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北朝鮮とシリア30年コネクションを知ればよく分かる 米軍がシリア攻撃に込めた対北「警告」

産経新聞 4/15(土) 11:30配信

 ドナルド・トランプ米大統領(70)に空爆を決断させたシリアの化学兵器は北朝鮮の指導で作られたサリンの可能性が高い。北朝鮮とシリアには1970年代からの軍事コネクションがあり、北朝鮮は30年前からシリアに化学兵器の技術移転を行ってきた。北朝鮮はシリア内戦に部隊を派遣しているとの目撃談もある。身近な友好国、しかも軍事支援国への米空爆は、米韓合同軍事演習で米軍部隊がいつでも“臨戦態勢”に入れるなかで実施されただけに、北朝鮮の金正恩政権に特別の現実味と衝撃を与えたもようだ。

 ■黒幕は北の「強硬派」総参謀長

 シリア内戦では緒戦当時から戦場で北朝鮮軍人がたびたび確認されている。4年前にはシリア人権監視団(SOHR)の情報として汎アラブ紙が「北朝鮮軍の将校が軍事顧問として政府軍を支援している」として、「将校らはシリア各地に派遣されシリア国防省の武器工場など主要施設で活動。軍事戦略や後方支援を行っている」と報じた。

 シリア・コネクションは朝鮮人民軍の強硬派で知られる金格植・元総参謀長(2015年死亡)が構築したとされる。金氏は野戦軍人出身で1983年のラングーン事件(韓国・全斗煥大統領=当時=を狙った爆弾テロ事件)の責任者だった。近年では延坪島砲撃事件(2010年)を指揮した人物だが、1971年からは約10年間、シリア駐在武官を務め、シリア軍の軍事演習や北朝鮮兵器のシリアへの販路を開いた。

 その結果としてシリアと北朝鮮には生物・化学兵器、ミサイル輸出、核開発の3つのコネクションができた。生物・化学兵器では90年代から北朝鮮が技術者をシリアに派遣、薬剤の合成から化学兵器用の弾頭製造まで技術支援した。

 化学兵器生産の機器である真空乾燥炉を輸出していたほか、2009年には北朝鮮が輸出した生物・化学兵器防護服2万着を積んだ貨物船がギリシャで摘発された。

 北朝鮮は73年の第4次中東戦争でシリアを軍事支援し、80年代のシリアのレバノン侵攻にも金格植氏が主導で北朝鮮軍人が参加したとされる。また、北朝鮮は国際紛争で友好国に軍事顧問団を派遣しても、部隊は派兵してこなかったが、シリア内戦では「2個部隊がシリアに来ている」とロシア・タス通信が昨年7月に報じている。 

 2009年秋、イスラエルがシリア東部にある施設を空爆した。この空爆について米国は標的の施設が北朝鮮の支援で作った核関連施設の疑いあるとしている。施設には原子炉があり、これが北朝鮮・寧辺の黒鉛減速炉に酷似していると指摘している。

 ■すでにピンポイント攻撃の配置

 北朝鮮はシリアに過去30年間でさまざまな軍事支援を行ったが、そのなかで最も強力なのが化学兵器だった。それだけに今回の米軍によるシリア攻撃は金正恩・朝鮮労働党委員長(33)への“警告”としては、「北朝鮮のシリア支援は許さない」「北朝鮮の核実験は容認しない」との強烈なメッセージとなった。北朝鮮は自国が支援したシリア核施設への約10年前のピンポイント攻撃を想起したはずだ。

 米メディアは13日、米情報当局者の話として、北朝鮮が核実験強行と確信した場合、米側は先制攻撃を行う準備に入ったと報じた。朝鮮半島に向かっている空母カール・ビンソンは来週早々、半島近海に到着する。米海軍はすでに北朝鮮近海に駆逐艦2隻を展開しており、北朝鮮の核実験場、豊渓里まで約480キロの海上に配置された。

 米軍の警告攻撃は通常兵器で行われる可能性が高い。ただ、北朝鮮には米韓両国が把握していない地下核施設が少なくないとの指摘があり、米国が通常兵器でピンポイント攻撃を行ったとしても、「北朝鮮は核兵器による報復能力を持ち続けるはずだ」(韓国の北朝鮮専門家)との見方が根強い。このためピンポイント攻撃では「核能力の無力化は困難」「現実的には、北朝鮮からの報復のリスクがより高い」ともされている。

 北朝鮮は11日の「民主朝鮮」の論評で、米国の軍事圧力を「米国が朝鮮半島地域に膨大な規模の核戦略資産を相次いで送り込み、戦争の狂気を発している」と非難したうえで、「本当に戦争らしい戦争をしてみようと言うなら、どれ一度対決してみようではないかというのが、わが部隊と人民の気概である」と挑発的に言及した。

 米シンクタンクのシミュレーションによると、米国が通常兵器で先制攻撃、北朝鮮が報復に出た場合の被害は、韓国に報復(通常兵器)があった場合で数千人から数万人の犠牲者が出るとされ、日本も標的になる。「双方が一撃で終了せず全面戦争に拡大する恐れもある」とされる。(産経新聞編集局編集委員 久保田るり子)

最終更新:4/15(土) 11:30

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