ここから本文です

東大40歳新人「ドクター伊藤」36球4失点

日刊スポーツ 4/16(日) 8:05配信

<東京6大学野球フレッシュリーグ:慶大15-4東大>◇1回戦◇15日◇神宮

 医師免許を持つ、40歳の異色右腕が夢をかなえた。今春始まった総当たりの新人戦「フレッシュリーグ」で、東大・伊藤一志投手(3年=東海)が慶大戦に先発し“神宮デビュー”を果たした。1回を投げ2安打3四球4失点(自責1)。「不合格」と自己評価は辛口だったが、リーグ戦出場を目指す赤門のオールドルーキーの挑戦は続く。

【写真】先発し力投する東大・伊藤

 約20年越しの夢がかなった。「9番ピッチャー伊藤」。神宮球場に温かい拍手が起こった。「広いな」。40歳の伊藤が投じた最初の1球は、練習してきたナックルボールだった。最速は108キロで打者9人に2安打3四球4失点。「(投球の)採点はできません。不合格じゃないですか」と喜びより反省が口をついて出たが、ライナーに食らいつき、無我夢中で36球を投げた。

 高2の時、東大野球部が17季ぶりに単独最下位を脱出した。勝ち点を挙げるところをテレビで見てとりこになった。しかし、合格への道のりは遠く、浪人の末に都内の医大へ進んだ。「これまで10回は(東大を)受験した」(伊藤)が、途中で諦めたこともあった。友人の誘いで再度チャレンジを始めたのが34歳のころ。麻酔科の医師として働きながら勉強し、38歳で東大野球部へ入部した。

 しかし、体力も武器もない。2年が過ぎようとした昨年9月。浜田一志監督(52)から「ナックルボールを投げてみろ」と言われた。「監督の目がマジだった」。独学で学んだ。伊藤は、自腹でボール200個を購入しすべてに名前を入れた。仲間を付き合わせるわけにいかず、毎日ネットスローを繰り返した。そんな地道な努力も認められた。

 スタンドでは、夫人が憧れのマウンドに立つ夫を見つめていた。「40歳で神宮に来たかったわけじゃない。18歳で来たかった。大遅刻ですよ」。目指すのはリーグ戦出場だ。満足はまだ先にある。【和田美保】

 ◆伊藤一志(いとう・かずし)1976年(昭51)8月19日、愛知県生まれ。小4から野球を始め、東海(愛知)から東大野球部を目指すもかなわず浪人の末、都内の医大へ。硬式野球部で投手兼外野手として活躍。31歳で医師免許を取得し麻酔科医として勤務。12年春に東大文科3類に合格した。好きな授業は機能解剖学で、好きな食べ物はタンパク質。既婚。171センチ、73キロ。右投げ右打ち。

 ◆東京6大学野球フレッシュリーグ トーナメント方式だった新人戦を、各大学1回戦総当たりのリーグ戦形式に変え今春から導入された。1、2年生の出場機会を増やすことが目的だが、東大は4月下旬に1年生が入部するため3、4年生の出場が可能。

最終更新:4/16(日) 9:27

日刊スポーツ