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きむらゆういちさん、「あらしのよるに」作者が作る“大人のための絵本” 中高年夫婦の愛情表現に

夕刊フジ 4/17(月) 16:56配信

★BOOK・きむらゆういちさん『そのままのキミがすき』『あなたなんてだいきらい』(あすなろ書房、各850円+税)

 歌舞伎化、映画化されて大ヒットを飛ばした『あらしのよるに』の作者が“大人のための絵本”をつくった。ターゲットはズバリ中高年。ストレートに愛を語るには小っ恥ずかしくなったオジサンにこそ役立ててほしいんだって!! (文と写真 南勇樹)

 --男性から女性へ贈る1冊は『そのままのキミがすき』

 「『そんな風に言われてみたい』という女の人のひと言から発想を得たんです。男女も長年付き合っていると、見えてくるのは決していい面ばかりじゃない。たとえ見た目が悪くなっても、失敗ばかりしていても、ありのままの自分を受け入れてくれたらどんなにうれしいことでしょうか」

 --倦怠(けんたい)期の中高年夫婦にはピッタリ

 「中高年夫婦はコミュニケーションが少なくなりがちだし、ストレートな愛情表現も苦手でしょう。でも、冷めたように見えても愛情がなくなったわけじゃない。なまじ口では言いにくいことを絵本をプレゼントすることで伝えてみたらどうかな。血糖値が高めの中高年のオジサンには義理チョコをもらうよりもずっとうれしいでしょ」

 --一方、女性からのもう1冊は『あなたなんてだいきらい』

 「『きらい』というのは相手が気になる、ということ。もっと私を見てよ! というメッセージです。自分本位の思いである『恋』→相手のことを思う『愛』への過程こそが恋愛の醍醐(だいご)味。『恋』はいつか終わるけど『愛』は終わらない。欠点も含めて存在を丸ごと受け入れるから幻滅することもありません」

 --代表作の『あらしのよるに』も幅広い世代にヒットしましたね

 「そもそも絵本が子供向けだって誰が決めたのですか? 僕は『絵の入った本』としか考えていません。『あらしのよるに』は、読者だけが真実を知っている、登場人物同士は、それを知らない-というアイデアから始まりました。しかも、彼らは実は食うもの(オオカミ)と食われるもの(ヤギ)の関係で読者はドキドキ、ハラハラ…そんな設定が多くの方に支持していただいたのではないでしょうか」

 --ヒット作を生み出すコツは

 「常にアンテナを立てて生活をし、そこに引っかかったものを引き出しに入れてゆく。それをいくつか組み合わせると面白い化学反応が起きる。アイデアを思いついたらメモに取ります。エスカレーターに乗っていたり、風呂の中だったり、レストランだったり。だからメモも箸袋や紙ナプキン、飛行機備え付けのゲロ袋だったりします。でも、これまでに600作も書いていますから(ヒットの)打率は決して高くないですよ」

 --365日、24時間、作品を考えている

 「そうですね。よく『いつ仕事をしているか分からない』って言われるんですが(苦笑)、一生懸命考えてもアイデアが出ないときもあれば、一瞬でひらめくときもある。そうやっては3、4年かけて構想を練り、いろんな引き出しを組み合わせたりして、積み重ねたものなんですね」

 --さて、「活字の危機」「本が売れない」と言われていますが、絵本は大丈夫でしょうか

 「確かに電車に乗っていると、スマホを見ていない人がほとんどいない。ただね、僕は(電子メディアと紙媒体は)まったく違うものだと思うんです。特に絵本には、単に情報を伝達するだけじゃなくて、いろんな思い出やエピソードが詰まっているでしょう。絵本こそ生き残ってゆくと思います。それに若い世代には彼らの『物語』があります。妻は(30歳以上年下の)31歳ですが、彼女の好きなアニメを一緒に見に行くと、こんな世界もあるんだなって。形を変えながらいろんな方向へと伸びてゆく。物語はなくなりませんよ」

 ■あらすじ 2冊の本はそれぞれ、男性→女性、女性→男性向けとなっている。ねことくまを主人公にして、ありのままの自分を相手がそっくり受け入れてくれるような「大きな愛」が描かれる。愛らしい絵とあいまって、読み進めてゆくうちに胸が熱くなる。「そこにあなたが居てくれれば何もいらない」と思えてくる。

 ■きむら・ゆういち 絵本・童話作家。1948年、東京都出身。69歳。多摩美大卒。アニメやコミックの原作、戯曲、小説など幅広いジャンルで活躍。代表作『あらしのよるに』は産経児童出版文化賞JR賞、講談社出版文化賞絵本賞に輝いた。

最終更新:4/17(月) 16:56

夕刊フジ