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「ワーキングマザーの時給、子供一人につき3%少」仏大学などの調査で判明

4/14(金) 17:10配信

ZUU online

「ワーキングマザー(働く母親)は被扶養児童のいない女性と比較して、子供一人につき平均3%時給が少ない」ということが、仏パリ・サクレー大学の調査から判明した。

最新の調査からは「50代の女性」「33歳までに第一子を出産した女性」といった、最も格差に強い影響を受けやすい層が具体的に特定されており、これまでに多数の研究機関から報告されている「男女の所得格差の根本的な原因は、女性の出産・子育てにあるのではないか」との調査結果の裏づけとなる。

■「不公平で非効率的」なワーキングマザーの就労環境

サクレー大学の調査について報道した英BBCによると、仏民間企業従業員の過去16年にわたる所得データを分析した結果、出産・子育てを経験した女性従業員の給与が低いという傾向が見られた。男性従業員の給与が同様の理由で左右された形跡はない。

サクレー大学も指摘しているとおり、多くのワーキングマザーは所得の高さを優先させるか、労働時間・勤務地などのフレキシビリティー(柔軟性)を優先させるかという選択に直面する。

フレックス制などに代表される「家族に優しい職場環境」を提供する企業が増えているが、現実的には低賃金を意味するケースが多い。

世界的な男女所得格差が平均68%( 世界経済フォーラム2016年データ)と考えた場合、被扶養児童のいない女性よりもさらに低賃金での就労を余技なくされているワーキングマザーの就労環境は、「不公平で非効率的」な環境であると判断せざるを得ないとサクレー大学は結論づけている。

■50代の女性の賃金は男性より27%低い

ワーキングマザーが賃金面で不平等なあつかいを受けやすいという現状は、先進国・発展国問わず問題となっている。

英国でも2016年、「平均19.2%という男女の時給差は過去4年まったく縮小されていない(英国民統計局データ)」 との報告書を女性・平等委員会が議会に提出し、政府の積極的な取り組みを要請した。

報告書では賃金格差の影響を最も強く受けているのは40歳以上のワーキングマザー、特に50代の女性で、同じような条件下で就労している男性よりも平均27%賃金が低いことが指摘されている。

■33歳までに第一子を出産すると賃金が15%低くなる?

なぜこの年代層の女性が賃金面で不平等にあつかわれやすいのか。この点については英シンクタンク、IPPRリサーチと英労働組合、TUCが共同で興味深い分析結果を報告している。女性間での賃金格差は女性の育児環境だけではなく、第一子の出産年齢にも左右されるというのだ。

同じ就労条件(教育、資格など)の女性就労者を比較した場合、33歳までに第一子を出産した女性は42歳を過ぎて第一子を出産した女性より賃金が平均15%低い。

対照的に33歳以上で第一子を出産した女性は、特別手当が12%多く支給される。しかし第一子を出産時に未婚、あるいはパートナー不在の状況だった42歳以上のシングルマザーは、既婚、あるいはパートナーのいる同年代の女性より、出産時の特別手当が平均12%少ないとの結果もでている。

つまり英国のワーキングマザーは、33歳を過ぎてパートナーのいる環境で第一子を出産すると、賃金面で最も利益を受けるということになる。しかし被扶養児童のいない女性と比較すると、総体的には42歳になるまでに賃金が11%低くなる。

国・地域によって育児支援環境は異なるものの、技術を習得しやすい働きざかり の時期を出産・子育てに費やした結果、補助金制度などを利用しても「ほとんど働きにでる意味がない」というのであれば、女性の労働力が伸び悩むのも無理はないだろう。

■英では企業に「男女の賃金格差」公開義務を導入

国際経済成長を促進するうえで女性の労働力がカギとなることは、IMF (国際通貨基金)や世界経済フォーラムなどの国際機関が再三にわたり呼びかけてきた。しかし現状を見るかぎり、決定的な対策は投じられていない。

仏、英の調査報告が示しているように、出産や子育てが男女の賃金格差を生みだしているのであれば、女性や子どもにとってこれ以上不平等なあつかいはない。

サクレー大学の報告書を作成した仏経済・工学大学院、ENSAE の研究者、ライオネル・ウィルナー氏は、格差に反対するキャンペーンを実施する一方で、子育て支援や父親の産休・育児休暇制度を促進するなど 、より強力な対応策が必須であることを訴えかけている。

英国政府はこの問題への本格的な取り組みの一環として、昨年12月、職業別の男女の賃金格差を観覧できるオンラインツール を一般公開した。さらには今年4月、従業員250人以上の企業に組織内における男女賃金格差公開 の義務を課す意向を明らかにした。

女性が出産・子育てを楽しみながらはつらつと働ける環境創りには、各国・地域の取り組みの強化は勿論、社会全体の意識を向上させる必要があるだろう。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

最終更新:4/14(金) 17:10
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