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「LINEとつながる」キリンの自販機 狙いは?

ITmedia ビジネスオンライン 4/14(金) 8:41配信

 キリンビバレッジの飲料自動販売機事業を担うビバレッジバリューベンダーとLINEは4月13日、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用した自販機サービス「Tappiness(タピネス)」を開始した。首都圏と近畿圏から順次展開し、1年後には既存・新規合わせて2万台を見込む。

【どんな自販機?】

 Tappinessは、スマートフォンとBluetoothで接続する「LINE Beacon(ビーコン)」が取り付けられた自販機。LINEを起動した状態でスマホを自販機にかざすと、簡単に接続が完了。現金、電子マネー決済のほか、「LINE Pay」でも支払いができる。購入するとLINE上でポイントがたまっていき、15ポイント集まれば好きな飲料1本と無料で交換できる。また、LINEを介して「特典チケット」をプレゼントすることもできる。

 自販機の名称のTappinessとは、TapとHappinessを組み合わせた造語で、「スマホをタップしてハッピー」というメッセージを込めているという。

●キリンが目指す「自販機の魅力向上」

 全国の自販機の台数は約220万台で、20年前の210万台からほぼ横ばいの状態にある。コンビニエンスストアの成長などから、1台当たりの売り上げは下降傾向にある。

 自販機業界の二大巨頭は日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナル。3番手争いに参加しているキリンは、15年7月にキリンビバレッジバリューベンダーを設立。同じく中堅のダイドードリンコの提携なども行い、売り上げも自販機の稼働台数も前年増を果たしている。

 現在27万3000台を有するキリンの方針は、自販機の専門性と機動性を高めることによる収益性向上と、自販機の魅力向上や他社との差別化だ。1台当たりの売り上げ向上と、ユーザーの囲い込みを目指す。ビーコンの設置や、LINEプラットフォームやLINEのキャラクター利用料などは発生するため(金額は非開示)、設備投資額は小さくはないが、それだけの効果に期待を寄せる。

 「自販機という販売チャネルは、ブランドのマーケティングにおいて非常に重要。スーパーやコンビニの棚には制限があるが、自社の自販機に何を入れるかには、ある程度の自由がある。Tappinessによって1台当たりの売り上げを5~10%ほど向上させたい。売り上げ増につながれば、さらなる拡大も視野に入れる」(キリンビバレッジバリューベンダー岩田実社長)

 こうしたスマホアプリを使った取り組みは、日本コカ・コーラの「Coke ON」などの前例がある。キリンは月間利用者6600万人を誇るLINEのプラットフォームを活用することで、自社開発アプリの課題である「ダウンロードの面倒さ」を解決。消費者にとっての気軽さをアピールする。

 「幅広い年齢層を自販機の前へと呼びたい。自販機での購入ユーザーの年齢層は全般的に高いので、スマホを積極的に使っている若い方にも使ってもらいたい」(岩田社長)

 今後は、キリングループが既に利用している「LINEビジネスコネクト」を使い、Tappinessのデータを用いたワントゥワンマーケティングも視野に入れる。顧客属性や商品の売り上げ分析を行い、利用者1人1人におすすめの新商品情報やポイント付与などを行うなどの施策を考えているという。

●LINEの狙いは?

 LINEの狙いは、「LINEがユーザーとのタッチポイントになる」とアピールすることにある。LINEはこのところ、ヤマト運輸の再配達依頼、アパレルショップのポイントカード、航空会社AIRDOの搭乗手続きなど、LINEを企業とユーザーのコミュニケーションに活用する事例を増やしている。

 同社が力を入れるのは、オンラインとオフラインを簡単に接続できるLINE Beaconだ。ビーコンは13~15年ごろに注目を集め、やや“ブーム”は終息したが、「LINEの普及率が上がり、ビーコンの大きい受け皿ができた。ようやく便利さが分かるような状態になって来ている印象」(LINE出澤剛社長)という。

 LINE Beaconとともに、LINE Payも押し出す。LINE PayはWeb上でデビッドカードのように使えるサービスで、送金や割り勘、加盟店での買い物ができる。コンビニで手に入る物理カードでは2%という高いポイント還元を行っていることもあり、決済は増えつつある。日本、タイ、台湾、インドネシアの4か国の合計で、月間利用者数は1000万人。クレジットカードを持てない層でも利用できるため、若年層の利用者が多い。

 Tappinessの決済でLINE Payが利用できることをアピールし、LINE Payの利用者増や、認知度向上も狙う。流通総額などの目標は開示せず、「体験を提供することに価値を置きたい」(出澤社長)という。

 「LINEはこんな便利なことができるのか、と思っていただければ。世の中はどんどん変わっている。企業と顧客の新しいコミュニケーションを生み出せるソリューションのアピールをしていきたい」(出澤社長)

 Tappinessに両社はそれぞれの期待を寄せている。「LINEとつながる自販機」に消費者はどのような反応を示すのか、注目が集まる。

最終更新:4/14(金) 8:41

ITmedia ビジネスオンライン