただし、即時開通は4月中旬以降になります。

鹿瀬島氏 (即時開通は)レギュラー店500店舗で実施し、あとは順次展開していく形になります。

―― 初速はいかがでしたか。

二宮氏 よかったです。まだ即時開通ができていませんが、期待値よりも上で、順調な立ち上がりでした。これは、もっと伸びていくと思います。

●料金プランは「楽天モバイル」を意識?

―― ちなみに、料金プランを見ると、謎の「0.3GB」が端数としてありますが、これは一体……。

二宮氏 見ての通りですが、楽天モバイルさんを意識したものです(笑)。基本料金は同じですが、楽天モバイルさんより容量が多くなっています。

―― このような料金体系にした理由を教えてください。また、選ばれる容量に、何か傾向はありますか。

二宮氏 分かりやすくしたかったのはあります。MVNOの料金体系がこうなっているという認知は進んできていますからね。一番ユーザーに喜ばれているのが、10.3GBのプランで、初速から売れ始めています。

―― 10.3GBが多いというのは意外ですね。3.3GBや、5.3GBだと思っていました。

二宮氏 3.3GBや5.3GBも多いのですが、10.3GBが予想値より多かったということです。

鹿瀬島氏 割合でいうと、3.3GBと10.3GBが割れていて、5.3GBを選ぶ人は多いですね。3.3GBと10.3GBで約4割、5.3GBで約4割、残りは1割もいません。

二宮氏 繰り越しをやるのも、比較的使用量が多い人に喜ばれています。キャリア(MNO)の繰り越しとの違いは、繰り越した分から使っていくところで、お得に使えます。一方で、われわれはコンテンツも持っているので、上位プランでどう差別化を作っていけるのか。この連携は早急にやっていきたいと思います。

―― 大容量のプランが選ばれれば、それだけARPUも上がるので、MVNOとしても収益が上がりやすくなりそうです。

二宮氏 確かそうです。ビジネスを健全にするというのも、業界の課題の1つだと認識しています。ユーザー側が本当はロースペックなものだけを望んでいるわけではないことは、いち早く定額を出し、支持されたことが証明しています。あとは、差別化をどう図っていくのか、タッチポイントをどう作っていくのかが重要なテーマになるのだと思います。

―― 契約者数の目標はありますか。

二宮氏 公表しているものはありませんが、(意気込みとして)おおむね月間1万は超えていきたい。そういう意味では、最低でも年間10万はクリアしたいですね。最終的な目標としては、コンシューマーでまず100万というものはあります。

―― まずは、ドコモ回線からのスタートだと思いますが、ソフトバンクについてはいかがでしょうか。

二宮氏 今は準備中というステータスです。このサービスを作るにあたって、(4月)1日に間に合わせるために、スケジュールが過密だったこともあり……。

●ソフトバンクSIMのポテンシャルはあるが……

―― ソフトバンク回線のニーズはどこにあると見ているのでしょうか。

二宮氏 ヤマダさんの店頭だけに限った話ではありませんが、一定のニーズはあると見ています。ただ、今のところ、(ソフトバンク回線を使った「U-mobile S」は)データ通信のみの提供になっているため、比較的リテラシーが高い方が、余ったiPhoneで使うのがメインになっています。このまま爆発的に伸びるかというと、そこまで拡大できる状況ではありません。

―― U-mobile Sは実際に契約してみましたが、データプランの変更ができませんでした。ここに手を入れたりはしないのでしょうか。

二宮氏 今はリテラシーが高い方が中心です。ただ、明言はできませんが、半年かけてカスタマイズしていきます(※現在、プラン変更は可能になっている)。

―― お話を聞いていると、1年で100万回線は取れると意気込んでいた日本通信側と、だいぶ温度感が違うような印象も受けました。

二宮氏 福田社長は、あっという間にというトーンでしたね(笑)。ただ、マーケットの規模や、ポテンシャルはあると思っています。実際、初速としては結構な数が売れています。この店舗数と、このマーケティングの仕方で、ここまで取れるのか、と感じているところです。各サービスをやっていきましたが、初速としては一番よかったのではないかという実感もあります。

 MVNOはほとんどがドコモ回線ですが、そこが伸びてきたスピード感や、マーケットのシェアと今の状況を考えると、100万、200万は十分いけると感じています。1年間かどうかは別にしても、早い段階でいけるのではないでしょうか。ただ、そのためには、音声通話(が現時点で対応していない)の問題があります。面展開も、もっと広げなければならない。この反応をもっと広げていかなければならないですし、今後は、訴求の方法も変えていかなければなりません。

