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<トルコ国民投票>改憲派勝利も道険し 対立懸念も

毎日新聞 4/17(月) 22:19配信

 【アンカラ大治朋子】トルコで16日に開票された大統領権限拡大のための憲法改正を問う国民投票。過激派組織「イスラム国」(IS)など外敵の脅威に対抗できる「強いトルコ」が必要だと訴える賛成派が、権力の一極集中こそが「内なる脅威」だと主張する反対派を上回った。だが力への過剰な依存は「敵か味方か」の二元論に陥り、多様な文化、価値観の均衡を図るという従来のシステムからのさらなる離反にもつながりかねない。

 トルコは1923年の革命で、オスマン・トルコをムスタファ・ケマル(アタチュルク)が倒し建国した。西洋化と世俗主義を掲げ、近代国家の形成を目指した。一方、国民の99%はイスラム教徒のまま。イスラム主義政党が勢力を拡大すると、世俗主義の「守護者」を自任する軍部がクーデターで「軌道修正」を図る展開が度重なり、社会は振り子のように揺れ動いた。

 建国から94年、政権は60回以上も交代した。背景には文化・地政学的多様性もある。大都市で豊かな西部と貧困が目立つ東部。多数派のトルコ人と人口の2割を占めるクルド系など少数派。欧州に位置する北側とアジア大陸にある南側。こうした諸集団が角逐してきた。

 そこに安定と繁栄をもたらしたと評価されるのが、エルドアン氏が2001年に創設した与党・公正発展党(AKP)だ。イスラム主義と民主主義の両立を掲げ「中東の模範的民主主義」と期待された。02~06年に実質国内総生産(GDP)成長率7%を成し遂げ3期連続の単独政権を実現。さらに低所得層などにも社会保障を提供し、広く支持を集めた。

 一方、エルドアン氏は軍部や司法の力をそぎ、イスラム色や独裁色を強めた。16年7月のクーデター未遂事件では在米イスラム教指導者ギュレン師を「黒幕」と断定。その支持者と認定した公務員ら13万人超を粛清した。

 だが「反政府勢力」を排除しても、新たな「外敵」を招き、治安と経済が悪化した。15年以降、混迷を深めるシリア内戦を反映し、ISの自爆テロや、トルコからの分離独立を目指す武装組織クルド労働者党(PKK)との衝突が頻発する。

 賛成派は、「振り子の時代」に疲れ、国家を安定させた実績のあるAKPを信じた。新たな敵と戦うため、より強大な権力をエルドアン氏に与えたいと言う。反対派は、AKPによる長年の力の独占で「チェック・アンド・バランス(抑制均衡)機能」は失われつつあり、その「内なる脅威」こそが、トルコの危機だと考える。今回の国民投票は両者の対立を更に拡大しかねない。

最終更新:4/18(火) 10:10

毎日新聞