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川崎「ドヤ街」を創造のまちに 築53年ビル改修し「世界へ情報発信」

産経新聞 4/14(金) 7:55配信

 既存の建物を活用して「ドヤ街」を創造のまちに-。高度経済成長期には簡易宿泊所が軒を連ね、にぎわいがあった川崎・日進町エリア。この街で53年の歴史を刻んできた包装資材卸の「ヨネヤマ」が旧本社ビルや倉庫を大規模改修し、用途や機能を変更して性能を向上させるリノベーションを行う。街の景観を壊さずに、最先端で活躍する入居者が集う施設にすることで、「日進町から世界へ情報発信する」のが狙いだ。

 川崎市も川崎駅周辺総合整備計画で既存施設を活用したにぎわい創出のサポートを始めており、今回のリノベーション施設に期待を寄せる。今夏、クリエーターや起業家、飲食店などが結集する複合施設として新たなスタートを切る。

 ●異業種が交差

 JR川崎駅東口から歩くこと10分強。複合施設「unico(ウニコ)」のリノベーション工事現場が見えてくる。好立地ながら人通りは少なく、正直、にぎわいは感じられない。

 ただ、この施設が完成すると状況は変わりそうだ。「unico」は、地上5階建てのA棟、隣接する4階建てのB棟、倉庫を改修した「unico court」で構成し、A棟の1、2階にはカフェや、3次元(3D)の木工加工機など最先端の工作機械を備えた木工工房などが入るほか、3、4階にはシェアオフィス、5階はフリースペースとなるなど、異業種が入り交じる空間になる予定だ。

 「unico」オーナーの武井雅子さんは「日進町はドヤ街のイメージから、ガラが悪いといった声もあるが、(「unico」のように)既存の建物を生かしながら、クリエーティブな企業や飲食店が集まる『ハブ』を作っていき、色々な人たちが出入りすることで、『世界の日進町』にできたら」と意気込む。

 ●にぎわいを創出

 全面オープンを前にすでに入居し、3D加工機など最先端の木工工作機械を備えている工房「ヴィルド」社長の秋吉正一さんは、「オーナーや市の『この拠点から川崎を変えていきたい』という熱い思いが伝わり、都内から移転を決めた」と打ち明ける。

 米国のクラフトビールの味を再現するバー「TK Brewing(仮称)」を開業する高林亮一さんも、「今は人通りが少ない」と苦笑するが、「クリエーターなど、人と人が出会う場所にできたら」と期待を寄せる。

 こうした取り組みを、市はバックアップしていく方針だ。市は、昨年3月に改定した川崎駅周辺総合整備計画で、駅東口の旧東海道から国道15号のエリアを、既存の空きビルや空き店舗などを活用してにぎわいを創出するエリアと位置付けた。

 ヨネヤマのリノベーション事業には一部補助金を出したが、原則として今後は、建物のオーナーと活用のアイデアを出す人などの橋渡し役に徹し、「あくまで民間同士で取り組んでいただくことで、持続可能な発展を期待している」(まちづくり局企画課)という。

 ●“化学反応”に期待

 市では年度内に、市内の実際の空き物件を対象として学生などの参加者が、具体的なリノベーションプランを作成した上でオーナーに提案する「リノベーションスクール@川崎」の開催を予定しているほか、「リノベーションまちづくり検討会」を複数回開催し、今秋をめどに「まちづくりビジョン」を作成する方針だ。

 従来、駅近の土地の再開発は、更地にしてマンションやビルを建てるのが一般的だが、あえて地元になじんできた建物を残しながら内装などに手を加えて再生する手法で、果たしてにぎわいが戻るのかどうか。

 「さまざまな入居者による“化学反応”で、何か新しくておもしろいことが起きそう」というのが「unico」に入居する人たちの共通した思いだといい、オーナーも入居者も自治体も一体化した都市再開発の好事例となるか、今後の展開に注目が集まる。

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【用語解説】川崎駅周辺総合整備計画

 平成18年に策定した旧総合計画をベースに、28年3月に改定。川崎駅近くなどの老朽化した施設の機能更新と高度利用による「再開発の推進」をはじめ、回遊性や防災面の強化、グローバル化への対応などを盛り込んだ。28年度から10年間を対象にしている。

最終更新:4/14(金) 7:55

産経新聞