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3元首相が肩入れする 新・農地発電事業

ニュースソクラ 4/17(月) 13:40配信

【緑の最前線(39)】耕作地の地上3mにすだれ型太陽光パネル

 「ソーラーシェアリング」というニューワード、ご存知だろうか。太陽光(ソーラー)を発電と農業の両方で分け合う(シェアする)新しい営農システムのことだ。筆者も最近この言葉を知り、世の中には隠れた知恵者がいるものだと感心するとともにそのアイデアに敬意を表したい。

 ソーラーシェアリングとは、耕作地の地上3m程の位置に藤棚のような架台を設置して、農作物に太陽光が当たるように隙間をあけながら太陽光パネルを設置する。これによって、農家はこれまで通り農業を続けながら太陽光発電によっても利益が得られる「ウイン・ウイン」の農業経営と言えるだろう。

 ソーラーシェアリングは、街の発明家、CHO技術研究所の長島彬所長が長年かけて実験、実証し、「世界のエネルギーと食糧事情を抜本的に変えることができる夢のある技術」として、2004年に特許出願し、05年に取得した特許技術を公開したため、無償で誰もが使用できる。

 これまで、農地での太陽光発電は耕作放置地などを利用するケースがほとんどだった。太陽光パネルが地上を覆ってしまうので同時に農業を営むことはできない。ソーラーシェアリングはこの壁を突き破るアイデアだ。普通の農家がこれまで通り営農しながら、その農地をソーラー発電にも利用できるので、土地の生産性が大幅に向上する。

 具体的には農地上約3mの空中にパイプで支えた構造物にソーラーパネルを設置する。太陽光を「農業」と「発電」2対1の割合でシェアする。植物は一定の光があれば育ち、それを超える量の光は光合成につながらない。これ以上光が当たっても光合成につながらない光の量を「光飽和点」という。ソーラーシェアリングは植物の光飽和点を利用して考案された技術である。農作物の光飽和点は種類によって異なる。例えばトマトやサトイモ、スイカなどのように光飽和点が高い種類があるが、ミツバ、レタスなどのように相対的に低いものもありまちまちだ。

 地上約3m地点にソーラーパネルを設置すると、農地にパネルの陰がでる。パネルを設置しなかった場合の敷地面積には100%太陽光が当たる。一方パネルを設置した場合はパネルの陰になる部分には光が当たらない。敷地面積のうち光の当たらない面積の割合を遮光率という。農作物の種類によって異なるが、おおむね遮光率が30%以下であれば、農作物の生長には影響がでないことがこれまでの実験で実証されている。

 パネルは地上約3mの高さに設置されているので、その下の農地は通常の農地と同様にトラクターやコンバインも利用できるので農作業に支障がない。

 一方、太陽光発電用のソーラーパネルの価格は国内外の企業間競争によって急速に低下している。温暖化対策として太陽光発電が登場した1990年代初め頃には、出力1kw(キロワット)のパネル価格は約370万円もした。2000年頃には約80万円、さらに15年頃には約30万円台、最近では30万円を切るものも登場している。この間、パネルの品質は大幅に向上している。

 政府は太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を図るため、2012年7月から固定価格買取制度(FIT)を導入している。この制度は再生可能エネルギー(電気)を生産コストよりもかなり割高な価格で電力会社が購入することを義務づけている。たとえば、16年度の場合、10kw未満の1kwh(時)の買い取り価格は31円、買い取り期間は20年だ。最初の10年間で原価償却を終え、それ以後は利益になる。

 ただし乗り越えなくてはならないいくつかの問題,課題もある。

 一つは農水省のソーラーシェアリング導入に関する指針である。指針によると、ソーラーシェアリングを実施するための架台の柱部分を農地の転用と見なし、3年ごとに継続審査を受けて農地の一時転用許可を得なければならないことだ。継続審査の目玉は、平均的反収の20%減以内でなければ許可が取り消されることだ。

 さらにまだ発展途上の技術であるため、架台の組み合わせ、ソーラーシェアリングに適応するソーラーパネルの開発、台風や地震に対する安全性の確保など残された課題も少なくない。これらの課題克服のための様々な研究が産官学の協力で急速に進められている。

 4月3日、千葉県匝瑳(そうさ)市で世界初の「メガソーラーシェアリング」プロジェクトのオープンセレモニー(開所式)が行われた。東京ドームに匹敵する敷地に設置したメガソーラーシェアリング施設は地権者、農業法人、地元の発電会社が協力して運営する。再生可能エネルギーの普及に熱心な城南信用金庫が事業資金3億円の約8割を出資した。オープンセレモニーには環境保全派に転じた小泉純一郎、細川護煕、菅直人の3人の元首相も参加し、笑顔で会場を盛り上げた。

■三橋 規宏:緑の最前線(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。

最終更新:4/17(月) 13:40

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