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少子高齢時代 激減するIT人材 優秀な学生に重点投資せよ 

産経新聞 4/16(日) 9:28配信

■生産年齢人口は4割減

 国立社会保障・人口問題研究所が公表した「将来推計人口」は、30~40代の合計特殊出生率の改善など見込み、5年前の前回推計に比べて人口の減るペースが若干鈍化するとの見通しを示した。

 それでも2065年の総人口は、15年の7割の水準にあたる8808万人だ。大きく縮みゆくことに変わりはない。

 減少ペースが和らぐとした理由の1つに平均寿命の延びがある。すなわち、これまでの想定より高齢者数が増えるということだ。高齢者数がピークを迎える42年の場合、前回推計より57万人多い3935万人になるという。

 一方で、勤労世代である「生産年齢人口」(15~64歳)は、総人口の縮小よりハイペースで減っていく。65年には15年比で約40%減となり、高齢者数がピークの42年でも約25%の減少である。働き手の確保を喫緊の課題と位置づけなければならない。(論説委員・河合雅司)

■AI開発が停滞の恐れ

 確保策をめぐってはさまざまなアイデアが検討されている。最近、経済界を中心に強い要望が出ているのが外国人の単純労働の解禁だ。

 だが、外国人の受け入れには多くの課題が横たわる。

 言葉の壁だけでなく、子供の教育や社会保障、治安対策といった社会コストは無視できない。忘れてはならないのが日本人が急減することだ。

 目の前の人手不足の解消ばかりに気を取られていたのでは、日本の姿が大きく変質することになりかねない。

 外国人に依存する前に、取り組むべきことはたくさん残っている。まずは他国の追随を許さない技術や専門性に磨きを掛け、生産性の向上を目指すべきだ。1人1人がより価値の高い製品やサービスを生み出すのである。

 女性や高齢者の雇用環境を整えることも急がれる。働き方の見直しや町のコンパクト化などによって効率的な社会に作り替えれば、日本全体として必要となる働き手の数を減らせる。

 人工知能(AI)で注目される情報技術(IT)の開発と実用化にも、国を挙げて取り組むべきだ。技術の進歩には目を見張るものがある。やがて人間の知能を追い越し、「労働力不足」という言葉が死語となるかもしれない。

 だが、現時点では、人の仕事を代替する実用的な技術は限定的である。AI技術の実用化が労働力減少スピードに間に合うかどうかは分からない。

 それどころか、少子化でこうした仕事に携わる人材の供給力が大きく低下することが懸念される。

 経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(16年)は、19年をピークにIT関連産業への就職者が退職者を下回って下落を始め、平均年齢は30年まで上昇し続けると予測。この結果、30年には人材がピーク時の92・3万人より6・6万人少ない85・7万人になると見積もる。

 一方、IT産業への投資は続いている。情報セキュリティーへのニーズも増大しており、30年の不足規模は59万人程度に拡大するという。このままではAI開発の停滞が起こらないともかぎらない。

■幼児期から人材育成を

 ITは労働力不足の解消策ばかりでなく、日本経済の成長にとって欠かせない。人材が手薄になれば成長の大きな足枷ともなろう。国際的な技術水準から取り残されたのでは国の基盤そのものにも影響が生じる。人材育成に向けたテコ入れが必要だ。

 離職者を少しでも抑制するための待遇改善が求められる。IT分野は個人のスキルアップが欠かせないことから、再教育を企業任せにするのではなく、行政が強力にバックアップしていく態勢も整えなければならない。

 中長期的には、将来AIが急速に普及することを見据えて幼児教育から体系的に教えていく必要がある。イノベーションの国際競争に打ち勝つには、大学などの高等教育を知識の習得ばかりでなく、より実学に即したものへと幅を持たせることも重要だ。

 日本はITベンチャーを起業する意欲が各国に比べて大きく低迷しているとの調査結果もある。大学で起業ノウハウまで教えればよい。

 IT分野にかかわらず、今後は付加価値を生み出せる人材づくりがポイントとなる。教育無償化も支給額を一律にするのではなく、将来の日本を背負って立つ優秀な学生に重点配分すべきだ。

 効果的な人材投資なしに、日本が「豊かな国」であり続けることはできない。

最終更新:4/16(日) 9:28

産経新聞