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南阿蘇村から大学生が消えた…でも下宿はたたまない

日刊スポーツ 4/15(土) 9:42配信

<震度7の大地震から1年 熊本の今(2)>

 震度7を2度観測し、熊本、大分両県で225人の犠牲を出した熊本地震は14日で発生から丸1年を迎えた。南阿蘇村は16日の本震で震度6強を記録。東海大農学部が立地する黒川地区では下宿する学生3人が犠牲になった。授業は現在も再開には至っておらず、学生村だった同地区のにぎわいは消えたまま。半壊認定された下宿「新栄荘」を営む竹原満博さん(56)は3月末が締め切りだった「公費解体」は申請せず、同地区復活への思いを語った。

 学生が笑い、語らい、活気があった地震前が目に浮かぶ。竹原さんは迷った末に公費解体申請を見送った。壊したら、あの時はもう戻らない。

 東海大は地震後、阿蘇キャンパスを閉鎖。約750人が下宿していた黒川地区に学生はいなくなった。現在は直線で約25キロ離れた熊本キャンパス(熊本市)で講義を行い、実習は国や県の施設を借りて行っている。

 それでも新栄荘で暮らした学生はこの1年、定期的に遊びに戻ってきた。3月上旬、4年生の卒業を祝う毎年恒例の「追い出しコンパ」を開いた。在校生と卒業生みんなでバーベキューを楽しんだ。

 「この1年は思い出したくない。学生たちがかわいそうで。4年生は特に、慣れ親しんだここから送り出してやりたかった」。急な校舎変更。黒川地区であれば地域住民とのコミュニティーが開かれていたが、都市部ではそのつながりはなく、戸惑った学生も多かったという。

 大学は今年1月、阿蘇キャンパスでの実習を17年度で一部再開、18年度の全面再開を目指すと発表。熊本キャンパスからのバス送迎となる。大学の担当者は黒川地区での下宿について「民間同士ですから、学生側の判断となる」と話した。

 それでも竹原さんは不安が募る。土砂崩れや橋の倒壊により、いくつもの道路が通行止めという状況で、熊本市内から車で1時間30分以上かかる。「そんな状況で実習が再開できるのか」。

 しかし、学生の安全面を考えれば大学側へ強くも言えない。「地震前のように講義も含めた全体的な再開は不可能だろう」と話しながらも「3、4年生は講義が少ない。そういう子たちだけでも、こっちに住むという形になれば…」と控えめに語った。

 竹原さんの祖父が始めて約40年の新栄荘。そう簡単にたためない。「卒業生が立ち寄るところがなくなってしまう」と寂しそうに語る。あの活気が恋しい。食堂には「追いコン」で使った万国旗の一部が残されたままだった。【三須一紀】

最終更新:4/15(土) 9:52

日刊スポーツ