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「病院があれば戻ってくれるはず」1年ぶりに診察を再開、阿蘇立野病院の院長

西日本新聞 4/13(木) 11:49配信

 熊本地震で崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)のすぐ近く。地震後に休診していた阿蘇立野病院で12日、上村晋一院長(52)は診察を再開させた。患者と向き合い、思わず笑みがこぼれる。

 「やっぱりうれしいね。ここで診察ができるのは」

 病棟3棟が被災。入院患者約70人は無事だったが、医療機器が壊れ、水道などのインフラも寸断された。業務の継続を断念し、看護師ら約140人を解雇せざるを得なかった。退職金の支払い、裏山の土砂崩れへの不安…。山積する課題に一時は「何もかも投げ出そうか」と追い詰められた。

 救いは、再開を求める住民たちの声だった。「患者も私も、なくなって初めて病院の重要さが分かったのかもしれない」。地震から1カ月後、現地再開を目指すと心に決めた。

 昨年6月、村内の老人ホームに診療所を設け、内科や外科の診療を始めた。合間に仮設住宅を回って避難生活を送る住民の健康を気に掛けている。地域を見詰めながら「医師として、この時間にも意味がある」と自分を奮い立たせた。

 病院がある立野地区の住民は、全357世帯が今なお村内外で避難生活を送る。「病院があれば住民が安心して戻ってくれるはず」と信じる。夏には入院患者と救急患者を受け入れ、村唯一の救急指定病院の機能を取り戻すつもりだ。本格的な復旧はこれからが正念場。

 生まれ育った村を支えるため、新たな出発点に立つ。「少しでも復興にはずみがつくように、私たちが住民の希望のともしびになっていきたい」

=2017/04/13付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:4/13(木) 11:49

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