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<仏大統領選>急進左派が猛追 4候補、支持率近接

毎日新聞 4/16(日) 12:00配信

 フランス大統領選(2回投票制)は23日の第1回投票まで1週間となった。最大の焦点は欧州統合に反対する極右政党の大統領が誕生するかどうか。極右・国民戦線(FN)のルペン党首(48)が支持率で首位を走るが、急進左派候補、左翼党のメランション元共同党首(65)が終盤で猛追をみせ、4候補が支持率で近接する混戦模様だ。【パリ賀有勇】

 「後退と否定の候補者」。独立系候補で親欧州路線のマクロン前経済相(39)は7日、コルシカ島での演説会で「反欧州連合(EU)」「フランス第一」を掲げるルペン氏を非難した。ルペン氏は同じコルシカ島で翌8日、「マクロン氏が押しつけようとする自由貿易を私は拒否する」と応酬した。

 米国のトランプ大統領やEU離脱を決めた英国民投票など、世界で内向き志向が高まる。欧州分断か、統合か。フランス国民はEUの行く末さえ決めかねない選択を迫られる。第1回投票に向けた最新の世論調査では2大既成政党の候補者を尻目に、首位のルペン氏をマクロン氏が僅差で追う。

 ルペン氏は、厳しい移民制限などの公約を巡り、テレビ討論で他の候補者からの批判にさらされたものの、熱烈な支持者が勢いを支えている。

 マクロン氏を巡っては、ルドリアン国防相やバルス前首相などが支持を相次いで表明。しかし、オランド大統領とたもとを分かち、政党色を持たずに出馬したマクロン氏にとっては、与党・社会党の大物政治家の支持が追い風となるかは不明だ。ルペン氏はマクロン氏を「オランド氏の赤ちゃん」と呼び、記録的な低支持率にあえぐオランド政権と結びつける。

 「台風の目」となりつつあるのがメランション氏だ。13日公表の世論調査では中道・右派候補のフィヨン元首相(63)に支持率で追いついた。

 メランション氏は、2008年に社会党を離党し、左翼党を結成。12年大統領選には共産党と組んだ「左派戦線」から出馬し、第1回投票で11%を得票した。昨年死去したキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長を慕い、今回は政治運動「不服従のフランス」を率いて出馬する。

 公約には、最低賃金の引き上げや企業が従業員を解雇することを制限する労働者寄りの政策を掲げ、与党・社会党のアモン前教育相(49)の支持者を着実に取り込む。

 EUの求める緊縮策に反発し、交渉次第ではEU離脱を主張するほか、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退や自由貿易協定に反対する。公約の多くはルペン氏と重なるが、テレビ討論ではベテランの落ち着きを見せながらルペン氏批判を展開。最初のテレビ討論が行われた3月20日直後から支持率が急上昇し、3番手をうかがう。

 ◇ルペン氏、反ユダヤ発言波紋

 第1回投票に向けて優位に立つルペン氏だが、不安材料も抱える。第二次世界大戦下の1942年、ナチス・ドイツ占領下のパリなどで仏警察がユダヤ人を一斉検挙し、強制収容所に移送した事件を巡ってフランスの責任を否定し、波紋を呼んでいるのだ。

 ルペン氏は9日、仏メディアのインタビューに「責任は当時の権力者にあり、フランスではない」と述べ、「子どもたちは自国への批判を学ばされ、歴史の暗部ばかりを見させられている。フランス人としての誇りを取り戻してほしい」と、発言の真意を説明した。

 だが、他の候補者にとっては絶好の攻撃材料となった。フィヨン氏は「事件はフランス国家による犯罪だった」と述べ、アモン氏も「気に入らない歴史を修正しようとしている」と批判。マクロン氏は「ジャンマリ氏の娘であることを忘れている人たちがいる。彼らは何も変わらなかったのだ」と、ルペン氏の父でFN初代党首のジャンマリ氏を引き合いに出した。ジャンマリ氏は87年、ラジオなどのインタビューで、ナチス・ドイツのガス室を「歴史の細部」と発言。激しい反発を招き、党勢をそぐことになった。

 11年に2代目党首に就任したルペン氏は、党の差別的なイメージを払拭(ふっしょく)するため、穏健路線へかじを切った。15年には再び反ユダヤ的な発言を口にしたジャンマリ氏を党から除名。FNは今年3月にも、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に反ユダヤ的な投稿をした党員を除名したばかりだった。

 熱烈な支持者を持つだけに、発言後も支持率に大きな影響はみられないが、過激な発言に「アレルギー反応」を示す有権者も少なくない。ルペン氏が決選投票に進む場合、勝利を収めるためには第1回投票で敗れた他候補の支持者の取り込みが不可欠だ。発言が尾を引く可能性がある。

最終更新:4/16(日) 12:00

毎日新聞