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欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密

アスキー 4/15(土) 12:00配信

真空管搭載で超小型のヘッドアンプ「MV50」に付いているノブは少ない。だが、話を聞くとさまざまな工夫があるようだ。

 VOXは新型真空管「Nutube」を搭載した初の製品として、超小型ギター用ヘッドアンプ「MV50」を発売した。
 
 NutubeはVFD(蛍光表示管)で有名なノリタケ伊勢電子とコルグの共同開発によるもので、従来の真空管より低電力で動き、発熱も少なく、小さな筐体に収められる。MV50はそうしたNutubeのメリットをわかりやすく形にした製品だ。
 
 MV50の外形寸法は標準的なストンプボックスサイズのエフェクターと大差なく、重量はわずか540gに過ぎない。ACアダプターと合わせても、ギターのギグバッグに難なく収められる。
 
 にも関わらず、Nutubeを使ったプリ段と、クラスDのパワー段によるハイブリッド構成で、MV50は最大50Wの出力を発揮する。一般的なギター用スピーカーキャビネットと組み合われば、リハーサルスタジオからライブハウスまで対応できるパワーだ。
 
 また、ヘッドフォン/ラインアウト端子にはキャビネットシミュレーターも搭載されており、自宅練習やDTMのような用途にも使える。こうした応用範囲の幅広さもMV50のウリのひとつ。
 
 MV50はサウンドキャラクター別に「ROCK」「AC」「CLEAN」の3種が用意され、店頭価格はそれぞれ2万1600円。同時に発売された小型8インチスピーカーキャビネット「BC108」は1万800円。MV50とBC108のセット販売もあり、こちらはROCK、AC、CLEANともに2万8080円。そして4月末には本格的な12インチスピーカーキャビネット「BC112」の発売も控えている。
 
 筐体を小型化する必要から、MV50の操作系は最小限に抑えられている。しかし表面には見えない部分で、従来のアンプとは異なる新しいアプローチがいくつも盛り込まれている。VOX開発陣インタビューの4回目は、スペックや見た目からはわからない音色や操作系のこだわりについて。
 
キャビネットシミュレーターの狙いはレコーディング
―― (前回は)アンプはキャビにつないでボリューム上げてナンボという感じがしました。でもMV50はヘッドフォンやラインでも使えますよね?
 
江戸 はい。普通の真空管アンプのように、スピーカーをつながないと故障するということもありません。ラインアウトにはキャビネットシミュレーターも入っていて、直接オーディオインターフェースにつないで、そのままレコーディングに使うことも想定しています。
 
―― そのキャビネットシミュレーターで狙った音はどんな設定ですか?
 
李 この3機種に関しては同じ設定です。BC112のようなユニット1発のキャビの音をマイクで拾った感じですね。
 
江戸 BC112にはセレッションの「V-type」というユニットが載っているんですが、それと「Vintage 30」の中間くらいの音を狙っています。歪みでいい音の出るのがVintage 30の特徴なんですが、いまうちの製品でVintage 30を載せたキャビがない。自分のところの製品とかけ離れた音でもいかんだろうということで、その中間くらいを狙っています。
 
李 キャビにマイクを立てて録ろうとすると、結構工夫しないと難しい結果になると思うんですよね。特に(シュアのSM)57だけだと。そこを最終的なオケの中で使いやすくなる音に寄せています。それで57だけで録った、あの難しい感じは減っています。
 
―― 録音の現場でやるようなトリートメントは入れていると。
 
李 そうです。だから実際これにマイクを立てて録った音と、ラインから出てくる音は違うんですが、そこは調整しているんですね。これも開発時に協力してくれたレコーディング・エンジニアがいるんですけど、57とロイヤーのR121というリボンマイクをミックスした音になっています。ただラインで出したときは、DEEPとFLATを切り替える背面のEQスイッチと、ACとROCKのインピーダンススイッチは、音に影響しません。
 
インピーダンススイッチは音色設定でも使える
―― ということは、スピーカーに接続したときは、インピーダンスの設定を変えると音も変わるということですか?
 
李 あれはパワーアンプがスピーカーキャビネットの特性や歪みの影響を受ける回路なんです。接続されるスピーカーとインピーダンスを合わせないと、規定通りのサウンドにならない。それでインピーダンススイッチを搭載しています。
 
―― ではキャビネットとの実際のインピーダンス調整は自動でやっているわけですか?
 
李 はい。設定を間違えると故障するようなものではないです。
 
―― するとインピーダンススイッチは、一種の音色設定スイッチとしても使えると。
 
李 キャビネットの特性を反映するので、ボリュームを上げていくと音も変化します。ちょっと試してみましょうか。
 
 というわけでROCKをインピーダンス8ΩのBC112に接続し、4/8/16Ωの3段階あるインピーダンススイッチを切替えてもらった。16Ωだと音量が少し小さくなって歪みが薄くなる印象。4Ωだとかなり音が暴れてコード感も掴みにくい音になる。ボリュームを上げて得られる音圧感も含めて、やはり適正値の8Ωがベストと感じたが、試してみてよいと思えば、それで使うこともできるわけだ。
 
トーンノブ一発でもイケる秘密
―― 音色設定といえば、ROCKとACがトーンノブ一個なのはなぜですか?
 
江戸 ROCKとACはトーン一発で狙った音を出せる自信があったんです。それは別の試作で李が作っていたトーン一発のハードを試してみて、これはノブをどの位置に置いても使える音がするなと。そのツマミ一発で勝負する世界を、お客さんに提案してみたかったんです。
 
―― 買う側とすれば、トーンがノブ一個だけだと、ローパスフィルターだろうと思ってガッカリしちゃうんですけど。
 
江戸 そうそう、単にハイが増減しているだけじゃないのコレ? っていうことですよね。それがいままでのアンプだったと思うんですけど、このトーンはどの場所にあっても、その場所なりの使える音が出るようになっているんです。
 
李 ちょっと回してみましょうか。
 
―― あ、ホントだ。単なるローパスじゃないですね。このトーンの動きはどうなっているんですか?
 
李 こちらが意図するサウンドや、弾き手が欲しいだろうと思うサウンドに対して、キャビの違いや置かれ方による違いを補正できるようにしています。
 
―― つまり値は連続的に変わるけど、それぞれに使いどころがあるプリセットスイッチみたいな?
 
李 そんな感じですね。自分自身もギターを弾いていて感じていることを、いろんな条件を想定して決めています。たとえば、アンプの中にはマーシャルのトレブルだけを抜き出したようなトーンコントロールもあるんですが、現場でそのトレブルの変化が欲しいわけじゃないよね、というのをずっと思っていたんです。それをこのトーンに託している感じですね。
 
―― 触れるところが少なくて簡単な作りに見えますけど、実際にはいろんなところが細かく実用的にできているわけですね。
 
李 そうです。
 
(次回は一見大人しそうに見えるCLEANがすごいというお話です)
 
 
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
 
 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
 
文● 四本淑三

最終更新:4/22(土) 12:18

アスキー