―― その音声通話の提供は、いつ頃になるのでしょうか。

二宮氏 まだ日本通信さんとソフトバンクさんが協議しているところで、具体的にはなっていませんが、われわれとしてはいち早くやりたい。音声を提供できれば、変わってきますからね。ですから、今時点での戦略は、いち早く面を広げることです。そうすれば、音声を始めたときに、すぐにメインで取り扱っていけます。

●Android向けのソフトバンクSIMも提供する予定

―― 現状、U-mobile Sでは、iPhoneとiPad、どちらのSIMカードのニーズが大きいですか。

二宮氏 やはりiPhoneですね。今のところは、使っていなかった端末を使えるというニーズで売っています。

―― 細かい話かもしれませんが、U-mobile SをSIMフリーのAndroidに挿したら、使えてしまいました。APNは公開されていないので、iPhoneのプロファイルを見て、一部予想で設定したのですが……。

鹿瀬島氏 今のところAPNは公開していません。ただ、もう間もなくすると、Android用という名目のSIMカードをご提供いただけます。そうなると、ソフトバンクの(SIMロックがかかった)Androidも使えるようになります。

 (今のiPhone用、iPad用のSIMカードを)SIMフリーのAndroidで使うことも、できると思います。ただ、推奨しておらず、一応は使えるという形です。これは、あえて分かりやすさのために言っている部分があります。

―― SIMカードの種類が分かれているのが、ちょっと複雑ですね。

鹿瀬島氏 そうですね。サイズだけでなく、端末、しかもiPhoneとiPadまで分かれているので、非常に分かりづらいと思います。

―― Webで売るのは厳しそうですね。

鹿瀬島氏 はい。Webオンリーはしんどいだろうと思います。

―― 料金についてですが、現状だと、ドコモ回線のサービスよりも高くなっています。これが変わっていく可能性はありますか。

二宮氏 あります。今は接続料の問題があり、ユーザー数が少ないためにオペレーションコストが一定かかるので、この料金ですが、プランによってはある程度下げる余地は十分考えられます。

●開幕SIMにもU-NEXTの意思が反映されている

―― 自分のケースだと、開幕SIMを探していたのですが、リアルな店舗ではまったく見つからず、U-mobile Sを契約することにしました。これは、リアル店舗をU-mobile Sでやっていくというお考えなのでしょうか。

二宮氏 そこでわれわれが何か規制をしているわけではありませんが、U-NEXTはもともとマーケティングが得意な会社です。われわれが置いているところで、あえて日本通信がやるかというと、それはないのではないでしょうか。(ドコモ回線の)b-mobileも含め、連携は密にやっています。

―― 今のところ日本通信とプランが同じですが、ここに違いを出していくことは考えられますか。

二宮氏 それはできますね。もともと、開幕SIMとU-mobile Sは、並行的に議論しながら、サービスを決めようと動いてきました。(開幕SIMの)中に、われわれの意思が反映されていないわけではなく、むしろかなり反映されています。それを踏まえ、今後、開幕SIMと差別化を図る可能性は十分あります。

―― ヤマダニューモバイルでは、ソフトバンク回線の料金を、どう設定していくのでしょうか。

二宮氏 U-mobile Sとは別ですね。ちょうど今、それを準備しているところです。

●au回線のSIMは提供する?

―― ここまでマルチキャリアになると、いっそのこと、auもやってしまった方がいいような気もしました。

二宮氏 auをやらないと決めているわけではありませんが、今は端末のSIMロックの問題(au VoLTE対応端末は、MVNOで利用する場合、SIMロックを解除しなければならない)があります。それで、どこまでいけるかというところですね。ニーズがあると判断すればやりますが、全て同時にはできません。ですから、まずはドコモとソフトバンクをやっていきます。

―― 逆にいえば、総務省のガイドラインで決まった、対MVNOのロックが禁止されたらやる可能性はあるということですね。

二宮氏 そうですね。ヤマダニューモバイルのもともとの発想としても、マルチキャリアということは考えていました。ただし、時期は未定です。

鹿瀬島氏 ヤマダ電機さんは流通なので、さまざまなお客さまがいます。お客さまに一番いいのも、お客さまが求めているものを提供するという考え方なので、au回線のMVNOだけがないのは、ヤマダさんの思想とは違うと思っています。

