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電気で自在に調光できる窓、クラウドとの連携も

EE Times Japan 4/13(木) 22:40配信

■調光する窓

 米国のシリコンバレー(サウスサンフランシスコ)に拠点を構えるKinestral Technologies(キネストラル・テクノロジーズ、以下Kinestral)は、ガラスの透明度を自在にコントロールできる調光ガラス「Halio(ヘイリオ)」の開発を手掛けている。

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 Halioは、光の透過率を100%(クリア)から、最も暗い状態(ダークグレー)で2~3%まで落とすことができる。

 さらに特徴的なのが、Halioがクラウドと連携する点だ。Kinestralは、Halioを「IoT(モノのインターネット)調光ガラス」と呼ぶ。

 Kinestralはクラウドシステムも開発していて、そのクラウドには、サーモスタットや光センサーなどサードパーティーのデバイスも接続できる。これにより、例えば「朝6時になったら窓を透明にする」「室温が25℃を超えたら窓をダークグレーにする」など、ユーザーの生活パターンやオフィスの使用パターン、室内環境や時刻などを基に、細かく調光することが可能になる。スマートフォンアプリによる制御はもちろんのこと、音声による制御もできる。KinestralのCEO(最高経営責任者)であるS.B. Cha氏は、「高齢者のケアハウスなどで、わざわざ窓まで歩いていってカーテンを開けなくても、音声で窓を明るくしたり暗くしたりできるようになる」と話す。

 さらに、サードパーティーのクラウドとの連携も可能なので、さまざまなスマートシステムと連動できる。スマートハウスの一環として、Halioを取り入れることができるのだ。

■大きなサイズの窓でも3分で色が変わる

 Halioの調光には、エレクトロクロミックと呼ばれる方式が使われている。エレクトロクロミックとは、ある化合物に電気を流すことで化学変化が起こり、それによって色が可逆的に変化する化学反応である。Halioは、このエレクトロクロミックによって、透明状態から黒(ダークグレー)い着色状態まで、光の透過率を任意に変えられる。最も暗い状態での光の透過率は2~3%だ。なお、より暗い状態を実現できるシリーズ「Halio Black(ヘイリオ・ブラック)」は、光の透過率が0.1%を切るくらいまで暗くできる。いったん着色状態(あるいは透明状態)になった後は電気を流し続ける必要はないので、消費電力を低く抑えられる。

 エレクトロクロミック方式は新しい技術ではなく、約30年前から開発されてきたものである。エレクトロクロミック方式を採用した調光ガラスも、フランスや米国の複数のメーカーが既に製品化している(以下、「第1世代の調光ガラス」とする)。

 では、KinestralのHalioは、第1世代に比べてどんな点が優れているのか。

 最も特徴的なのは、透明から黒く変化するまでのスピードである。第1世代の調光ガラスは、オフィスビルに使われるような大きめのガラスの場合、色がダークグレーに変わるまでに約20分かかることもあるという。Halioは、電気を流し始めてほとんどすぐに色が変わり始め、早ければ1分、高さ3m×幅1.5mほどの大型サイズの窓でも3分あれば、ダークグレー(または透明)に変わるという。

 この「素早い変化」を実現している技術の1つが、Kinestralが特許を持つ独自技術「Gradient TCO」だ。傾斜抵抗をITO導電膜に付けるというもので、これにより着色スピードが上がることに加え、調光ガラス全体を、色むらを発生させずに均一に着色できるという。

 Halioは、第1世代とは製法も異なる。Halioは、ウェットコーティングをベースにした新しい製法を導入していて、電流を流す膜をコーティングした特殊なガラスを、正極をコーティングしたガラスと負極をコーティングしたガラスで挟み込んだ構造になっている。第1世代はドライコーティングを使い、1枚のガラスの上に正極と負極をどんどん重ねていく製造法だった。第1世代は生産性が低いという課題があり、従ってどうしても高コストになる。Kinestralは、Halioに上記の新しい製法を導入したことで、不良品率を低減して生産性を向上したという。これにより、第1世代に比べて低コスト化を実現した。Kinestralは、Halioの製造工程について22件の特許を取得している。

■広がるビジネスモデル

 Kinestralは、Halioを、自社のクラウドとともにプラットフォームとして提供する。Cha氏は、さまざまなビジネスモデルを想定している。例えば、Halioを使ったオフィスビルでは、月額でHalioの使用料を支払ってもらうシステムや、マンションやアパートでは毎月のHalio使用料から得た利益を、マンション・アパートのオーナーとシェアするといった具合だ。Kinestralは、ユーザーのニーズに合わせて柔軟にビジネスモデルを展開していく考えである。

■旭硝子と提携

 Halioのガラスを提供しているのがAGC旭硝子(以下、AGC)だ。同社は2017年1月、Kinestralへの出資を発表した。Kinestralが発行する、総額6500万米ドルの新規株式の一部を引き受け、Kinestralに取締役1人を派遣して、パートナーシップを強化する。

 AGCのビルディング・産業ガラスカンパニーで戦略・企画室 副社長 スマートプロジェクトリーダーを務める工藤雅司氏は、2012年5月に初めてKinestralのテクノロジーを見たと話す。実は、AGCもエレクトロクロミック方式の調光ガラスを開発してきたが、コスト面や技術面で課題があり、市場に投入することはできなかった。それ故、エレクトロクロミック方式の調光ガラスを開発する難しさをよく分かっている同氏は、Kinestralの技術を見た瞬間に「これは優れている」と思ったそうだ。

 Kinestralは現在、Halioの量産に向けて準備を進めている。Kinestralがカリフォルニア州ヘイワードに建設した工場と、現在台湾に建設中の工場で製造される。ヘイワードでは1.3m×0.8mのサイズを、台湾では3.1m×1.5mのサイズを量産する予定だ。台湾で製造するに当たり、Kinestralは、台湾GTOC(G-Tech Optoelectronics:正達)とパートナーシップを締結した。GTOCは台湾Foxconnの傘下で、ガラス加工を手掛ける。GTOCは、建屋と設備をKinestralに提供する。3.1m×1.5mサイズのHalioは、2018年半ばから出荷される予定だ。

最終更新:4/13(木) 22:40

EE Times Japan