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生まれた8日後に地震 1歳、一歩ずつ前へ 熊本市の一家

西日本新聞 4/13(木) 18:28配信

 「上手上手。はい、イチニッ、イチニ」

 道路に亀裂跡が残る熊本市西区の一画。3階建てアパートの一室で、幼い笑顔に楽しそうな夫婦の声が重なった。

⇒地震の直後は生まれたばかりの結芽ちゃんも一緒に車の中で過ごした

 4月6日、松嶋瑠美さん(29)は、長女結芽(ゆめ)ちゃんの1歳の誕生日を、夫の晃太さん(27)を加えた家族3人で迎えられる幸せをかみしめた。

「迷惑は掛けられない」車中泊することに

 あの日から1年-。結芽ちゃんが生まれた8日後、熊本地震が襲った。実家の両親とともに避難所に向かった。泣きだす結芽ちゃん。「みんな疲れとらす。迷惑は掛けられない」。近くのグラウンドでそれぞれ車中泊することに決めた。

 続く余震、狭い車内。不自由な生活は、次第に夫婦の口数を少なくした。ただ、言葉に表せない恐怖も疲れも、結芽ちゃんの笑顔があれば耐えられた。

 しばらくして、大きな被害がなかった自宅アパートに戻った。間もなく左脚が腫れた父(55)が、エコノミークラス症候群と診断された。地震前、初孫の誕生を何よりも喜んでくれた父。石材業を営み、車中泊中も倒れた墓石の修復に奔走していた。幸い大事には至らなかったが「無理しないで」と、本気で怒った。

 結芽ちゃんの健診で体重が増えていないことを指摘された。自宅に戻っても余震はなお収まらない。会社員の晃太さんは海外出張が多く、1人で子育てする時間が多かった。知らず知らず募ったストレスが、結芽ちゃんの成長に影響していたのかもしれない。「しっかり食べて、寝ること」。実家の母を含め周囲の気遣いを素直に受け入れた。

 「これからもいろんな困難があると思う。でも、みんなできっと乗り越えられる。娘が大きくなったら、そのことを話して聞かせたい」と瑠美さんは言う。

 一歩ずつ。結芽ちゃんが力を込めて、小さな足を踏みだした。

=2017/04/13付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:4/13(木) 18:28

西日本新聞