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トランプ氏と習氏、緊張関係が友情に変わるとき

ウォール・ストリート・ジャーナル 4/13(木) 11:52配信

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJチーフコメンテーター

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 ドナルド・トランプ米大統領は12日、就任後に知己になったある国の首脳との関係について冗舌に語った。

 「われわれの関係は非常に良い」。トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で行われたウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでそう述べた。「われわれの相性はすごくいい。互いに好意を持っている。私は彼のことがとても好きだ。彼の妻も素晴らしい」

 これほど温かい言葉で評されているリーダーとは誰か。中国の習近平国家主席だ。

 トランプ氏の口からこうした言葉が出てくると思っていた人はほとんどいないと言ってもいいだろう。昨年の米大統領選挙中、中国はどの国よりもトランプ氏による「口撃」の標的だった。いわく、世界経済の枠組みの中で公正に取引していない、自分たちが有利になるよう米国を利用している、米国の仕事を盗んでいる、周辺諸国をどう喝している――。

 その一方で当然のことながら、大国の指導者の中ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領がトランプ氏のお気に入りの人物になり、緊密な関係を築いて過去の罪を許されるはずだった。

 ところがどういうわけか、トランプ氏が選挙で勝利した後のこの5カ月ほどの間に、ほとんど正反対のことが起こった。今やトランプ氏と習氏の関係が世界で最も重要なものとなりつつあるかのようだ。

 トランプ氏がインタビューの中で詳細に語ったところによると、習氏とは先週、フロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で長時間ともに過ごし、随行者を同席させずに対話した時間も長かったという。米中首脳会談の最初の協議は「10分から15分の予定だったが、3時間に延びた」。さらに「2日目に10分間の予定で組んでいた会談は2時間に延びた。われわれは本当に相性がいい」とも述べた。 

本人も予想していなかった関係

 習氏はトランプ氏によるシリア攻撃の決断を世界で最初に知った外国の首脳だ。シリア攻撃では59発の巡航ミサイル「トマホーク」が発射された。トランプ氏は6日夜に行われた夕食会でデザートを食べながら習氏に伝えた。

 トランプ氏によると、両氏は11日夜に1時間程度、電話で会談した。具体的には北朝鮮の核の脅威について話したという。

 選挙期間中の厳しい発言から習氏とのこうした関係が生まれることを想像できたかと尋ねると、簡潔に「ノー」と答えた。そしてこう付け加えた。「彼はとても聡明だ。それが彼の長所だ。順応性と呼んでもいい」

 習氏との関係をプーチン氏との関係と対比させて質問したところ、トランプ氏は選挙後にプーチン氏から好意的な電話がかかってきたことや、ロシアで最近発生したテロ事件後にトランプ氏から電話をかけて哀悼の意を表し、協力を申し出たことについて語った。

 「あなた方がこれまで書いてきたこととは裏腹に、私はプーチンを知らない。知らないのだ」

 こうした言動にはもちろんご都合主義もあるだろう。トランプ氏がいま直面している最大の安全保障問題は、北朝鮮が核兵器とそれを長距離運べるミサイルを開発していることだ。その脅威の阻止で最も力になれる国が偶然にも中国なのである。

 ここにきて急速に進展している米中首脳の対話の中核を北朝鮮問題が占めているのは明白だ。実際、トランプ氏は一種の大きな取引を習氏に持ちかけたと話した。北朝鮮の核の脅威を阻止するために中国が力を貸せば、難航が予想される貿易交渉でより有利な条件を中国に提示すると申し出たという。

 北朝鮮に関してトランプ氏は習氏にこう言ったという。「仮に力を貸してくれなくても全く問題はない。われわれが自力で問題を解決する。だが貿易交渉は力を貸してくれた場合と同じというわけにはいかない」

 さらにトランプ氏は、中国が行動を起こし始めているかもしれないと主張した。習氏は今週行われた電話会談でトランプ氏に、中国はここ数日、石炭を積載する北朝鮮からの貨物船の一部を追い返していると伝えたという。石炭は北朝鮮にとっておそらく最も重要な輸出品だ。

南シナ海問題の火種は消えない

 同時にトランプ氏は、選挙公約とは裏腹に、米政権が中国を為替操作国として正式に非難することはないとも述べた。

 一方、昨年の大統領選挙へのロシア介入疑惑で捜査が進められている今、プーチン氏と距離を置くことは有益だ。ロシアは介入疑惑を否定している。

 もちろん、何度かの友好的な会話や初対面でのやりとりから、揺るぎない関係を築くまでには相当な距離がある。

 一つには、トランプ氏の発言が中国の逆鱗に触れる可能性が依然として残されていることがある。トランプ氏は選挙期間中と同じ主張を繰り返し、習氏にこう言ったという。「われわれが中国を再建した。あなた方が米国から奪ったカネでだ」

 たとえ北朝鮮問題で米中が協力できたとしても、南シナ海での領有権問題という別の火種が消えることはない。

 だが少なくとも今のところは、トランプ、習両氏の関係は世界で最も驚くべき「ブロマンス(男性同士の親密な関係)」になりつつある。

By Gerald F. Seib

最終更新:4/13(木) 12:44

ウォール・ストリート・ジャーナル