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東京海上日動など、海上保険にブロックチェーン活用へ

4/15(土) 17:21配信

日刊工業新聞電子版

保険証券電子化、実証始まる

 海上保険でブロックチェーンの活用を検討する動きが一部の損害保険会社で出てきた。東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は、保険証券の電子化に向けた実証実験に着手。電子化によるペーパーレスが進めば、業務の効率化が期待できる。ただ、運用には保険会社以外の多くの関係機関との連携が必要となり、課題も多い。ビジネスへの本格展開・運用にはまだ時間がかかりそうだ。

 ブロックチェーンとは暗号化技術を活用し、取引履歴などの台帳を分散管理・同期することで改ざんできないことを保証できる仕組み。金融取引や株式取引などのシステムへの適用に革新的な技術として注目され、損害保険業務でも活用の動きが始まっている。

 その代表例が海上保険。輸出入に関わる外航貨物海上保険では船荷証券や信用状、保険証券など関連書類はいまだに紙がベース。保険証券の場合、信用状との一字一句の確認作業に手間と労力を要し、流通途中での紛失リスクも伴う。

 そこでデータの秘匿性を確保しつつ、関係書類の電子化、業務の効率化をブロックチェーン技術で実現できないか、実証実験の動きが出てきた。

 一足早く乗り出したのが東京海上。NTTデータと連携し、同社が構築したブロックチェーンから信用状や船荷証券の情報を取り込み、このデータを基に作成した保険証券の電子情報をさらにブロックチェーン上に反映できるか実証に着手する。3月末までに終え、検証結果を近く公表する見込み。

 三井住友海上も4月から実証に着手している。英のMSアムリンと連携し、グループベースで申し込みや証券発行、流通などの一連の手続きの電子化に向けた実証を始めている。

 保険証券の電子化が実現すれば、書類を送る概念がなくなるため、郵送コストや紛失リスクもなくなる。東京海上の場合、年間1000件の輸出企業であれば約500万円のコスト削減を想定する。

 とはいえ、本格導入には課題も多い。貿易業務は損保以外にも銀行や海運会社、税関など関係者が多く、最終的にはこうした多くのプレーヤーとの連携が欠かせない。保険会社だけが先行して主導するのは限界がある。

 また、標準化の問題もある。例えば、信用状の形式一つとってみても「金融機関ごとにバラバラ」(東京海上)であり、システムの運用上、仮に標準化を求めると個社の領域を超える可能性もある。

 ただ、保険証券の電子化が叫ばれたのは20年以上も前の話。当時はセキュリティーの課題、関係者間でシステムを同一化する際のコストの問題があった。それがブロックチェーン技術で解決される可能性が出てきた。

 世界を見てもデンマークの海運大手A.P.モラー・マースクがIBMと連携しながら、ブロックチェーンによる貨物の追跡管理の実証を展開するなど、機運は確実に高まっている。「小さく始めて、できることから地道に着手していきたい」(東京海上)。ブロックチェーンが海上保険のあり方を変える可能性に関係者の期待も高まっている。