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課題残る罹災証明=市町村、負担大きく―発行遅れの教訓生かせ・熊本地震1年

時事通信 4/14(金) 4:12配信

 約18万9000棟の住宅が被害を受けた熊本地震では、公的支援を受けるのに必要となる罹災(りさい)証明書の発行が遅れ、被災者の不満を招いた。

 同時に損壊程度を判定し、証明書を発行する市町村の負担の大きさも浮き彫りになった。地震から1年たち、発行業務に多くの職員を投入した県内市町村からは、判定の効率化や業務を支援するシステムの統一を求める声が上がる。検討すべき課題は多い。

 ◇官民情報共有、難しく
 3月末で罹災証明書の新規申請受付を終了した熊本市は、これまでに約16万件を発行。地震発生から半年間は、窓口での申請や被害認定調査などの業務に1日当たり618人を動員した。申請期限を過ぎた現在もなお、住宅分だけで約1000件の調査が終わっていない。家屋内部を含めて調べる2次調査の依頼もあり、約30人が調査に当たっている。

 同市の大西一史市長も「膨大な事務処理量で圧倒的なマンパワー不足に陥る」と発行業務の負担の大きさを訴える。甚大な被害が出た同県益城町では「通常業務との兼ね合いで発行が遅くなるケースもあった」という。

 こうした罹災証明制度をめぐり県は昨年9月、民間保険会社による地震保険損害調査との調査一本化を国に提案。情報を共有し、複数の調査結果が出て被災者を混乱させることを防ぐとともに、人的資源の有効活用を実現するという内容だ。しかし、各調査の目的や根拠となる法律が異なるため実現は難しい。内閣府担当者は「情報共有がどこまで効率化につながるのかは分からない。各調査の狙いを住民に分かりやすく説明するため、広報面の連携はできると思っている」と語る。

 ◇「共通システムを」
 内閣府も判定業務効率化の必要性は認識している。被害認定調査に携わる職員の負担を減らすため、今年度に判定の効率化に向けた検討に着手する。例えば、全壊が明らかな家屋は、通常の目視調査を省き、写真だけで判定する手法を研究。調査員の育成体制や住民への説明の在り方なども議論していく。

 罹災証明書の発行や被災者支援業務を効率化するシステムについては、「国で共通のシステムをつくることが望ましい」との意見がある。

 熊本地震では、県内市町村の多くがNTT東日本が提供する「被災者生活再建支援システム」を導入したが、市町村の既存のシステムと連携できず、確認作業などが膨大になった例が内閣府の作業部会で報告されている。「他県の応援職員の場合、被災地に派遣されてから初めてシステムを使うため、交代するたびに研修が必要。国が共通のシステムを開発すれば効率化する」(大西熊本市長)との指摘もある。

 しかし、システムを独自に開発し効率的に運用できた西原村のようなケースもあり、内閣府は「自治体が使いやすいシステムを導入し、地域に合った改良を加える方が効率的」と、共通システムの開発には消極的。

 被災者の生活再建に大きな影響が及び、迅速な発行が求められる罹災証明書。自治体の発行業務をめぐり、熊本地震の教訓を生かせるか―。具体化はこれからだ。 

最終更新:4/14(金) 10:03

時事通信