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引越し、入居後に「事故物件」と知ったらどうなるのか

ZUU online 4/15(土) 11:10配信

引っ越しを考え、新しい物件を探すときに気になる点の一つが「事故物件」ではないかということだろう。「以前、殺人事件などがあった」と聞くと、たいていの人は契約をしり込みするのではないだろうか。

4月になり、新しいマンションやアパートに引っ越した人も多いかもしれない。もし引っ越した後で事故物件だと分かった場合、どうしたらいいだろうか。行政書士である筆者に相談に来たAさんの事例を紹介ししょう。

■同じマンションで孤独死、3年たっても借り手つかない事故物件

相談者Aさんが賃貸マンションを借りたのは、1年前である。急に転勤命令で時間がないこともあって、不動産会社で手ごろな物件を見つけてすぐ契約。日をおかずに荷物を運び入れ、新しい生活をスタートさせた。

ところがつい最近、同じ階に住む人からAさんのマンションで3年程前に孤独死があったことを聞いた。Aさんの部屋ではないが、同じ階の別の部屋で一人暮らしの住人が亡くなり、1カ月後に発見されたとのことであった。

自分の部屋ではないものの、毎朝会社に出かける前にその部屋の前を通らなければいけない。部屋は現在、きれいにリフォームされていると聞くが、決して気分がいいものではない。実際、前の住人が亡くなって3年も経つのに、いまだに借り手がいないとのことであった。

病死とはいえ部屋の中で一人暮らしの住人が亡くなり、1カ月も発見されていなかったのだから、「事故物件」であることは間違いない。Aさんは仲介業者である不動産会社の担当者に、「もし同じで孤独死があったことを知っていたら今のマンションは借りなかった。契約の際に教えてくれなかったことは契約違反ではないか」と連絡をした。

しかし担当者の返事は、「確かに同じ階の人が亡くなったことは事実だが、その部屋を契約するわけではないので知らせる義務はありません」というものだった。

だがAさんは納得がいかない。「義務がなくても知らせてほしかった。それが誠意ではないか」--。

そこで筆者のもとに相談に来たAさんに「事故物件の事前告知」について説明した。

「事故物件」は簡単に言うと「賃貸借や売買の対象となるアパート、マンション等の物件の中で、何らかの原因で前に住んでいた人が亡くなったもの」である。

ただ「住人が亡くなる」というのは範囲が広すぎるので、もっと限定的に「事故、殺人、自殺、病死(孤独死)などの原因で、前の住人が亡くなった物件」というのが一般的に使われている意味である。

また「告知義務」とはいわゆる「事故物件」を貸したり売ったりする場合には、契約の際に契約者に説明をしなければならないと言うことである。宅地建物取引業法で、契約の際に取り交わす「重要事項説明書」に記載することが義務付けられている(重説)。記載するだけでなく、不動産会社は契約者にきちんと“口頭で”説明しなければならないとされている。

もしこの「告知義務」をしなければ、約束違反(債務不履行)となり、契約自体が無効になってしまう。つまり契約者は不動産会社に対して、新たな物件を用意したり損害賠償を請求したりすることができるのである。

■「告知義務」の範囲は?

相談者Aさんから「やはり私の借りた物件にも『告知義務』がありますよね」と言われたが、この「告知義務」にはいくつかのハードルがある。

「事故物件」は一方的に物件を貸す側に不利であるから、一定の基準が設けられているのである。

契約者に何を告知しなければならない内容は3つある。1つ目は、事故が起きてからの「年数」だ。同じ孤独死でも、半年前か3年目かで契約者の受け取り方はまったく違うだろう。ちなみにある事故物件を誰かが借りて、その人が1カ月で退去した場合、次の契約者には告知しなくてもいいとなっている。

2つ目は事故が起きた「場所」である。居住スペースの具体的な場所、あるいは部屋のすぐ前等を告知しなければならない。年数と同じで、場所によって契約者の受け取り方が異なるからである。
 
3つ目は事故の「種類・原因」である。前の住人がその部屋で自殺や他殺(殺人事件)で亡くなった場合には、必ず伝えなければならない。しかし仮に家族と一緒に住んでいて病死だった場合には、基本的に家族がすぐに発見あるいは死亡の際に立ち会うはずだから、告知は必要ない。このあたりの線引きは難しいところだが、事故の種類・原因を知っていたら、契約を結ぶ可能性が少ないと考えられる場合には告知すべきだろう。

さてAさんの場合だが、確かに別の部屋とはいえ同じ階に「事故物件」があったことになるから、「重要事項説明書」でなくて、契約の際に一言説明があってもよさそうだ。
 
ただ実際に事故があったのはAさんの借りた物件から離れた部屋である。これが隣の部屋であれば、多くの人が借りるのに躊躇するかもしれない。しかしAさんの部屋とその部屋との間にいくつかの部屋があるわけだから、明確な「告知義務」があるとは言えない。しかも3年前の孤独死だから、それを理由に借りたくないと思う人はそれほど多くとも思えない。

確かに事前に教えてくれなかった不動産会社に対して、Aさんは「誠意がない」と思う気持ちもわかる。だが現状では、範囲を広げた形で不動産会社に「告知義務」を課すことは難しいのである(井上通夫、行政書士)

最終更新:4/15(土) 11:10

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