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熊本地震1年 転院先で次女関連死、癒えぬ悲しみ

産経新聞 4/15(土) 7:55配信

 ■「花梨にほめられるよう立ち直らないとね」

 あのとき転院さえしなければ、娘は助かったのではないか-。熊本県合志(こうし)市の宮崎さくらさん(38)は、重い心臓病を患っていた次女の花梨(かりん)ちゃん=当時(4)=を熊本地震の被災後に失った。14日で前震の発生から1年。さくらさんはやり場のない思いを抱えながら、「少しずつ立ち直らないと」と懸命に前を向こうとしている。

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 宮崎さん一家の時計の針は止まったままだ。居間には、花梨ちゃんが、よく遊んだぬいぐるみが、そこかしこに並ぶ。毎日の食卓にも花梨ちゃんのご飯を欠かさない。「でも花梨がいない現実は変わらないんですけどね」。さくらさんは悲しげな表情を浮かべる。

 花梨ちゃんは生後まもなく重い心臓病だと診断された。だが、病気が嘘のように公園を走り回る元気な子だった。2歳のころに大分に初めて旅行した際は、今でも鮮明に覚えているほど笑顔を振りまいていた。

 昨年1月の3回目の手術も成功。主治医から「早ければ3月に退院できる」と言われたが、その直後に合併症を起こした。熊本地震は、その治療中の難しい時期に発生した。

 入院先の熊本市民病院は地震で傾き、院内の壁には亀裂も入った。「心臓への負担もあるが、倒壊の恐れがあるので転院を」。主治医の要請を断ることはできなかった。

 本震のあった昨年4月16日、花梨ちゃんは救急車で約2時間かけ、福岡市の病院へ移った。だが、到着後に容体が悪化。5日後に息を引き取った。

 姉が脱いだ幼稚園の服を着て通園の練習をしていた花梨ちゃん。さくらさんは「幼稚園、通おうね」と声をかけ続けたが、かなうことはなかった。

 昨年の夏、合志市に震災関連死を申請し、認定された。「倒壊しない建物であれば転院せず治療を続けられ、違う結果になったはず」。今もそんな気持ちがぬぐえない。

 一家には、花梨ちゃんと交わした10の約束事がある。

 《こうえんでいっぱいあそぶこと》

 《いつもえがおでいること》

 《かりんちゃんにほめてもらうようにがんばること》

 《かりんちゃんはいつもみんなといることをわすれないように》

 居間の壁に、その約束を記した色紙を掲げ、守り続けている。

 約束のうち、「ほめてもらうようがんばること」と「みんなといることをわすれない」は花梨ちゃんが亡くなってから付け加えた。悲しみが癒えることはないが、花梨ちゃんのためにも前を向こうとしているからだ。

 さくらさんは14日、花梨ちゃんが大好きだったぬいぐるみや遺影を手に県の追悼式に出席した。「式を迎えれば何か変わると思いましたが…」と複雑な心境をのぞかせた。

 ただ、約束がある。「少しずつ立ち直らないといけないとは思っている。これからも守って生きていきます」。さくらさんは、自分に言い聞かせた。

最終更新:4/15(土) 8:13

産経新聞