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「歯」から身元、高まる期待 県警、大震災機に委嘱医増

茨城新聞クロスアイ 4/16(日) 4:00配信

災害や事件で亡くなった人の身元を歯型から割り出す「警察歯科医」の委嘱を県警が進めている。津波などで遺体が損傷しても、生前と変化が少なく、歯の欠損や治療痕は一人一人異なるため、指紋のように個人を特定できる。東日本大震災の経験を踏まえ、県内で95人まで増えた。役割が増す一方、生前情報が保存されていなければ照合できないため、カルテのデータベース化が課題となっている。

大震災翌月の2011年4月、ひたちなか市沖合で遺体が見つかった。身元が分からず、歯を鑑定した結果、インプラント(人工歯根)の治療痕が見つかり、福島県南相馬市の女性と判明した。津波による犠牲者だった。15年9月の関東・東北豪雨で起きた常総市の鬼怒川堤防決壊でも、歯の鑑定によって犠牲者の身元が特定された。

警察歯科医は「歯牙鑑定」として、遺体の損傷が激しい身元不明者の歯の欠損や治療痕を調べる。口の中を撮影した上で、歯科診療所に保管されているカルテやレントゲン写真などの生前情報と比較し、身元を割り出す。指紋やDNAによる身元確認に加え、有力な鑑定手段となる。

県警は、県歯科医師会から推薦を受けた歯科医に対し、警察歯科医を委嘱している。10年4月は50人だったが、17年4月で95人となっている。

同医師会によると、かつては「1署1人」を想定して警察歯科医の確保に努めてきたが、震災をきっかけに増員を図った。遺体と向き合う警察歯科医は精神的負担も大きく、経験を積んだ人材の確保が欠かせないという。

水戸市内で歯科医を開業し、警察歯科医でもある大沢賢祐さん(58)は「南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した場合にも対応できる体制づくりが必要」と指摘する。

東日本大震災では、警察歯科医が犠牲者の身元確認に尽力した。警察庁によると、これまで岩手、宮城、福島3県で警察の検視などを受けた遺体1万5799体のうち、8719体の歯科記録が作成された。

警察歯科医の重要性が高まる一方、身元確認に必要な生前情報のデータベース化が大きな課題となっている。大震災で津波に襲われた地域では、歯科診療所で保管されていたカルテも失われ、身元確認が難航するという課題に直面した。

生前情報のデータベース化について、日本歯科医師会の担当者は「将来的には国や地方公共団体が一元化して検索できるような環境が想定される」と指摘。同時に「個人情報保護の観点から解決されるべき課題もある」と話し、環境整備の必要性を示した。 (小野寺晋平)

★警察歯科医
2人ないし3人体制で身元不明遺体の歯の鑑定に取り組む。1985年、乗客乗員520人が亡くなった日航ジャンボ機墜落事故で身元確認に尽力したのをきっかけに知られるようになり、全国各地で警察歯科医の組織化が進められてきた。

茨城新聞社

最終更新:4/16(日) 5:05

茨城新聞クロスアイ