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営農 この場所で 再建へ断水の壁 生乳出荷、稲作 先見えず 熊本地震1年 南阿蘇村立野地区

4/14(金) 7:01配信

日本農業新聞

 震度7を2度観測し、農業でも大きな被害が出た熊本地震の発生から14日で1年。阿蘇大橋が崩落し、今も断水が続く南阿蘇村立野地区で、農家が復興を模索し続けている。酪農家の経営再開など光も見え始めたが、園芸作物や水稲は再開のめどが立たない状況だ。それでも地域の農家らは「この場所で農業を続ける」との思いを強める。

 昨年4月14日の前震に続く16日未明の本震で、農地や水路が切り裂かれた同地区。いまだ飲料水の確保さえままならない中、酪農を営む大塚恭徳さん(45)が今月、経営を再開した。「待ちに待った第一歩だ」。およそ1年ぶりに生乳を出荷した11日、新たに迎えた牛と目が合った大塚さんは思わず笑みを浮かべた。

 地震前に26頭いた牛や牛舎には奇跡的に被害がなかったが、経営に不可欠な水を絶たれた影響は大きかった。被災後、懸命に酪農を続けたが、ある日、やっとの思いでくんできた水を与えた際に、飢えた牛たちが殺到。柵にはさまれてけがをする牛が出た。

 「もう無理だ」。張りつめていた緊張の糸が切れ、5月には全ての牛を手放した。「苦しむ姿を見ずに済むと思い、ほっとした」。悲しむ余裕さえなかった。

 その後は牛舎の片付けなどをして過ごした。作業に没頭したが、牧場仕事で荒れているはずの自分の手がきれいになっていくことに気付き、寂しさを覚えた。やっぱり、自分には酪農しかない――。

 県酪連や他の酪農家の励ましも大塚さんの背中を押した。年明け以降、徐々に未経産牛を導入。4月9日には大阿蘇酪農協の組合員から搾乳牛12頭を安く譲ってもらい、飼養頭数は計28頭と被災前を上回った。2トンダンプに1トンタンクを二つ積み1日1回、隣接する大津町からくんでくることで、水を確保するめども立った。

 「あと30年、ここで酪農を続ける」と大塚さん。約1年越しで酪農に携わる喜びをかみしめる。

園芸農家も模索

 一方、地区農業には断水の影響が大きい。復興とは程遠い状況も続く。

 崩れ落ちた橋の目と鼻の先にある農地17ヘクタールで観光農園などを手掛けていた木之内農園。断水の影響などで、営業を断念した。わずかに残るジャガイモなどの畑で作業するが、主力のイチゴは栽培できない。被害額は3億円近くに達した。

 住民の多くが作っていた水稲も、被災後は一本も植えられていない。新たな橋の建設工事に伴い、水田や畑だった場所には多くの土砂が積まれ、地区はかつての自然豊かな姿を失った。

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最終更新:4/14(金) 7:01
日本農業新聞