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大阪・造幣局「通り抜け」支える“桜守” 地道な手入れ25年以上「最初の仕事は…」

産経新聞 4/15(土) 14:24配信

 明治時代から130年以上も続き、ピンクや赤、緑がかった白など多様な桜が咲く大阪の春の風物詩、造幣局(大阪市北区)の「桜の通り抜け」(17日まで)。大勢の見物客を楽しませる134品種350本に上る桜並木は、“桜守”を務める同局施設課の渡辺秀勝さん(44)の日々の地道な手入れによって支えられている。(今村義丈)

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 「平成3年春に入局して最初の仕事も、桜の毛虫取りでした」。25年以上、桜の管理を担当してきた渡辺さんは、おどけながらも誇らしげに笑う。

 通り抜け開門前、根元の土を手に取ったり周囲の別の木と見比べたりして樹勢を点検。「自然の力にできるだけ任せて手を加えない」のが原則だが、乾燥しすぎないようバケツで水を補ったり、虫や弱った枝を取り除いたりしている。

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 本業は木工専門の職人。貨幣製造部門などの要望に応じ、場所や用途に合う作業台を作製したり建物補修を手がけたりする。桜の担当は代々、木工の専門者が引き継ぎ、現在は渡辺さんが中心だ。

 受け持つのは通り抜けだけではない。枯れた際の植え替えに備え、局内5カ所の「養成地」で約150本の若い桜も育てている。1年目の木は1週間に1度、2年目以降も1カ月に1度、成長具合を記録している。

 通り抜けの木から採った穂木(ほぎ)を接ぎ木して増やしたり、成長に合わせて植え替えたりするのは「“冬眠”していた根などが動き始める時期」(渡辺さん)の2月末ごろが最適。このため年明けから4月の通り抜け終了までは特に多忙だ。

 植え替えの際、数百メートル程度の移動でも、根が乾燥しないよう細心の注意を払う。水分を保つため土を付けたまま移動させるが、弱っていれば土を変える必要もある。繊細な判断が求められる。

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 新たに取り入れた品種を通り抜けで「デビュー」させるのも重要な役目だ。今年は、平成20年から育てていた長崎県大村市の玖島城(くしまじょう)跡発祥の「玖島桜」を加えることができた。

 「通り抜けの桜は目線と花の距離がとても近く、間近で楽しんでもらえるのが特徴」と渡辺さん。桜に詳しい公益財団法人「日本花の会」(東京)によると、大きくなりやすい一般的なソメイヨシノが少なく、より低い樹形になる山桜系が多いためとみられる。歴代担当者がこつこつ積み重ねてきた多品種の醍醐味(だいごみ)だ。

 「でもここからが大事」と渡辺さんは気を引き締める。日当たりなどの環境が合わず枯れてしまう例もあるためだ。通り抜け終了後も、薬剤の散布や枝切り、病気が疑われれば拡大防止のため周囲の土の入れ替えなどの作業に追われる。

 渡辺さんは「桜も人に見てもらえて喜ぶと思う。人々に長く楽しんでもらえるよう、大事に育てたい」と木々を見守っている。

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 ■桜の通り抜け

 造幣局内の延長約560メートルの桜並木を4月に1週間、一般開放する恒例行事。付近の藤堂藩の蔵屋敷に植えられていた桜が明治維新後に移され、明治16年、当時の局長が「局員だけの花見ではもったいない」と開放してから続いてきた。戦争による空襲被害などを受けながらも、全国各地の桜を増やしてきた。最多入場記録は平成17年の114万7千人で、近年は外国人入場者も多い。入場は平日は午前10時、土日は午前9時から、午後9時まで。夜間はライトアップも実施している。

最終更新:4/16(日) 0:31

産経新聞