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マヨネーズで食卓を彩る キユーピー研究者の工夫

ITmedia ビジネスオンライン 4/17(月) 8:10配信

 多くの家庭の冷蔵庫に入っている調味料、マヨネーズ。キユーピーがその製造を始めてから、今年で92年になる。同社の商品開発研究所で家庭用マヨネーズの研究開発チームリーダーを務める若見俊介さんは、マヨネーズの新商品や新しい使い方の開発に取り組んでいる。昔から親しまれているマヨネーズの新しい価値を創り出し、次の時代に伝える役割を背負う。

【マヨネーズを加えて作った「なめらかプリン」】

●マヨネーズを磨き続ける

 東京都調布市にあるキユーピーの研究開発拠点「仙川キユーポート」。道行く人の目を引く六角形の建物には、オフィスのほかに研究室やキッチンスペースなどを備え、約1400人が働く。ここから、マヨネーズの新しい商品や使い方の提案が生まれている。

 「キユーピーマヨネーズ」のブランドには、機能や好みに応じて選べる商品群がある。カロリーをカットした「キユーピーハーフ」や「キユーピーライト」、コレステロールをゼロにした「キユーピーゼロノンコレステロール」、コレステロールを下げる特定保健用食品「キユーピーディフェ」など。2016年は、血圧が高めの人向けの機能性表示食品「キユーピーアマニ油マヨネーズ」を発売した。

 若見さんは02年に入社し、6年間マヨネーズの研究開発を担当。その後、営業も経験した。研究所に戻ってからは、パスタソースの研究開発リーダーなどを経て、15年10月から家庭用マヨネーズの開発チームを率いている。

 マヨネーズとともにキャリアを積んできた若見さんにとって、マヨネーズとは「宝物」。しかし、「箱にしまうのではなく、磨きながら次の世代に引き継いでいくもの」だ。時代の変化を読み、工夫しながら、絶えず新しい価値を提供していくことが必要だと考えている。

 研究開発だけでなく、営業を経験したことも大きな糧となっている。視野を広げようと、自ら希望を出して異動した。マヨネーズやドレッシングなどを店に置いてもらうため、量販店などのバイヤーと商談したが、最初は会社の営業方針をそのまま伝えるだけの営業しかできなかった。当然、要望は通らない。店にはそれぞれ違った課題があり、それに対応した提案が必要だったのだ。相手とコミュニケーションを取り、実際の売り場をよく観察することで、ニーズをつかむことを学んだ。「棚に何があって、どう売れるか、イメージする力が身に付いた。それは今でも役立っている」という。

 視野を狭めないようにする意識は、今でも根付いている。実際に食べる場面を常に意識して研究できるように、休日に家でレシピや商品を試し、感じ方を探っている。たくさんの実験を重ねる過程で一口ずつ試食することと、1回の食事として食べきることでは、感じ方が全く異なるからだ。

●意外なレシピを開発

 若見さんがチームで取り組む課題の1つが、“万能調味料”であるマヨネーズの新しい使い方を提案し、消費を促すことだ。今では、サラダにかけるだけでなく、さまざまな用途の使い方が増えているという。Webサイトを通じてマヨネーズを使った料理のレシピを紹介。料理のおいしさや食感を向上させるマヨネーズの効果を検証し、学会発表も行っている。

 16年に公開したプリンのレシピは、反響が大きかった。生クリームの代わりにマヨネーズをプリン液に加えるレシピだ。しっとりとした、滑らかな食感に仕上がる。従来、「料理にマヨネーズを追加しておいしくする」という考え方のレシピが多かったが、最近は「他の調味料をマヨネーズに置き換える」提案を増やしている。プリンはその一環だ。「生クリームを入れた方がおいしいけど、買うと余ってしまう」という悩みに対応することを想定した。

 意外性のあるレシピに、当初は社内でも賛否両論があった。認めてもらうには、マヨネーズの効果をしっかりと証明しなければならない。若見さんは「生クリームをマヨネーズで代替できるだけではだめ。マヨネーズを入れて良くならないといけない」と話す。本当においしくなるのか、また、どの程度入れれば最も効果が出るのか、研究を重ねた。

 プリンが柔らかく滑らかになる理由は、マヨネーズに含まれる植物油や酢にある。プリン液に入れる卵のタンパク質は加熱で固まるが、マヨネーズの油や酢がその結合を緩やかにし、ふんわりと固まる。しかし、マヨネーズの量が多すぎると、風味が残ってしまう。「マヨネーズの量のバランスに悩んだ。(食べる人が)最も喜んでくれる味と食感について、チームで議論を重ねた」という。

 マヨネーズの量をプリン液の2~6%の間で変化させ、プリンの硬さやマヨネーズの風味を計測。適切な量を絞り込んでいった。実際に食べてもらう官能評価も重ねた。最終的に、プリン液の4%に当たる量を入れるとバランスの良い味と食感になることを証明した。

 研究開発のプロジェクトは、それぞれ期間が長く、地道に試験を重ねる仕事が多い。途中で目的を見失わないためにも、「何のために必要なのか」をしっかりとチームで共有するようにしている。また、日ごろからチームメンバーをはじめ、他の部署の人とも会話し、新しい切り口を探している。

 家庭料理のバリエーションが増えると、食事が楽しくなる。若見さんはそんな風景を思い描きながら、日々マヨネーズと向き合っている。「マヨネーズで“幸せな食卓”に貢献できることは、ありがたい」。これからも、伝統を守りながら新しい提案を続けることで、マヨネーズの価値を分かりやすく伝えていく。

最終更新:4/17(月) 8:10

ITmedia ビジネスオンライン