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“壁に貼る”有機ELテレビの衝撃――LGエレ「W7P」をソニー製モニターと比較試聴した

ITmedia LifeStyle 4/16(日) 12:10配信

 この1月、雑誌の企画で東芝の有機EL大画面テレビ「65X910」を1週間ほど自宅で試用してそのインプレッションを書くという仕事をした。

真横から見ると“線”

 それまではパイオニア最後の「KURO」、50型フルHDプラズマモニターを8年ほど使っていたのだが、65X910の65型大画面で見るUltra HD Blu-ray(以下、UHD BD)のキレのよいクリーンな4K&HDR高画質にヤラれ、結局自室に導入することにした。

 プラズマ同様、サブピクセルの光量を1つ1つ個別に制御できる自発光ディスプレイの画質のすばらしさは格別だ。この1カ月ほど65X910と付き合ってきて、そんな感慨をしみじみと抱く。

 漆黒の闇はねっとりと艶めかしく、被写体が移動しても、見た目の解像感は静止時と大きく変わらない。視野角の広さを含めて、やはり高級有機EL大画面テレビには、液晶タイプとは一味も二味も違う魅力があると実感している。

 UHD BDやフルHDのSDR番組を本機で見ていると、やや暗部がつまり気味かと感じることがあるが、同社技術陣もその点については気にしているようで、つい先日、暗部の階調表現を改善する無償アップデートを5月下旬に行うとの告知があったので、楽しみに待ちたいと思う。

●壁に貼るテレビの衝撃

  1月のCESでお披露目されたパナソニック、ソニーの有機EL大画面テレビの日本市場向け製品の発表も近いと思われ、今年の夏のボーナス・シーズンには、有機EL高級大画面テレビが百花繚乱(りょうらん)の様相となるのは間違いないだろう。

 そんな状況下、1月の東芝に続いて3月16日に大画面有機ELテレビの新製品を発表したのが、LGエレクトロニクス。発売されるのは、65V型の「W7P」と「E7P」、そして65V型と55V型の2モデル展開となる「C7P」である。

 W7P/E7/C7Pの3シリーズともに、LGディスプレイ製のWRGBカラーフィルター方式最新有機ELパネルが採用されている。東芝、そしてこれから発表されるであろうパナソニック、ソニー製有機ELテレビよりも一世代新しいパネルが組み込まれているわけである。ここは大画面有機ELパネルを供給するLGディスプレイをグループ内に持つ、同社の大きなアドバンテージといっていいだろう。

 この最新パネルは、2016年モデルよりもピーク輝度で約25%アップと説明資料にある。東芝ほか日本メーカー製品に採用された旧パネルの最大輝度は、(LGディスプレイは正式にアナウンスしていないが)白ピークで800nits (カンデラ/平方メートル)前後、全白時は400nits程度といわれていたので、LGのこの最新3シリーズは白ピークで1000nits前後の明るさが達成されたことになる。

 UHD BD等の制作時に使われるRGB方式のソニー製有機EL30V型モニター「BVM-X300」のピーク輝度が1000nits 程度といわれているので、明るさの表現力でほぼそれに肩を並べることになるわけだ。

 加えて興味深いのは、この3シリーズすべてに同一の画像処理エンジンが搭載されていること。採用されたパネルも同じなので、W7P/E7P/C7Pで価格は異なるが、それぞれの65型に実質的な画質の違いはないわけだ(65V型の実勢価格はW7Pが約100万円、E7Pが約80万円、C7Pが約70万円、すべて税別)。

 では、3シリーズの何が違うのか。それはデザインと音である。

 その両面で圧倒的な魅力を訴求しているのが、最上位機の65W7P。なんとこのモデル、自立スタンドがない。壁に掛けるというか、壁に貼るのが前提のテレビなのである。

 つい「壁に貼る」と書いてしまったが、65W7Pのディスプレイ部の厚みはなんと3.9mmと大判のカレンダー並み。その薄さは実際に目にすると衝撃的で、まさにメーカーがカタログでうたう未体験の「Picture on Wall」が実現されている。

 65W7Pは、このディスプレイ部と各種信号処理回路、チューナー、スピーカー、アンプを内蔵したヘッドユニットの2筐体(きょうたい)構造になっている。ディスプレイ部を壁に貼り、ヘッドユニットをその真下の家具の最上段に置くというのが、本機の使用スタイルとなる。

