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バレーボール男子2冠を手にした「東レスタイル」、低迷する日本代表復活のヒントになるか

産経新聞 4/16(日) 15:00配信

 バレーボールのプレミアリーグは今季の全日程を終え、男子は東レが8季ぶり3度目の優勝を果たした。2季前は下部との入れ替え戦も経験した名門は今季、「いる選手で最大限のパフォーマンスを出す」(小林敦監督)と独自のスタイルを磨き、全日本選手権との2冠を達成した。知恵を絞っての大躍進は、低迷する男子日本代表復活へのヒントにもなりそうだ。(奥村信哉)

 3月18、19日に東京体育館で行われた男子決勝。東レは昨季王者で、今季もレギュラーラウンドを1位通過した豊田合成を寄せ付けず、第1戦は3-0、第2戦は3-1で退けた。

 強みの一つはセンター攻撃の多用。センターの速攻はサイドアタッカーに比べてトスが短く、空中で修正できる部分が少ないため、センターとセッター双方に高い技術とあうんの呼吸、さらにはサーブレシーブでセッターに絶好のボールをつなぎ、トスを上げやすい状況を整えることが求められる。加えてブロックの核となる相手センターが目の前に待ち構えるため、試合で際限なく使える攻撃ではない。一方で多く使えれば、相手ブロックのマークを分散させることができる。「うちはアウトサイドの攻撃力があまりない」(小林監督)という東レには生命線ともいえる。

 決勝の第2戦をみると、豊田合成のアタック総数114本のうち、センター2人の打数が計14本だったのに対し、東レは117本のうち26本がセンター攻撃。特にベテラン富松崇彰は12本中11本を決め切り、勝利に大きく貢献した。

 この戦術を支えるのが東レ伝統の安定したサーブレシーブと、成長著しい25歳のセッター藤井直伸の存在だ。レギュラーをつかんで2季目の司令塔は全日本選手権優勝後、「センターと合わない中でも使っていかないと僕の持ち味が出ない。それでサイドが決まりやすいとシミュレーションしている」と話したように、シーズンを通して強気のトスワークを貫き、多彩な攻撃を組み立てた。かぶとを脱いだのは豊田合成のセンター近裕崇。「サーブレシーブがちょっと崩れるとセンターを使わないのなら楽だが、多少悪くてもガンガン使ってこられるのは嫌といえば嫌」と話した。

 もう一つの特長が攻めるサーブ。パワーを押し出すジャンプサーブだけでなく、変化で勝負するジャンプフローターサーブも威力を発揮し、レギュラーラウンドではサーブ効果率(15.4%)、サーブ得点(117点)とも断トツのトップ。サーブで崩して主導権を握る形を確立させた。

 ここに至るまでには小林監督の苦い記憶がある。2012年の就任後、サーブ強化を打ち出したが、不振脱却のためサーブを確実に入れにいかせたところ成績は上向き、最後は3位。そのため「ミスを極力減らして打つ方がいいと誤解した」。サーブ以外の強化に力を注いだ結果、2季目は4位に後退。3季目は7位まで順位を落として入れ替え戦に回った。

 「完全にフルモデルチェンジが必要と気がついた」指揮官は翌年、サーブに定評のあったアタッカー、鈴木悠二をレギュラーに抜擢(ばってき)。外国人選手もサーブ力の期待できるマケドニア出身のジョルジェフを招聘(しょうへい)し、3位まで巻き返した。今季は男子日本代表コーチだった動作解析の専門家、増村雅尚氏も招いてサーブ強化を進め、センター攻撃の多用とともに他チームにない強みを打ち出すことに成功した。

 プレミアリーグ優勝後の会見で、東レの戦術の汎用(はんよう)性について尋ねると、指揮官は「うちの台所事情もあるが、ナショナルチームにも少なからずつながるのでは」と返してくれた。高さとパワーで世界に後れを取る日本代表は、プレミアリーグでの東レの立ち位置に近い。小林監督は「イゴールがいたら楽だなとは思います」と3季連続で得点王に輝いた豊田合成の主砲の名を挙げて報道陣を笑わせたが、1人に依存しすぎない多彩な攻撃とサーブで主導権を握る戦術は、代表も積極的に導入すべきものだといえる。実際、柳田将洋(サントリー)らのサーブが機能し、石川祐希(中大)の大活躍で清水邦広(パナソニック)の負担が減った15年ワールドカップで、日本は12チーム中6位に食い込んでいる。

 今季から男子代表を率いる中垣内祐一監督も昨年10月の就任会見でサーブの重要性を訴え、「世界の主流にとらわれないシステムも検討したい」と長年、清水が担ってきたセッター対角に入る選手の攻撃力に頼りすぎない戦術の構築に含みを持たせた。3月末に発表された日本代表登録メンバー29人のうち、東レからは初選出の藤井ら最多7人が名を連ねており、「東レスタイル」を代表に持ち込む状況が整いつつあり、今後が注目される。

最終更新:4/16(日) 15:00

産経新聞