●SIMフリースマホはY.U-mobileではなくヤマダ電機が販売

―― ヤマダニューモバイルでは、端末はどうされていくのでしょうか。店頭にあるSIMフリースマートフォンと組み合わせるというイメージですか。

二宮氏 そうです。そこはヤマダさん側でやっていきます。端末だけという販売方式は難しいと思うので、そこで連携はしていきます。楽天さんと向き合ってやっていける会社として、ヤマダさんは十分なポテンシャルもありますからね。

―― 楽天モバイルといえば、いわゆる「三木谷割」が有名ですが(笑)。

二宮氏 既に、ヤマダさんの店頭では、端末のタイムセールもやっています(笑)。

―― なるほど。端末の話でいうと、U-mobile側の販売するものが、更新されておらず、ラインアップが古くなっている印象があります。

二宮氏 そうですね(苦笑)。基本的に、端末はヤマダさんと連携していこうと考えています。U-NEXTは、あくまで端末販売屋ではないというスタンスです。

―― それは、いつごろからですか。

二宮氏 近日中ですね。MVNOの考え方として、端末の代金を使ってマーケティングしていく発想がありますが、われわれはそういったコストのかけ方をする発想はあまり持っていません。そういった割引は、ヤマダさんのように、販売をビジネスにしている方がやった方が健全になります。端末は、最初は分かりやすさのためにやっていましたが、その分かりやすさも店頭で出すことができました。

●U-mobileでは「U-mobile MAX 25GB」が一番売れている

―― U-mobileの話でいうと、マルチMVNEになってから、料金プランが多岐にわたり、選びにくくなった印象もあります。例えば、「LTE使い放題」と「U-mobile MAX 25GB」は、どちらを選んだらいいのでしょうか。

二宮氏 確かに、使い方だとMAXは、分散する傾向にあります。ただ、今一番売れているのは、MAXですね。これは1GBあたりの単価で見ると、本当に安いからだと思います。

―― 使い放題より速度が速いということもあったりするのでしょうか。

二宮氏 収容状況にもよりますね。以前、弊社の使い放題はかなり遅いといわれていましたが、実態で言えば、今は大幅に改善しています。MVNEや、時間帯によってどうなるかという差はありますが、クオリティーは一定にしようとしています。

鹿瀬島氏 MAXは、25GBまで通信制限が一切ないという打ち出しでやっていますが、そこが一定の層に受けたというのはありますね。

―― 店頭では、どういう売り分けをしているのでしょう。

二宮氏 例えば、ずっとダラダラと使われる方と、短期間で一気に使う方がいるとします。安定的にダラダラ使う人には、使い放題がオススメになります。ただ、オススメのしやすさでいうと、キャリア(MNO)さんがああいった訴求方法になっているので、ここまでの容量だったら制限がないという方が、分かりやすいようです。市場的にも、キャリアさんとの比較になりますからね。

―― U-mobile MAX 25GBと、ヤマダニューモバイルは、MVNEが同じ日本通信ですが、この帯域は別なのでしょうか。

二宮氏 そこは臨機応変にやっていくつもりでいます。今は、U-mobileの持っている帯域が多いので、当面はそこに入れた方がいいという判断です。

●取材を終えて:ソフトバンクSIMはまだ準備期間

 1000店舗で全国に展開するヤマダ電機とタッグを組んだU-NEXTだが、そのインパクトは小さくない。「YAMADA SIM powered by U-mobile」よりも料金プランがヤマダ電機のユーザーに合っていることもあり、成長が見込めそうだ。ソフトバンク回線を使ったサービスも、U-mobile Sや開幕SIMにない特徴を出していくとのことで、期待が持てる。ソフトバンク回線については、音声通話の提供開始が、真のスタートと見ているようだ。今は、そのための準備期間といえる。

 一方で、U-mobile側は、どちらかといえばヤマダニューモバイルよりも、ヘビーユーザーを獲得しようとしている印象を受ける。定額プランなど、他社にはない特徴もあるため、刺さる人には刺さる料金プランといえるかもしれない。いずれにせよ、日本通信との業務提携を生かし、U-NEXTが攻めの姿勢を強めていることは確かなようだ。パートナーとの協力関係を生かすという同社が、ヤマダニューモバイルの後、どのような手を打ってくるのかも期待して見守りたい。

最終更新:4/13(木) 11:35
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