 取り付けは専門業者による設置工事が原則。3.9mmという薄さの65V型大画面なので、設置時には2人掛かりで両サイドを保持しないと、たわんでしまうという。

 まず取り付け用プレートをネジで壁に固定し、その上部2カ所に引っかけるようにして、質量7.6kgのディスプレイ本体を据えつける。その後、本体背面の6カ所に仕込まれたマグネットに固定するように、パネル前面から本体を押すことで「カチッ」と音がして設置完了となる。

 ヘッドユニットとの接続は、極薄のフラットケーブル1本のみ。このケーブルで電源を供給し、映像・音声制御信号を伝送するわけだ(0.5mと1.5mのケーブル2本が付属)。

 音声面で興味深いのが、W7P/E7P/C7Pの3シリーズともに最新の3Dオーディオ規格であるDolby Atmos(ドルビーアトモス)に対応していること。サウンドバーのような外観の65W7Pのトップパネル上部の左右には、そのDolby Atmos用スピーカーが仕込まれていて、電源を入れると、スピーカーが自動的に立ち上がってくる仕組み。電源をオフにすると、そのスピーカーはヘッドユニット内に格納され、スライドするフタによって完全に隠される。その動作はじつにスムーズで、アウディの最高級車「A8」に仕込まれたバング&オルフセン製のカーオーディオ用スピーカーのような優雅さがある。

 このスピーカーは斜め上に音が放射される設計で、天井で反射させるイネーブルドスピーカーの役割とは異なることに注意したい。

 実際にその音を体験してみたが、音場がうまい具合に立体的に構築され、3Dオーディオ規格のDolby Atmosらしい臨場感が味わえた。また斜め上に音を放射する特性によって、スピーカーを格納したヘッドユニットが、ディスプレイの真下に設置されているにもかかわらず、音像と映像が乖離した印象が薄まる副次的なメリットがあると実感させられた。

 もっとも、そうはいってもディスプレイとヘッドユニットが離れすぎては音像と映像の乖離(かいり)感は強くなるので、両者を結ぶケーブルは1.5mよりは0.5mを選びたい。

 さて順番が後先になってしまったが、最後に実際に観た65W7Pの画質インプレッションを述べよう。

 完全暗室を実現した視聴室で、ソニーの55V型有機ELモニター「PVM-X550」と比較しながらその映像を観たが、昨年の「65E6P」から着実に画質が進歩していることが実感できた。

 通常のSDRコンテンツであるBlu-ray Discは「シネマ2」モードで、HDRコンテンツのUHD BDは「シネマダーク」モードで観たが、それぞれPVM-X550とたいへんよく似た画調で、じつに味わい深い。「レヴェナント~蘇えりし者」の白銀の世界の描写などは、白ピークがより伸びた本機のほうがPVM-X550よりもいっそう生々しく感じさせるくらいなのである。

じっくり見ていくと、平均輝度レベル(APL)の低い場面でノイズがやや目立つが、これは55V型に対して65V型と画面サイズが大きいことがその要因だろう。

また、65E6Pはペデスタル(最暗部)からの立ち上がりが急峻(きゅうしゅん)で、黒の引き込みが早い印象があったが、65W7Pはそこが大きく改善されている。ローライトの階調表現が著しく向上している印象なのである。

 この画質細部の追い込みは、LGエレクトロニクス・ジャパンラボの研究成果がこれまで以上に反映されているとのことで、そこは日本のAVファンとしてとても誇らしい。

 壁に貼るという未体験の“Picture on Wall”を実現した65W7Pは、まさに有機ELならではの画質とデザインを高度に両立させた製品と評価できるが、日本に先行して発売された北米・欧州などで大ヒットを記録していて製造が間に合わないとのこと。日本での発売は当初4月上旬とアナウンスされていたが、そんな事情もあり、予約が4月13日から、発売は5月上旬に変更されている。

 一方、今年のラインアップは3シリーズで基本画質に変わりがないという点に着目すれば、自立スタンド・タイプの「C7P」がたいへんお買い得ということになる。音のよい外部スピーカーと組み合わせて、自発光ディスプレイならではの画質のよさをいっそう引き立てたいという方には、とくにお勧めだ。

最終更新:4/16(日) 12:10

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