ここから本文です

被災地、待ちに待った開花 南阿蘇の樹齢430年「一心行の大桜」

西日本新聞 4/13(木) 10:16配信

 幹回り7メートル余り、両脇26メートルに広げた枝先に薄紅色の花がほころぶ。樹齢430年を誇る熊本県南阿蘇村の「一心行の大桜」が見頃となった。3月下旬の冷え込みと長雨のため開花は例年より10日遅れたが、熊本地震から1年に合わせるように、花は満開へ。数々の自然災害を耐え抜いてきた巨木に、人々は古里と自身の歩みを重ねる。

 約50年前に落雷で幹が六つに裂け、うち1本は近年の台風で折れた。傷を負っても乗り越え、力強く咲く花は、南阿蘇の春の観光シーズンを支えてきた。

 それは満開直前の印だという。12日夕、八分咲きの花びらは色が濃く染まり始めた。「復興の象徴に」。地元が主催する桜祭りの運営委員長を務める村上忠〓さん(58)は、地震後に迎えたこの春に特別な思いを寄せる。

待ちに待った開花宣言

 村上さんが村で営んでいた飲食店は地震後、観光客の激減により休業。東京や大阪で地元の特産品をPRする仕事を始め、しばらく村を離れた。今年3月、飲食店を本格再開。例年、見物者がどっと押し寄せる桜の季節に期待した。だが-。

 3月の冷え込みで一向に花が咲かなかった。祭りに地鶏焼きの店を出す近くの福本るみ子さん(63)は「根元が傷んでいるのでは」と気をもんだ。地震後の昨年6月、豪雨で大桜のすぐそばまで土砂が押し寄せたからだ。

 4月に入ると、開花を待ちきれない見物客が姿を見せた。熊本県大津町の仮設住宅から来た年配夫婦は村内の自宅が被災し、避難生活を続けているという。まだ固いつぼみを見上げ「木が元気ならよかたい」と笑ってくれた。

 待ちに待った開花宣言は8日。村上さんたち主催者は、9日までの予定だった祭りを本震1年を迎える16日まで延長した。福岡、大分、宮崎…。開花翌日、駐車場に県内外ナンバーの車が並んだ。カップルが肩を寄せ合い、父親が子どもを抱きかかえて、巨木の前で写真を撮った。

 例年20万~30万人の来客は、今年はまだ2万人程度。天候不順と、地震で寸断された道路事情が響いている。大桜は満開宣言の当日から3日間、夜間ライトアップされる。被災地のさまざまな思いに照らされ、闇に無数の花が浮かび上がる。

※〓は「ネ」へんに「喜」

=2017/04/13付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:4/13(木) 10:16

西日本新聞