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アライグマ 近畿で農業被害深刻 対策遅れた都市「侵食」

4/13(木) 7:00配信

日本農業新聞

 全国で増加傾向にあるアライグマが、近畿地方では都市部にまで侵食し、農業被害が拡大している。大阪府では、2015年度の捕獲頭数が1157頭と10年間で3倍に増加。兵庫県でも10年で2倍に増えており専門家は「都市部にも適応でき、繁殖力が強い」と懸念する。山間部などに比べ都市部での鳥獣害対策が遅れる中、府は17年度、新たに生息調査に着手。捕獲手法の確立やマニュアル作成を進める。

大阪府が捕獲本腰 17年度生息調査

 府内有数のブドウ産地を抱えるJA大阪中河内管内では、年々アライグマによる被害が深刻化している。柏原市でブドウ1ヘクタールを手掛ける藤江正和さん(69)は昨年、市街地にほど近い園地の一部区域が食害された。

 藤江さんは「この2、3年で被害が増えた。収穫期やジベレリン処理の時期は、アライグマ対策に構う余裕がない。その上、繁殖力が強いのか、捕獲しても一向に食害が減らず、イタチごっこだ」と肩を落とす。

 府の捕獲頭数は02年に初めて捕獲されて以降、増加傾向にある。南部の泉州地域や堺市、和泉市でも急増する他、柏原市や枚方市など中部地域でも15年度は236頭と、10年前の30倍に。府全体の農業被害額はここ数年、年間2000万円以上で推移し、事態は深刻だ。

 全国で北海道に次ぐ捕獲頭数2位の兵庫県では、15年度は4795頭と10年間で2倍以上になった。農業被害額も15年度は6400万円と10年間で2000万円以上増えた。

 近畿で被害が増えていることについて、兵庫県の畑一志森林動物専門員は「繁殖力が強く、生息数が増えていることが大きい」と指摘。「都市部にも適応でき被害域が拡大している上、木や壁を容易に登るなど捕獲も難しい」と話す。

 府は「直売所が増え、餌となる果実や野菜の栽培が都市部周辺でも増えていることが要因」(農政室推進課)と分析。対策が進む山地などと比べ、都市部では箱わなの設置といった対策が遅れており、被害の深刻化を懸念する。

 最も捕獲頭数の多い北海道では15年、前年の6000頭台から1万954頭まで増加。「畑での被害が多いが、農村部の空き家などにすみつくケースも多い」(道生物多様性保全課)と困惑する。「春は出産時期で捕獲に有効」(同)として、道は今年、捕獲時期の比較調査に乗り出す。

 アライグマの被害拡大を受けて大阪府は17年度、新たに生息状況調査に乗り出す。捕獲頭数が多い地域をモデル地区として、夏にかけて合計100基の箱わななどを仕掛け集中的に捕獲し調査する。周辺環境や頭数、性別といった情報を集め、分析を基に効果的な捕獲方法やマニュアルをまとめる。こうした成果を基に、JA担当者とも対策手法を共有する。

 府は「被害に困る人にアドバイスできるよう、単年度で成果を出したい」(動物愛護畜産課)と意気込む。JA柏原営農購買所の三並敏崇購買所長は「農家からの被害相談が後を絶たない。行政と連携して対策を講じ、被害軽減に努めたい」と力を込める。

 アライグマを研究する府立環境農林水産総合研究所の幸田良介研究員は「被害があった場所は餌場だと覚えられて被害が増える恐れがある。このため、痕跡を見つけたら早めに対策をとることが大切だ」と指摘する。

ブドウ、スイカ、トウモロコシ・・・ 甘い作物大好き 頭良く繁殖力強い

 特定外来生物のアライグマは北米が原産で、ペットとして飼われていたものが野生化した。国内に天敵がおらず繁殖力が強い。甘い作物を好み、ブドウやスイカといった果実やトウモロコシなどに被害が出やすい。穴を掘って防護柵をくぐってしまうなど頭がよく対策も難しい。

 農水省の統計によると15年度の農業被害額は全国で3億4400万円と、10年前と比べて2倍以上に増えた。地域別で見ると、近畿の1億4000万円を筆頭に、北海道9200万円、関東4900万円、中国四国2800万円などとなっている。(藤田一樹)

日本農業新聞

最終更新:4/13(木) 7:00
日本農業新聞