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被災市町、県外避難実態把握できず 熊本地震1年

神戸新聞NEXT 4/14(金) 6:15配信

 多くの被災者が全国へ避難した熊本地震。災害対策基本法の改正で自治体同士による避難者情報の提供が可能になったが、県域を越える県外避難者は正確な人数や実態を把握する仕組みがない。公営住宅の提供などを受けて行政から把握されているはずの避難者にも支援情報が届いていないなど、出身市町村による対応の差も生じている。


 熊本県益城町(ましきまち)で自宅が全壊した下田準二さん(73)、絹子さん(70)夫婦は昨年4月、次男を頼り、神戸市西区の市営住宅に避難した。

 「故郷に戻りたい」との思いが強く、神戸市の担当者が届けてくれた益城町の広報紙で仮設住宅の募集を知り、昨年12月に同町へ戻って入居。既に町内の中古住宅を購入し、今年7月には住み始める予定だ。

 神戸では近隣住民に親切にしてもらい、帰郷時にはマフラーも贈られたという。夫婦は「阪神・淡路大震災を知る皆さんは温かく、不便は感じなかった」と振り返るが「そうした支えがなく、情報も届かなかったら心細かっただろう」。

 益城町は同町を離れた避難者約300人から連絡があり、住所などを登録。広報紙を送るなどしているが、担当者は「さらに何倍もの避難者がいるはず。連絡がない人の支援はできず気掛かりだが、打つ手がない」とする。

 一方、熊本県宇城市から避難し、兵庫県内の公営住宅で子ども3人と暮らす女性(39)は兵庫での定住を決めた。

 自宅は半壊し、車中泊を続けていたが、昨年5月に「安心して生活できるように」と、以前住んでいた兵庫に避難。知人らの助けで生活用品などは調達し、なんとか暮らしは成り立つが、女性の元には宇城市から支援情報は届いていない。市の担当者は「公営住宅に入っている県外避難者は把握しているが、連絡を取るのはこれから」とする。

 子どもが避難先の学校に慣れたこともあり、5月から別の公営住宅に正式入居することにした。

 関西学院大学災害復興制度研究所(西宮市)の野呂雅之教授(60)は「熊本地震で県外避難者の把握は一歩進んだが、さらに広域で避難者が出る南海トラフ地震などに対応するためには『避難する権利』を確立し、今も漏れている人を把握するための仕組みが必要だ」と話す。(高田康夫、小林伸哉)

最終更新:4/14(金) 9:15

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