ここから本文です

今こそ見て見ぬふりせぬこと大事/鎌田實の健康連載

日刊スポーツ 4/13(木) 13:15配信

<鎌田實の健康で幸せに生きるための技術(4)>

 ナチスが第2次世界大戦で何百万人ものユダヤ人を殺した。人間はなぜ権威へ服従してホロコーストを起こしたのか。

 1961年、ホロコーストの首謀者アイヒマン裁判が始まった。アメリカのイエール大学で、心理学者のスタンレー・ミルグラムが、どんな人間も簡単に残酷な実験に協力するということを証明してみせた。

・責任感が大事

 アイヒマンも家庭では妻の誕生日に花を贈るような普通の男だった。それがヒトラーの要望を実行する代理人として、簡単に残酷なことをしたのだ。命令しているのはヒトラー。オレは悪くない。適当にやっておけばいいという思いで、サインをして、数百万人が殺されてしまった。これがアイヒマン現象だ。

 トップが思っていることをやっただけの「代理人」だと割り切っている。役人にもサラリーマンにもそういうヤツがいるように思う。豊洲問題で揺れる都庁幹部も、まさにアイヒマン現象のように思う。

・空気を読み過ぎるな

 今、世界中がおかしな方向へ向かっている。そんな時にアイヒマン状態になってはいけないのだ。

 ミルグラムが言い出した「部屋の中の象」現象もそうだ。部屋の中に象がいるなんてありえないけど、ありえないような大きな問題が目の前にあると、見て見ぬふりをしてしまう。人間は見たいものしか見ないのだ。「象が部屋にいるぞ」と叫ぶ勇気が必要なのだ。

 こんな今の世界だからこそ、見て見ぬふりをしないことが大事だ。おっさんだからこそ、空気を読みすぎず、「服従」しない生き方ができるのではないだろうか。

 世の中をよくするのは怖いもの知らずのおっさんなのかもしれない。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。

最終更新:4/13(木) 13:15

日刊スポーツ