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サウジアラビアに減産疲れ 脱石油は絵に描いたもち

ニュースソクラ 4/17(月) 16:01配信

アラムコのIPO、救世主となるか

 先般、サウジアラビアのサルマン国王が来日した際には、飛行機から降りるときの特製のタラップや一流ホテルを占拠した随員の多さに我々は度肝を抜かれた。東京中のハイヤーが借り上げられてしまったような勢いだった。

 サウジアラビアが世界最大のイスラム人口(2億人強)を有するインドネシアや中国とともに日本を訪問したのは新しいサウジの国造りに協力を要請するのが最大の狙いであった。

 サウジの経済の現況を駆け足で見ておこう。

 昨年11月のOPEC総会で減産合意が成立して以来、サウジは米国に次ぐ世界第二の石油生産量を誇ってきたが、1月には日量975万バーレルという8年ぶりの低水準となるまでの減産を実施してきた。原油価格が30ドルから50ドルバーレル近辺まで上昇したのには、このサウジの功績が大きい。

 しかし、サウジはこのため低成長に喘ぎ、IMFの見通しでは今年の実質成長率は0.4%と前回(16年10月)の2.0%から1.6%も下方修正を余儀なくされた。

 IMFでは石油の大幅減産により財政収支もGDP比で16年が13%、17年も9.5%の赤字を予想している。経常収支も原油輸出額の減少により16年中でGDP比10%程度の大幅赤字となりそうである。

 このため、国際金融市場からの銀行借り入れやドル建て国債の起債など外部資金調達を活発化させている。それでも外貨準備は5千億ドルを越えており、なお潤沢である。

 サウジは世界第二位の原油確認埋蔵量を誇り、可採年数も60年を超えている。しかし、上記のよう成長率の減速、財政収支、対外収支の悪化が続く中で脱石油経済の達成へと大きく舵を切り替えざるを得ない。

 サルマン国王の実子であるムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(以下MbS)を中心に、2030年までの国家変革を目指した「ビジョン2030」を策定した。

 観光部門の拡大、製造業、物流などの経済多角化を通じてGDPの順位を世界19位から15位に引き上げることを目指している。この中で非石油収入を2015年の1,635億リヤル(約450億ドル)から2020年には5,300億リヤル(約1,400億ドル)、最終年の2030年には1兆リヤル(約2,750億ドル)へと急増するという意欲的な計画を立てている。

 これらを通じて失業率も現在の11%強から7%に引き下げる、女性労働力の比率を30%に引き上げる、などの雇用機会の拡大を目論んでいる。

 しかし、サウジが描いているように非石油部門を中心とした経済成長が根付くかは大きな疑問である。そもそも非石油部門の急成長をどうやって達成させるかの具体的な方策は不明のままである。

 財政収支の悪化から非石油部門における政府支出のプロジェクトは停止の憂き目にあっている。アラムコの上場による資金調達や孫正義氏の協力などにみられるように海外マネーを呼び込む必要がある。

 史上最大の株式上場(IPO)と言われるアラムコの株式上場はビジョン2030に要する膨大な資金を賄う切り札である。MbSは「アラムコの企業価値は2兆ドル、その5%を上場しただけで史上最大の1,000億ドル規模のIPOとなる」と自信満々だった。

 しかし、FT紙はアラムコが発表した法人税率の大幅引き下げ(85%→50%)をカウントしても企業価値は9,500億ドル、5%のIPOとして450億ドルと約半分になると試算している。それでも中国のアリババのIPO(250億ドル)を抜いて史上最大規模ではある。

 サウジの社会・経済改革の必要性は言われて久しい。石油に依存した経済、湯水のごとき補助金支出、女性の社会進出の遅れ、など解決すべき難問は山積している。

 その改革を阻んできたのは超保守的な風土と社会情勢の安定化の必要性である。サウジは元々、スンニ派に属するワッハープ派の厳しい戒律を宗旨とする保守的な国家である。

 31歳という若さのMbSによる改革に対する他の王族からの反発も強いといわれる。MbSは女性による自動車運転の解禁を狙っているが、王族の中から公然と反対する発言も出ている。

 付加価値税の導入計画や補助金の削減は若者を中心に国民の不満を増すことにつながる。サウジの若者というと欧米に留学して公共部門で職に就くというイメージが強いが、それは一部のエリートだけである。

 貧しい若者の社会に対する不満は強く、既得権益となっている食料補助金や安いガソリン価格の見直しなどは社会の不安定要素となることは間違いない。

 MbSが狙う脱石油経済、女性の活躍などを謳った改革の方向性は正しい。しかし、実現に至るまでの道程は険しいと言わざるを得ない。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:4/17(月) 16:01

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